リテール証券営業の話

社畜です。ご覧頂きありがとうございます。自己紹介の記事をご覧になられた方はご存知とは思いますが、私は現在投資銀行に勤めている社畜で、過去リテール部門で営業をしていました。投資銀行に関してはおそらくあまり業務内容に興味を持たれる方も少ないのかなと思いますので、リテール時代の話をしようかなと思います。

リテール時代は新規開拓を法人のお客様を中心に入社した頃は取り組んでいました。途中からは引き継ぎなどがありますが、基本的にやることは変わりません。相場の状況から最適な商品を提案する、これだけです。

よく頂くご質問としては、どのように開拓していたのか、ということです。

私の場合は田舎だっということもあり、基本的には飛び込みが多かったと記憶しています。東京は飛び込みは今も昔も煙たがられますが、田舎では比較的多くの地域で熱意として捉えてくれる経営者が当時は多かったです。

飛び込み>会えた人にはお礼の手紙、もしくは巻紙>再度訪問。この繰り返しでした。

飛び込む件数の目標は1日100件。もちろん最終的には口座開設をして頂き、商品を買ってもらうことが目的なのでそこに拘っていても仕方ないのですが、詰められるので、成果のない日は100件飛び込み終わるまでは支店には帰れません。

その点に関して一番新人の頃にやばかった話(社内的な)で行くと、台風が来ていて、外には誰もいないような日だったのでさすがに危ないと思い会社に来て電話をしていたのですが、上司に「なんでおるねん、台風やったらみんな家おるやろ、かっぱきて同情誘って開拓してこい」との指令を言い渡され大雨と風の中死ぬ覚悟で飛び込みをした記憶があります。不思議なことで、この日にお会いできた社長様が私の一番の大手のお客様になるのですが、その当時は知る由もありませんでした。

また、よく頂くご意見として、損するとわかっている商品を売りつけることもあるだろうと言われます。実際のところは、ごく稀にそう感じることもあります(ホールセールが出してくるバリュエーションに疑問を抱くという意味で)が、基本的にはないです。何故なら損したらリピートオーダーが基本的にはもらえないから、です。証券会社は所詮手数料ビジネスなので、常にオーダーを頂かないと成り立ちません。その為にはお客様を儲けさせ続け、手数料を頂くwin-winな関係を作らないと長くは持ちません。トップセールスは人を騙すことがうまいだけ、なんて言われますが、そんなことはないと思います。合理的な提案があり、意味不明な運用をしようとしなければ基本的にエクイティは上がるようにできているからです(これはまた別の記事で話したいと思います)

では何故証券会社に騙された、という書き込みや声が世の中溢れかえっているのでしょうか。

それはもちろんセールスが悪いパターン(レベルが低い提案しかできない)もかなりありますが、「金融教育」が日本では致命的に遅れているからです。顧客が自分の持っている資産の商品性を理解していないケースがかなり多いです。私がセールスの頃にもありました。「わからないから君に任せるよ」とおっしゃるお客様です。本来的にはこれはセールスであれば信用の証であり、一番の名誉あるお言葉なのですが、他人に自分の資産の全てを任せるのはどう考えてもダメでしょう。私もこのお言葉を頂戴した際には、「ありがとうございます、でもご納得されないと注文を流せません」とお伝えして毎回理解してもらうまで説明をしっかりしました。これは結局後々、お客様が理解せずに約定した商品が損になった時に説明する羽目になるのですから、納得してもらっていればフォローのハードルはかなり下がります。

また、同じパターンの商品で似ているものがこの業界には多く存在します。なので、そのパターンの商品はどこを見て良し悪しを判断するのか、ということをお客様に「教育」していました。そうすることで、次回以降は電話などで商品のポイントがうまく伝わり、納得のいく約定を頂けるのです。例えば投資信託であれば、最低でも見なくてはいけないところは手数料と組み入れ銘柄に関してです。個人的にはこれに加えて運用チームの情報も大事だと思いますが。

私は本来はこれは学校でやるべきであると思っています。特に日本のような世界的に見ても低金利、かつ高齢化が進んでおり年金が受け取れるかも怪しい様な国であれば、資産運用をせざるをえないというのが現実です。老後2000万円問題なども話題になりましたが、正直ある程度ゆとりを持って暮らすのであれば全く足りないと思います。

預けた金が上がればまた更に預けて頂ける。金利が付かず、金の置き所に困っている富裕層以上のお客様はなおその傾向が顕著です。扱っている商品が他社もほぼ同じであるこの業界においては結局は営業マンの運用パフォーマンスが一番満足度に直結します。何の為に運用しているのかというと資産を増やす為なのですから、よく考えたら当たり前ですが。

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