おしりの悩み ~痔ろうとボク~ vol.1
みんなは痔ろう(痔瘻)って知ってる?
痔ろうは、切れ痔やいぼ痔に並ぶ、痔3兄弟の次男なんだ。
切れ痔(長男)いぼ痔(三男)は誰もが知ってるスター。看板だ。
周囲の三人に一人は、重度・軽度問わず
発症した人がいるって感じ。
それに対して痔ろうは穴痔(あな痔)の異名も併せ持つ割に
周囲の発症者はおろか知名度も低い。
そして最も厄介な存在。ジロー。
そんな痔ろうにまつわるエピソードをお話するよ。
…本当はこんな話、恥ずかしいんだからね!
第一章:痔ろうの兆候
深夜の晩餐
遡ること10年前、その日ボクは深夜まで残業をしていたんだ。
当時はまだ会社を立ち上げたばかりの状態で、
毎日午前0時を回って帰宅することも珍しくはなかった。
そんな激務に追われる毎日、ボクと同僚の二人で仕事をしていると
別のフロアに残っていた上司が、食事に行こうと誘ってきたんだ。
正直、食事よりもサッサと仕事を片付けて帰りたかったけど
「中抜けしてでも行こう」という上司の強引な誘いを断れるはずもなく、
しぶしぶ僕らは食事に向かうことになった。
遅くまで頑張っているボクたちに食事をご馳走してくれるならと、
前向きに捉えることにしたんだ。
車を10分ほど走らせ、向かったのは「天一(天下一品)」だった。
(惜しい。これがラーメン二郎なら・・ ←)
天一のラーメンはきっと好みが分かれる味だと思う。
初めて食べた時のことは今も忘れない。
今まで嗅いだこともない臭いと、重量感たっぷりのドロドロスープ。
口に入れた後に残り続けるザラザラ感。
もたもたした麺。
これまでのラーメンの常識を一瞬でぶち壊していったあの感覚を
当初はまったく受け入れることが出来なかった。
しかし、天一の求心力は本物で、
2回目から、臭みが消え
3回目から、うま味に変わり
4回目から、虜にされた
と、食べる回数を重ねるごとに魅力へと変わってしまう
不思議なラーメンだったんだ。
お店に着いたボクは、もちろんこってりを頼んだ。
あっさりは邪道だと思ってる。
天一はこってりを食べてこそ本領を発揮するんだよね。
ボクの期待した通り、やっぱりこってりは美味しかった。
麺を超え、箸に絡みつくドロドロスープ。
そして口の中に残る異物感。臭い。
ふあぁ…たまらない。
もちろんスープは残さず平らげた。
「ご馳走様。一人、800円ね」
…おごり…じゃ…なかった。。
ボクは、絶望したー。
津波
食事を終えたぼくらを待っていたのは、残された仕事という
ただただ、現実だけだった。
お腹を満たした上司はそのまま帰宅。
中抜け状態から、再び残業代の発生する勤務状態へと戻し
目の前のリアルと格闘すること1時間、それは突然キタ。
お腹が…お腹が痛い…!
なんの予告もなく、急にエンディングを迎えたような盛り上がり。
刺しこむ腹痛に耐え切れず、ボクはトイレへ駆け込んだ。
ものすごい勢いで下る、下る。急流すべりもなんのその。
乗ったことないけど富士急ハイランドのHUJIYAMAってこんな感じ?
ってくらい、出た。噴射が止まらない。
なんだこれ…馬鹿げてる…食事なんて行かなきゃよかった…
苦悶の表情を浮かべながら、ボクは上司を呪った。
結局30分近くトイレに籠りっぱなしで、
ようやく落ち着いた頃には、ボクはもう闘う気力さえ残ってはいなかった。
全てをぶん投げて、その日は帰宅。
帰宅後も定期的な大波・小波を繰り返し朝を迎えた。
違和感
潮が完全に引くまでに三日、ようやくいつもの調子に整った。
もちろんその間も仕事は待ってくれず、無我夢中で片付けていたんだ。
その時、ある違和感を覚えた。
おしりの下部、太ももとの境目あたり。
気持ち穴寄りの部位が、なんだか痛い。
触ってみると固く、しこりのようなものを感じる。
なんだこれ?
