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2.購買に繋がる「商品力」の増幅方法

こんにちは、元祖 鯱もなか本店のけんじです。

私たち夫婦は2021年に廃業寸前の状態で家業を継ぎ、娘である妻が代表となり、夫婦で経営者となりました。

バズりまくってV字回復したエピソードはこちらの記事をご覧ください。

後継者の方、ご自身で事業をされている方、情報発信をしている方等に参考になるような情報をお届けしています。

流れるような購入導線を設計

ちょうどいい入口商品を用意する

「1」の記事の準備で循環型の販売プロセスができ上がってきました。ここでようやくメディアへ一気にアプローチする段階となります。具体的にはプレスリリース原稿を作成して送る作業ですが、その前に取り組んでおきたいことがありました。

それは、オンラインサイトにアクセスが集中した場合、これを買えば大丈夫という、ちょうどいい入口商品を置いておくことです。

その頃はまだほとんどの方が知らない「鯱もなか」です。鯱もなかを買ってほしいのはもちろんですが、粒あんが苦手、あんこ自体が苦手という方が多いのも事実。

ありがたいことに鯱もなかを食べてあんこが食べられるようになった、という方は結構いらっしゃいますが、それはあとの話です。もなかだけではなくて、焼き菓子等の洋テイストのものも詰め合わせたお試しセットを作ることにしたのです。

「鯱セット」は狙い通りの爆発力

それが「鯱セット」です。

内容物は以下です。

•元祖 鯱もなか…2個
•鯱フレンド(フィナンシェ)…2個
•鯱フレンド(サブレー)…3個
•金鯱フルーツケーキ…1個

4種を詰め合わせているのですが、見ての通り全て「鯱」にちなんだお菓子です。弊社は社名・店名・商品名に鯱を冠しているように、鯱にコミットしています。この鯱セットを送料無料にし、お試し用の入口商品として用意したのです。

送料無料が実現できた理由はクリックポストです。クリックポストとは日本郵便が提供するサービスで、一定以内のサイズであれば全国一律185円で送ることができます。その分を商品代金に含めることで、北海道から沖縄まで一律送料無料でお届けすることが可能です。

梱包は簡易的で、お渡しはご自宅のポスト投函となりますが「まずはどんなものか食べてみたい」という方向けに、購入画面へ進んでいただけるように設計した商品です。一つ一つのお菓子は元からあったものですが、詰め合わせ方を工夫することで魅力的な新商品となりました。

そして鯱セットが完成した直後の2021年9月11日にYahoo!ニュースでトップに掲載。たちまちネットの通知と電話が鳴りやまなくなりました。狙いは見事に当たり、一番売れた商品は鯱セット。一週間で300個を超える売上を記録しました。

オンライン化が完了していたことと、入口商品を用意してあったことが功を奏したといえます。

もう一つの事例を紹介します。

テレビきっかけで通販をはじめた「ピスタチオ大福」

それがこのピスタチオ大福です。

ピスタチオ大福は私たち夫婦に世代交代してからできた新商品です。大福の生地でピスタチオ風味豊かなクリームを包み込み、カリっとしたチョコチップと小豆のアクセントが特徴的な一品です。

自信のある味は元より、組み合わせの意外性やピスタチオ人気も相まって、瞬く間に売れ筋商品になりました。ですが生菓子で日持ちが翌日までのため、本店限定で販売していました。それが「あるきっかけ」により冷凍でのオンライン販売が実現することになりました。

「ウラマヨ!」への出演です。ウラマヨ!は関西テレビ放送の番組でブラックマヨネーズのお二人が司会をされています。こちらに妻と一緒にスタジオ出演させていただき、弊社のストーリーや商品紹介をさせていただきました。

スタジオではブラックマヨネーズさんのほか、橋本マナミさん、芸人の「女と男」さん、前園真聖さんの面々が揃い、鋭く軽快な司会の元、トークが回されていきます。そこで実食品として配られたのがピスタチオ大福です。

一流芸能人の皆さんに絶賛していただける様子をスタジオで目の当たりにし、これが放送されればすごい反響になることは優に想像できました。極めつけは撮影終了後に前園さんからかけていただいた一言です。「最近こういうスイーツの冷凍通販が増えているから、絶対やった方がいいですよ!」と言われハッとしました。

せっかくのチャンスに対応しない手はありません。ウラマヨ!は関西圏の広域と東海地方でも放送されている番組です。本店への来店も期待できますが、遠く離れた場所で視聴する方が多いのも事実。放送日までは1ヶ月ほどの時間があったので、ピスタチオ大福をクール便で送れる態勢を整えておきました。

