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PRってどうしたらうまくいく?広告のプロから「喜んでもらイズム」の秘密を聞いてきた

1冊の本との出会い

こんにちは。はましゃかです。


突然なんですけど、私が美大へ行くぞ!と進路を決めるきっかけになった
1冊の本の話をしてもいいです???

この本に初めて出会ったのは高校生の時でした。


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『あのCMの絵コンテ』。

あまりにも有名すぎる映像が、漫画になってる!と思った当時の私。笑
手書きのコマ割りと手書きの文字が書き込まれたページが続くこの本、いつまでも眺めていられました。

著者の中島信也さんは、日清食品カップヌードル「hungry?」や資生堂の化粧惑星、サントリー「燃焼系アミノ式」「伊右衛門」などなど、誰でも一度は見たことのある広告を手がけてきたCMディレクター。

普段何気なく見ているCMにも、「作り手」がいるんだ、という当たり前のことが衝撃だったこと、そして私も「作り手」側に行きたい!と思ったことを覚えています。

無事、イラストの仕事をいただくようになった今も、中島さんの「らくがきみたいなタッチなのに伝えたいことが全部わかる」、そういう絵のうまさを目標にしてるところがあります。

現在、武蔵野美術大学の客員教授の中島さん。美大生たちに知らない人はいないと言っていいはず。

多摩美大卒のわしには、会うチャンスなんて…

会うチャンスなんて…


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会えた〜〜〜〜〜〜〜!!!!!!!!

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うわめっちゃ見たことある手書き文字!!!!!!

まさかの中島信也さんにお会いできる日がやってきました。
しかも、仕事で、講演を、聞けるとのこと。ぎゃあーーーー!!!!


手書き文字の師匠に会いに

首都大学東京で行われるということで、はるばるやってまいりました。

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この記事では取材依頼をいただいた「東京地下ラボ」プロジェクト内での、CMディレクター・中島信也さんの「仕事で人を喜ばせるということ」についてのお話を書いていくのですが、

このプロジェクトは、中島さんのお話を受けて学生たちがアイディアを出し、1人ずつ見てもらい、2月には作品講評もしてもらえる、無料で…というぜいたくな企画。
学生たちは作品作りを中島さんに助けてもらいながら、学校の課題と違い、出来上がった作品は実際に使われます。

学内で作るものって、習作なので、よほどのこと(SNSにアップしてバズるとか)がない限り実際に広告として使われることはないんです。もったいないよね…

今回は実際の依頼主である、東京地下ラボの主催の東京都下水道局さんがスポンサーなので、作品が実際の広告になるチャンス!!!

ってえっ?下水道局???中島さんにつられてやってきたけど、
全く接点がないぞ…?大丈夫か私…?


アワアワしているうちに、東京都下水道局の黒河さんと伏木さんから説明が。
若い世代にもっと下水道の魅力を知ってもらおうと始まったプロジェクト「東京地下ラボ」。広告やデザインを学ぶ学生たちを募り、公共のものの魅力の発信を一緒に学ぼ!という取り組み。

なるほど…?

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水道と言えど、蛇口をひねって出てくる水道局と、使った水を処理する下水道局に分かれてるらしいんだけど…
昨年の広報さんはずっと、下水道局で働いていると友達に言えずに、水道局で働いていたと言ってたんだって…

えっ待ってそんな…!!そんな……!!!そういう話聞いちゃうとダメだ、
全力で応援します…!!!!まだ何も知らないけど…

基本のあれこれを聞いて、無知だった…と思ったのが、下水道局の仕事は生活排水を綺麗にするだけでなく、大雨の時に浸水から街を守ってるってこと。浸水って雨水だと思ってたんだけど、下水の逆流という危機もあり、それを防いでるということ、恥ずかしながらこのとき初めて知りました……

10月に、「地下神殿」が動いたというニュースを見た人も多いのでは…?
台風19号の際、この取材でお会いした下水道局の皆さんのことを思うと、
もう……気が気じゃなかった…
いや、こればっかりはさすがに、かっこよすぎませんか…


さて、下水道局のみなさんから話を聞いて勉強したあとは、
いよいよ中島さんが登場するのですが…


中島信也さんの「喜んでもらイズム」とは?

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開始10秒、あっ、これはもう目が離せないな、と確信しました。

軽快なテンポのおしゃべりと、
それに合わせてみるみる変わる手書きのスライド。


誰も傷つけないジョークを投げ込みながら、大切なメッセージは歌のように繰り返し、繰り返し。あっという間に終了時間になり、気づけば中島さんが伝えたかったことがくっきりと頭の中に残っていました。

CMじゃんこんなん…もう…才能がこわい…

小学生の頃、「足が遅い」という悩みを、
代わりに「人を楽しませる」ことで解決してきた、というところから話は始まりました。始まって1分で本質にたどり着く中島さん。
好きになってもらうって、「楽しんでもらう」ことなんですね。

楽しみながら自分のことを知ってもらう。
ただ情報を伝えるだけでなく、表現すること。

表現にふれ、喜んでもらい、好きになってもらう。
伝えたいことを、ただの情報から、不思議な力を持った「魅力」に変える。

そのために「ビジュアル」「音」「ことば」などの芸術の力を借りること。
理屈や知識を超えた芸術の力は、相手を喜ばせられるかもしれないのだと。

相手の心を少しだけでも「+(プラス)」に動かすことができれば、好きになってもらえるかもしれない。

魅力によってつながった関係は、需要と供給を超えた「心」の関係になる。

これを、「喜んでもらイズム」!と呼んでいるそう


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学生たちも、釘付けになっていました。
現在までの作品の総まとめを見て、涙する学生も。

今年で2年目になる東京地下ラボ。今年は、30秒の動画を作ります。
日本の30秒を制してきた人に見てもらう今回の課題。
改めて、贅沢な時間すぎるな!!?!?!!?

