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ペットボトルはリサイクルの優等生?

今回は身近なモノのプラスチック系で、地球環境を考えてみたいと思う。今回のプラスチック製品は、私たちがいつもお世話になっているペットボトル。ペットボトルを使う場面はドリンク用が一番多いと思います。コンビニやスーパーに行けばありとあらゆるペットボトル入りの飲み物が並んでいるし、自動販売機ではペットボトル対アルミ缶の競り合いが見られるし。でも、たしか僕が子供のころはペットボトルはなかったけど、いつごろからでてきたっけ?

ペットボトルの歴史を紐解くと、日本では1977年のしょうゆ容器として採用されたのが採用。僕と同世代ぐらいの歴史があるのか、なんだか親近感が。飲料用として本格的に使用開始したのが1982年の2月、食品衛生法の改正でペットボトルの炭酸飲料や果物系飲料の製造がはじまった。それから私たちの生活には欠かせない容器となった。

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でも何で今回ペットボトルについて改めて考えようと思ったのは、ここ最近のプラスチック製品を削減しよう・なくそう、と言う世の中の流れで、ペットボトルに関しても、マイボトルを使おう、アルミ缶や紙のカートン容器に変えよう、という図式が本当に成り立つのだろうか?と疑問に感じているからです。マイボトル、僕も持っています。僕のマイボトルはこれ、おそらくマイボトルの中でも一番小さいサイズ(200 ml。写真の真ん中)。このサイズにした理由は二つ。①体が求める飲料サイズにピッタリ、②荷物を極力軽くしたいので。

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今回の問いは、「マイボトルを持つことの本当の意味は何か?」である。

まずはデータを見たいと思う。PETボトルリサイクル推進協議会の使用によると、日本における2018年の指定ペットボトルの販売量は62.6万トン、回収率はなんと91.5%、優等生!!確かに各家庭の基本的なペットボトルのサステナビリティアクションは、飲み終わる→蓋とラベルと本体を分ける→本体を洗う→乾かす→分別して捨てる、というのが私たちのオートマチックのモーション。皆さんも何も考えずに自然に・自動的にこのモーションをしているはず。

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リサイクル率は目標の85%にはちょっとだけ届かない84.6%。国内リサイクルが約53%、海外輸出後の資源化・リサイクルが約31%。輸出に関しては様々な賛否両論があります:国内資源循環の理想と現実、国境をまたいだ資源循環の理想vs構想vs現実、バーゼル条約の原則vs資源流動化の必要性vsテクノロジーの高度化。現状分析はかなり複雑化となっています。

国内の状況を見てみましょう。皆さん家庭から出すペットボトルは一度洗うのが、実はリサイクル価値を上げているのです。でもここで一つポイント、ペットボトルを洗うのために水資源を使っているという事。ちなみに、500 mlのPETボトル1本あたり約119 ml ~146 ml使用しているというデータもあります。これを環境的に考えるとどうなるか、と言うのも掘り下げると面白いかもしれない。

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どのようなリサイクルが行われているのだろうか?その一つは使用済みペットボトルの循環型リサイクル、つまりボトルtoボトルは約7.2万トン、リサイクル全体の2%程度にしか過ぎないが、これは今後も伸びていくはず。その例としては、セブンイレブンの100%リサイクル素材でできたお茶「一(はじめ)緑茶 一日一本」。セブンは面白いシステムがあって、飲み終わったペットボトルをコンビニにあるペットボトル圧縮機に入れて回収、nanacoポイントもたまる。今のところ、主に都内のセブンイレブンに回収・圧縮機が設置されている。大阪在中も僕には今のところ普段は使えないが、何回か都内で試したことがあって、顔が笑顔になる結構楽しい機械、ぜひ皆さんお試しを。リサイクルの詳細はこちらを。

セブン&アイホールディングスはこれをシステム化していて、ペットボトルをリサイクルしてインナーウェア、ボディクーラーとしても販売しています。皆さんがセブンイレブンのペットボトル圧縮機に資源を戻すことで、それがインナーウェアとなってイトーヨーカドーの店舗に戻ってくるのです。ユニクロも作ってます、ペットボトルからドライEXポロシャツを。技術的にまだ改良の余地はあるとのことですが、気が付かないところで、皆さんのその服、ペットボトル繊維からできている環境に優しい商品かもしれませんね。