ズンッ!とした重みまである。
痛い痛い痛い…。
気にしないようにしてたけど、なんか無理だ。
しこりの辺りが重く、ずんずんずんずん鈍い痛みが低く響いてる…。
強烈な打撃ダメージではないから
歩けないとか、座れないとかはないけど、とにかく痛い。ずっと痛い。
それから数日、なるべく刺激を与えないよう心掛けていたけど
痛みは引くどころかますます強くなっていった。
しこりはパンパンに腫れ上がり、うっすら熱を持ってる感じさえあった。
これは…絶対に良くないヤツだと肌感でわかる。。
ボクは病院へ行く決意をした ー。
肛門周囲膿瘍(しゅういのうよう)
きっとボクと同じ、おしりに違和感を感じた人は
ジローの前にこのワードにたどり着いたと思う。
これが痔ろうの前身。親類。
全てはここから。
これが出来たら既に詰んでる説もある。
それぐらい厄介な病気。
通院を決めたボクは、最寄りの肛門科を調べ上げ
小さいながらも評判の高い病院へ通うことにしたんだ。
それにしても肛門科か…肛門科…
なんでだろう。
肛門科って、なんでこんなに恥ずかしいんだろう?
ストレートすぎるネーミングに問題があるのかな…。
ー。
問診の結果、先生から下されたのは
肛門周囲膿瘍だった。
肛門周囲膿瘍は、下痢などが肛門腺に入り込み
肛門の周辺に細菌感染が生じ、膿が溜まる病気なの。
…もう心当たりしかなかった。
数日前のアレが原因であることは明白だったから。
声を大にして言う。
悪いのは天一じゃない。上司である、と。
処置
ベッドの上で横向き体育座りの姿勢のままのボクをよそに
先生は説明を続ける。説明後、時間をかけることなく
「指、入れまーす」の一言。
これが第一の ”激痛”と”辱め”だった。
んんッ・・!!ンッッ!!!
割と強めに声が漏れた。
ぐりぐりぐりと、容赦なく指を入れられ
かき回された感じがした。痛かった。
どうやら肛門周囲膿瘍に間違いがないらしい。
あとは薬などをもらってお終いだろうか。
いや、終わるはずなかった。
「膿がかなり溜まってるんでね、切開します」
ここでNOと言える人はいないだろう。
先ほど穴攻めにあったばかりだというのに、
まさか物理での追撃(2回目)が待っているとは思わなかった。
気が付けば、お尻部分にぽっかり穴があいたズボンに履き替えており、
そこに逃げ場はなかった。
麻酔を注入される。震える。注射は嫌いなんだ。
痛かったらどうしよう…ダメだ。めっちゃ恐い…。
痛あぇぇええアアァ!!!!←
声出るよぉォォォォー!!ー!!声があぁぁぁぁー!!
第二の攻撃は、”激痛” なんて生易しいもんじゃなかった。
初めて耐えられないって思った。
あらかじめ身構えていたのに、はるかに想像を上回ってきた。
声を出すことすら恥ずかしいと微塵も思わなかった。
シンプルに痛い。
刺される痛みはきっと、老若男女問わず等しく痛い。
つねったり、ムチで皮を叩いたりする、あのタイプの攻撃に
分類されると思うんだ…。
おしりの3、4ヵ所に麻酔を打たれた。
激痛が走ったのは最初だけで、あとは殆ど痛くはなかった。
麻酔が効いてきたのだろう。
メスでおしりのしこりに触れられる。
痛い?と先生が聞いてくるけど、あら不思議。
触られている感覚は確かにあるのに、全然痛くない。
きっと今切られているんだろうってのも
何となく分かる。
まるでゴムゴムの実を食べたような感じ。
数分前の激痛が嘘のように、メスの痛みを受け流していた。
ボクは…ルフィになったんだなぁ。。
切開は終わった―。
このお話は、次回へ続きます。
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