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低血糖と私 No.1

私はときどき低血糖症状を起こす。
低血糖になってわかったのは、
私の身体は私の思い通りにはならない、ということだった。
そして、私の意識は身体にコントロールされているということ。

低血糖になると、言動がおかしくなる。
自分が何をしたいのか、それまで何をしていたのか、
わからなくなってしまうのだ。
軽い低血糖症になっただけでイライラしてくる。
落ち着かない。頭がまわらない。時間が早く回るような感覚がある。
エネルギーの回り方というか、私自身の回転速度というか、
何かそれが狂ったような感覚である。
低血糖は身体の中の物理的な現象なのに、
それが私の意識状態を大きく変えてしまうのだ。

ジムに行った帰り道、なんだかふらふらしてきて、
いつも通っている道のはずが知らないところのように見えてくる。
毎日使う駅なのに、初めてきたプラットホームに思える。
電車に乗って、なんだか遠い未知の場所へ行くような気がしてくる。
「ここはどこですか」と誰かに聞きたくなるが、
声を出すことも、誰かとコンタクトすることもできなくなる。
どこか遠くのほうで、“低血糖になってるんだよ”と聞こえてくる。

何度かそういった経験をした私は、
ふだんの自分の持っている意識が、
本当に自分のオリジナルのものなのかと疑うようになった。
「私の意識」だと思っていたものも、
物理的な生理作用でしかないのかも、と思ったりする。

――だけど、身体から離れるともっと自由になれるのかもしれない。

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