#124 「焼夷弾」って何?

東京大空襲で東京の下町を焼け野原にした「焼夷弾」。普通の爆弾とは何が違うのだろうか。一般的な爆弾は、投下された後に火薬が爆発して爆風や飛び散る破片で人や建物にダメージを与えるものである。一方、焼夷弾は細い筒の中にゼリー状の油が入っており、それが飛び散って引火し、周囲を延焼させるという爆弾だった。木造家屋が多い日本の街を焼き払うことに特化してアメリカ軍が開発した爆弾である。

東京大空襲で投下された爆弾の多くは「M69焼夷弾」と呼ばれる型のものだった。投下する時点では大きな1つの爆弾だが、ゼリー状の油脂が入った細長い鉄製の筒(直径7.5センチメートル・長さ50.8センチメートル・重さ2.8キログラム)が38本入っており、落下中にカバーが開いて分離し、広範囲に降り注ぐという設計の爆弾だった。現代で言えばクラスター爆弾と似た構造である。

このような構造なので、鉄の筒が直接身体を貫いて即死してしまう事例も多発したという。また、ゼリー状の油脂は現代で言えばバーベキューで使う着火剤が建物や身体にこびりついて引火するようなものであり、消火は困難だった。ことに身体についてしまった人々は凄惨な焼死をとげた。

しかし、政府は一致団結して消火にあたれば空襲も怖くない、空襲の被害は大したことはないと宣伝し続けた。
一晩で10万人が死亡した東京大空襲の後もその方針は変わらず、小学生以外の疎開も認められなかった。

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【参考】


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