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#308 鳥の糞に支えられた国がある?

オセアニア州の島国、ナウル共和国をご存知だろうか。

ナウル共和国は、東京都品川区とほぼ同じ21.1平方kmにおよそ1万2000人が暮らす、世界で3番目に小さな国だ。

ナウル共和国の土壌は、サンゴ礁の上にアホウドリの糞が堆積してつくられた。ナウルは鳥の糞でできた国なのだ。

かつては人々が自給自足の生活を行うという発展途上の島だったが、19世紀末にドイツに植民地化され、リン鉱石が発見されるとナウルをめぐる状況は一変する。

アホウドリの糞は、長い年月をかけてリン鉱石に変化していたのだ。
リン鉱石は、良質な化学肥料の原料になるため世界中で重宝され、リン鉱石の輸出によってナウル共和国は一躍金持ち国家になる。

1万人以上の国民全員に年金という名のベーシックインカムが配られ、医療費、学費、電気代、水道代などは無料。

国民は働かなくても生活でき、国民の90%は無職、10%が公務員、商店などで働くのは外国人労働者というナウル国民にとっては夢のような時代が続いた。

1980年代には、国民1人あたりのGNIは日本の2倍、アメリカの1.3倍という、世界でもトップレベルの豊かさの国となった。

しかし、そんな夢のような日々は長くは続かなかった。

まず、「働かなくても暮らしていける」という生活は国民の身体を蝕んでいった。

30年間にわたって働かない生活を続けた結果、国民の90%が肥満、30%が糖尿病になっている。ナウルは世界一の肥満&糖尿病大国になってしまったのだ。

21世紀になると、国家経済を支えていたリン鉱石が枯渇し、国民は露頭に迷うことになる。
実は、リン鉱石の枯渇は数十年前から指摘されたことだったが、国民や国家は具体的な対策を行わなかった。

「そうしたらお金儲けができるか」を考えた政府は、マネーロンダリングやテロリストへのパスポートの発行など、働かなくてもお金が得られる手段を模索するが、アメリカの怒りを買って継続不能になる。

現在は日本を含む他国の援助によって国家を成り立たせている状況である。

国民が働かなくて済むとどうなるのか。そんな壮大な思考実験をリアルに経験したナウル共和国から人類が学ぶことは多い。

【目次】

【参考】


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