成功するM&A、失敗するM&A3つのポイント

様々な企業のM&Aのお手伝いをさせていただいていて、「うまくいくM&A」と「うまくいかないM&A」の違いについて、いくつもの共通点があると感じています。どのようなM&Aであればうまくいくか、逆にどこを外すと失敗するかについてお伝えします。

1.「いいところを買おう」と思うと失敗する

画像提供:PIXTA

よく「いいM&Aできる先ない?」というご相談をいただきます。

そのような話をする会社は業績がよく、さらなる成長のために、買収できるところがあれば買いたい。そう考えるのは自然なことと言えます。

ただし、実はそのような考えでM&Aを行うのは、失敗の素です。

そもそもの考えとして、買収する側の会社がぜひ買いたいと思うような優良企業ならば、売りに出るはずがないと思いませんか?

売る側にしてみれば、何かしらその会社を売ろうと思った理由があるはずです。それは事業がうまくいかないのか、後継者がいないのか、はたまた別のことなのか。

そのまま買ってすぐにうまくいくM&Aなど存在しません。もちろん何かしらいいところがあるから買収に進むわけですが、候補のメリット・デメリットをしっかり見て買収を検討していただきたいと思います。

M&Aにあたってデューデリジェンスをすることなど、当たり前の当たり前なことですが、その重要性を、大事なことなので改めてしっかりお伝えしたいのと、デューデリジェンスでOKだからM&AもOK、と単純に考えないでいただきたいというのが、お伝えしたいことです。

2.「買って終わり」と考えると失敗する

画像提供:PIXTA

1つめの失敗ポイントともつながるところですが、買う側の会社は往々にして「うまくいっているうちの会社のやり方を導入さえすれば成功する」と考えがちです。

M&Aを行ったある企業は、業績が悪く赤字の同業の会社を買収しました。買収企業の成功パターンを導入したことで、赤字企業の業績が改善し、黒字化しています。

文章にすると簡単なことのように思えるかもしれませんが、実際にはそう一筋縄ではいきませんでした。うまくいくまでに、多くの時間と労力、コストをかけています。

まず、買収する企業の経営者が買われる側の会社を視察したところ、「これはダメだ」と感じたそうです。

「自社の成功パターンを導入する以前に、基本的なことができていない」

そう感じたその社長が行ったのは、自社の幹部を送り込んでのその会社の立て直しでした。まずは会社として基本的なことをしっかり守り、業績を上げられる体質に改善する。それが完了してから自社のスタイルを浸透させていく。それが目指したことです。

それが済むまでに赤字が続くことは「もともと赤字の会社を買ったのだから」と気にせず、改善のためにお金がかかることに対しては、資金援助も行いました。

自社の成功パターン導入は、そのあとです。また、そこまでしっかり準備をしたあとだったので、そこからの成長は速かったです。

成功の理由には、「買って終わり」ではなく「自社が関わることでどのように段階的によくしていくか」というビジョンがありました。

逆に言えば、ビジョンなしに「うちの会社のやり方を入れればうまくいく」と考えても、失敗しやすいということです。

3.「買った会社>買われた会社」のつもりでいると失敗する

画像提供:PIXTA

買う会社は往々にして、売る側の会社よりも立場が上と思いがちです。

そしてそれが失敗しやすいポイントと言えます。

企業も結局人でできているので、買われる会社にも働く人がいます。

買う会社が、買われる会社の経営者に対しどのような態度を取っているかを、買われる会社の従業員は敏感に感じ取っています。

その会社で働いてきた自分たちも、同じような扱いをされる。それがひどい扱いならば、そのような買収先でモチベーション高く働いてくれるでしょうか?

M&Aを行ったある会社は「買収した企業のよい点を自社に取り入れ、いかにシナジーを起こすか」をM&Aの最重要ポイントとしました。

買収される企業の、自社にないよさ、企業文化はどのように醸成されているのか、そしてそれを自社にも植え付けるには何をしたらよいかを、買われる会社の経営者に聞いて学んでいるのです。

そのように買う会社、買われる会社に上下関係がない、むしろ時には買うほうが買われるほうにも学ぶ姿勢を持つこと、それが大事といえます。

エアコンメーカーのダイキンは、海外の空調メーカーを買収した際に、歓迎の意味で自社に招待しようと思っても、買収された会社にしてみれば「呼びつけられた」と感じる、では訪問すれば「乗り込んできた」と思われると考え、対等な関係であることを演出するために、第三者の場所であるハワイで、ダイキンと買収先企業の幹部が交流するミーティングを開いたそうです。

同社の取締役会長、井上礼之氏は「結局、経営は人がやるんですからね」と語っています。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?