そして番組開始と同時に発売スタート。放送中から注文が相次ぎ、100個以上が売れていきました。今回も鯱セットがたくさん売れたので分散しましたが、本当に多くの方にお買い物していただくことができたのです。

これを機に、もの珍しい新商品だったピスタチオ大福は、当店の新たな定番商品と呼ばれるようになっていきました。

中核商品への新たな意味づけ

鯱もなかの価値とは

購買のきっかけとなる入口商品作りに取り組んできたことで、改めて弊社の中核商品である「鯱もなか」にも向き合うことができました。どこまで行っても一番売れるのは鯱もなかです。最近まで、なぜ鯱もなかが売れるのかといえば単に「名古屋っぽいから」「シャチホコの形だから」そんな風に考えていました。

ですがSNS上でお客様の反応が投稿されるようになり、逆に気づかされた概念があったのです。

鯱もなかは可愛いかった?

なんと鯱もなかが可愛いという声を、割と頻繁に目にするのです。

確かに、鯱の形が精巧に模られているので、ミニチュアのおもちゃのようです。そういえば小さな食品サンプルキーホルダーが可愛い、という概念があるように「ミニチュアだから可愛い」というのはあり得るなと腹落ちしました。

そして、お菓子本体に目と口、つまり顔があります。少し怖いけど口角が上がっているように見えるこの表情。睨んでいるようで笑顔にも見えるギャップ。これも可愛い要素を構成しているようです。

あとは様々なシーンで写真撮影用に使えたり、オリジナルアレンジで美味しくお洒落に楽しめる、というのも可愛さに通ずるものがありそうです。

本物の金のシャチホコは持ち運んだり自由に動かせませんが、鯱もなかなら自由に動かせる。これもSNS時代ならではの楽しみ方かもしれません。「名古屋らしさ」が売りだった鯱もなかは、令和になって「可愛さ」という新しい価値を手にし、なんだか以前より生き生きしている気がします。

全く同じ商品でも「どう意味づけるか」によって見え方が変わる典型例だと思います。数年前まで先代は、売れ行きが悪くなってきた鯱もなかを「古臭いから売れない」と寂しそうに結論づけていました。ですが、時が経っても金のシャチホコが色褪せないように、鯱もなかもまた時代を超え愛される商品力を持つお菓子だと、信じているのです。

そこにあって当たり前で、なんの変哲もないと思える自社商品、もう一度よく見つめてみませんか?

売店向けパッケージを一新

「商品自体」がどう受け入れられるのか、それを理解したことで今度は「商品パッケージ」の一新に着手しました。売店販売用の分のみで、本店やオンライン販売分は従来のままとなっています。

どう変わったか説明します。従来のパッケージはシャチホコの絵が描かれた金色の包装紙です。

対して新しいパッケージは白を基調に名古屋城の屋根をイメージした和柄に鯱もなかの写真が載っています。包装紙ではなく箱に直接印刷されているのもポイントです。

商品の形をパッケージに見せることで、一瞬パッと見て鯱型の最中だと理解することができます。鯱もなかは形に大きな強みがあると確信が持てたので、これを最大限活かせるデザインとなっています。変更後の売れ行きは順調に伸びていきました。

商品力を言語からビジュアルへ反映

第一に「鯱もなかが可愛い理由」について言葉で確信を持ちました。それをビジュアル化する作業がパッケージ変更だったのです。商品が持つ強みについて理屈で考え抜き、その結果を直感へアプローチできるようなデザインに落とし込みました。

私は言葉で表現することが得意ですが、芸術畑出身の妻は五感を駆使したトータルデザインへのこだわりが強いです。デザイン会社さんにリードいただきながら、私たち夫婦もそれぞれの得意領域から意見を出し合い、最終的に全員が納得できるパッケージを手に入れることができました。

デザインしていただいたのは同じ大須エリアに事務所を構えるデザイン会社「シー・エム・バー」さんです。

ちなみに本店とオンライン販売分が、従来の金色包装紙のままになっているのも理由があります。新しいパッケージはあくまで、売店に並ぶ沢山の商品の中から鯱もなかに目を止めてもらうためのもの。確実に当店に興味を持った状態で、本店やオンラインでお買い物されるお客様向けではありません。

逆にそのようなお客様には金の包装紙の方が丁寧で、贈答用に丁度いいと喜んでいただけるケースが多いので、そのままにしています。

最後に

ここまでお読みいただきありがとうございました!

入口商品と中核商品の切り口で、商品力の増幅方法についてお伝えしてきました。手軽さや話題性でまずは入口商品を手に取ってもらうこと。会社の看板となるような中核商品については、その価値をしっかりと掴んで言葉にし、見せ方を工夫する、という内容でした。

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それでは次の記事もお楽しみに!

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