#51 マクドナルドコーヒー事件

マクドナルドコーヒー事件とは、1992年にアメリカのマクドナルドで起きた事件・訴訟である。ステラ・リーベックさん(当時79歳)は、孫が運転する車でマクドナルドのドライブスルーを利用し、ホットコーヒーを購入した。コーヒーにミルクと砂糖を入れようとした時、誤って膝の上にコーヒーをこぼしてしまい、火傷を負ってしまう。孫はステラさんをすぐに病院へ運び、治療を受けた。このことに対して訴訟が起こされ、当初は約290万ドル(約3億円)を支払うよう陪審員による評決が下されたものの、最終的にマクドナルド側が日本円にすると約6300万円以下(実際の金額は非公表)の見舞金を支払うことで和解した。ちなみに、290万ドルの内訳は、火傷への賠償が20万ドル、懲罰的損害賠償が270万ドルである。「懲罰的損害賠償」とは、企業に対する罰として多額の賠償金を科すというもので、日本の罰金と違って国家ではなく個人へ支払われる。

この訴訟の後、マクドナルドをはじめ、スターバックスなどアメリカのファストフードチェーンでは、コーヒーの温度管理が見直されて、カップには「熱いのでやけどに注意」といった注意書きがしっかりと書かれるようになったという。
この訴訟は、訴訟大国であるアメリカの象徴とされることが多い。アメリカの人口約3億3千万人に対し、弁護士は約135万人、日本は約1億2千万人およそ4万人である。日本で裁判というと大事になってしまうが、アメリカでは裁判は日常なのである。

マクドナルドコーヒー事件に関しては、産業界からのネガティブキャンペーンによって、訴えた側が「強欲クレーマー」であるという取り上げ方がされることが多い。しかし、裁判では実際の火傷がかなり重度であったこと、マクドナルドに対しては過去10年間で700件もの同様の苦情があったこと、マクドナルド側の対応や裁判での発言が不誠実であったことから、今回の訴訟は司法による「企業行為を防止をするためのシステム」がうまくはたらいたとする評価もある。

参考


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