中島さんの話を聞いて、学生たちは早速動画の案を書き出します。


アースくん、そんなに話してくれて大丈夫…?


取材にあたって自分の勉強不足をひしひしと感じたので、
空き時間に思い切って詳しいところまで聞いてきました。

ぶっちゃけつつ丁寧に教えてくれたのは、
下水道局のマスコットキャラクターのアースくんです。

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アースくん「よろしくお願いしますね」

はましゃか「お……お願いします…!
あの、東京都の下水道には「分流式」「合流式」があるって聞いたんですが、これってどういうことですか?何もかもわからない…


アースくん分流式は、雨水と汚水(生活排水)をべつべつの下水道管で集めます。雨水は川や海にそのままながし大雨のときに浸水から街をまもってます。汚水は水再生センターに送られ、きれいな水に処理されて川や海に流しています。」

は「なるほど…」

合流式は、雨水と汚水をひとつの下水道管に集めて、一緒に水再生センターに送られますが、大雨が降り、下水道管の許容量をこえそうなときは街を浸水から守るため、汚水混じりの雨水を、雨水吐口から川や海へ放流します。

は「えっ

ア「この放流をなるべく少なくするために、雨水を一時的に溜めておく施設の整備を進めています。」

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は「…それは…汚れた水が川や海へながれてしまうということですか…?」

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大雨の時は浸水から街を守るため苦渋の決断をしています。
そこで、川や海などの水質保全を図るため、雨水吐口から放流するときに、ごみなどが流れないような対策も進めています。」

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は「私…どうしよう…キッチンから流すものは全て綺麗な状態になってくれているものだと思ってました…!」


ア「・・・・・」

アースくん


ア「下水道局が皆さまに油を流さないでと伝えているのは、下水道管の中で油が冷えて固まって、詰まりや悪臭の原因となるからです。清掃員が定期的に下水道管の中を洗っているんですよ。」

は「うわ〜〜〜〜〜〜〜!!!!!(罪悪感)

ア「ご自宅の排水管を綺麗につかってもらうことは、そのまま川や海を綺麗にすることに繋がるんです。」

は「カップ麺の残り汁、これからは吸い取ってゴミに出します!!!」

ア「そんなところからでもちょっと関心を持ってくれるだけでアースくんはとっても嬉しいんですよ

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クライアントの本当の望みを見つけて、叶えるということ。
いくらヒアリングをしても向こうにPRして欲しい気持ちがあると、
いいことしか教えてくれず、本音を聞けないことがある。

人生相談のようにクライアントの悩みを引き出すことができれば、
問題を解決するためのクリエイティブが力になれるかもしれない。

中島さんは、それを「喜んでもらイズム」って呼んでいたんだ。

作ったもの勝ち

最後は、学生たちのアイディアに中島さんと下水道局のお二人がひとつひとつコメントをしていました。

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「もし通らなくても勝手に作っちゃえばいい。
世の中、勝手に作ったもの勝ちだから。」


これを受け、学生たちは2月の発表会に向けて制作を始めます。


次回、海へ!!!!そして実際に水再生センターへ!!!!!

実際に東京の海川の歴史を学び、どれだけ海の状況が改善したかを見に行きます。そして、海辺に流れつくものはどんなものかを拾う、
「ビーチコーミング」を実際に体験します。

ぜひ、東京地下ラボのこれからに注目いただけたらと…思います。

みんなたち


おわりに

私はインフルエンサーと呼んでいただくこともあるのですが、
もともとは「あのCMの絵コンテ」を読んで広告業界に憧れ、
美術系を志した浪人生でしたし、
美術大学では今回の分野である「広告」について勉強していました。

私が憧れた、PRを本業にしている人たち、広告代理店の人たちは、インフルエンサーと違って自分が好きなことだけを選んでPRするわけにはいかない。むしろ、誰も振り向かないような、誰も相手にしないような、そんなところに寄り添って、いいところを見つけて、多くの人に振り向いてもらえるように工夫するのが彼らの仕事のひとつ…ですよね。

もし、私がインフルエンサーだけをやるのなら、好きなことだけをPRした方がいいのかもしれないけど。

「広告」を学んだ身としては、依頼をいただくまではまず自分が興味を持つことがなかったであろう、そんなものにこそ、
どこまで楽しんでやれるか挑戦したいと思ってしまってる自分がいます。
そんなきっかけをもらう取材でした。


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文:はましゃか(@shakachang
撮影:タカハカイ(@tkhki
イラスト:Hamamoto Natsumi(@caphamamoto


この記事は、東京地下ラボ by東京都下水道局
PRとして書かせていただきました。


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