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現実に奪われた、心の自由を取り戻す話。アニメ映画「ジョゼと虎と魚たち」

海洋オタクの学生恒夫と、車いす生活を送るひねくれものの女性ジョゼ
恒夫が引き受けた「ジョゼのわがままを聞き、相手する」という謎のバイトを通して、二人は惹かれあっていく。そんなお話です。

爽やかな純愛物語で、素敵な作品でした。
家にこもり、妄想とお絵描きに熱中するジョゼ。それは、足の不自由を理由に諦めてきた、ありとあらゆる現実の裏返しで。

そんな彼女を外に連れ出したのが恒夫。海洋オタクで、夢に向かって前向きに頑張っている、そんなどこにでもいそうな設定がよかったです。
ひょんなことをきっかけに、赤の他人だった恒夫は、ジョゼの車いすを押してくれる存在になりました。

この作品の車いすによる表現が好きです。
車いすを恒夫に押してもらい、支えてもらうだけだったジョゼ。ただ、二人の関係が進むにつれて、位置関係が変わっていきます。
物語の序盤では恒夫が後ろから車いすを押す描写が多いですが、だんだんと横並びの画が増えていき、最終的には電動車いすになって、恒夫のサポートは必要なくなります。きっとこれからは、隣に並んで歩いていくことになるんだなと思い、互いの夢を支えあう二人にピッタリの演出で、おしゃれだなと思いました。
「ジョゼの成長と自立」ともとらえることができて、そういう意味でも素敵です。

こういうさりげない、おしゃれな表現がこの作品がもつ一つの魅力だと思います。

二人で虎を見に行くシーンも印象的でした。
恒夫に対する特別な感情の芽生えに気づいたジョゼは、虎を見たいとリクエストします。
このシーンは原作小説でも共通の場面があり、「好きな人ができたら、一番怖いものを見たかった」という表現に、感服しました。

この映画のテーマの一つが、夢の話です。
人はみんな、自由な心を持っているけれど、どうしようもない現実が目の前に現れると、心までもが不自由になってしまう。
そうじゃなくて、現実という不自由の中で、自由に前向きに生きていく、そんな生き方って素敵だなと、考えさせられるお話でした。

毎日頑張って生きてるすべての人に見てほしい、心に寄り添ってくれる作品です。




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