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さてここで、容器の話しに戻ります。清涼飲料にの容器別シェアを見てみたいと思う。全国清涼飲料連合会のデータ(生産量ベース)によると、ペットボトル飲料が圧倒的なシェア、75.2%(約16,300,000 キロリットル)、缶詰飲料11.9%、紙容器飲料8.5%、瓶詰飲料1.1%、その他3.3%。ペットボトル以外の容器を見かける例としては、例えば自動販売機で缶詰飲料はコーヒー系やココア系、スーパーでは牛乳や野菜系、フルーツ系、ヨーグルト系、健康系かな。コーヒー系の缶 vs PETボトルの話しは、色々とウェブサイトにあるからそちらを見てほしい。

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もう一つ全国清涼飲料連合会のデータと見たい。それは、一人当たりの消費推移。ここ最近は横ばいだけど、一人当たり年間約180リットル消費しているという事。つまり単純に各容器生産比率とすると、ペットボトル:約135リットル(0.35リットル容器で約386本、0.5リットル容器で約270本)、缶詰飲料:約21リットル、紙容器飲料:約15リットル、瓶詰飲料:1.98リットルとなる。感覚的に一人毎日ペットボトル一本消費している、と言えるのではないでしょうか?

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もう一つデータを見てみたいと思う。それはライフサイクルアセスメント。ライフサイクルアセスメントは、ある物が生産されてから廃棄に至るまでを科学的に分析して、その一生涯に及ぼす影響を分析するもの。だいぶ古いが環境省が2004年に実施した容器包装ライフ・サイクル・アセスメントに係る調査報告書で少し数値を見てみたいと思う。たぶんもっと新しいデータがあると思うけど、検索しても出てこないけど、もし見つかったらデータを更新します。

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ペットボトル1本あたりの二酸化炭素排出量は、ペットボトル500 ml(炭酸用)で110グラム、500 ml非炭酸用で120グラム、平均値は115グラムですね。

もっと身近な数値として、この表の一番下に一口飲み物を飲んだ時に排出する二酸化炭素量を計算してみた。一口と言っても色々あるが、大人の平均値では16 mlという論文のデータを使う事にする。そもそも小数点以下のものすごい小さい数値ではあるが、ペットボトル飲料水一口飲むと(一回ゴックンすると)、ライフサイクルアセスメントの観点として、500 ml炭酸用で3.52グラム、500 ml非炭酸用で3.84グラム二酸化炭素排出しているという事になる。平均を3.7グラムとしよう。

さっきの、日本人は一人当たり年間で約135リットル分の飲料をペットボトルから飲んでいるので、135 リットル / 16 ml x 3.7 g = 約31.2 kgの二酸化炭素を排出していることになる。この二酸化炭素排出量は、ペットボトルのライフサイクルアセスメントとしての計算。物を作る・使う・消費するときには、必ず資源を使っているので、必ず二酸化炭素は排出している、という事に留意を。

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さて、ここで重要な数値が3つ出てきた。①日本におけるペットボトルのリサイクル率は84.6%。②だいたい一人当たり一日一本のペットボトルを消費している日常、③ペットボトルの飲料水を飲むと、一口当たり約3.7gの二酸化炭素を排出している(年間平均で日本人一人当たり約31.2 kgの二酸化炭素を排出)。この数値をどう読むのか?

さて、ここで、今回の問いの「マイボトルを持つことの本当の意味は何か?」を考えてみたいと思う。

マイボトル使用時の二酸化炭素排出量はどの程度なのか?色々なマイボトルがあるが、環境省の推計値でも使用されているステンレス製500ml使用時の二酸化炭素排出量を見てみると、100回使った場合は1回あたり13.90グラムの二酸化炭素が排出されている。という事は、マイボトルを最低13回使うとペットボトルの二酸化炭素排出量以上のサステナブルな効果がありという事になる。

でもここでの難しい点は、マイボトルだと中身の選択肢が限られるという事。マイボトルは基本的に各自家や職場で入れることができる中身、例えば水・お茶・コーヒー・紅茶。夏場になると、自動販売機のあの誘惑に負けて、マイボトルの中に水はあるけど、冷えた炭酸飲料が飲みたい、冷えたスポーツドリンクで熱中症対策、という生理的な要求には勝てません。

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マイボトルを持つ本当の意味は?それは、それを持つというサステナビリティアクションが重要です。マイボトルを持つという事は、お金の節約と言う人が大多数だと思いますが、少なくともペットボトルをなるべく減らそうという意思の表れだと思います。マイボトルを持っている皆さん、何か身の回りでできるサステナブルなことを探していませんか?そう、それです。それが重要なんです。マイボトルとペットボトルをうまく使い分けて、日々の暮らしをサステナブルにしましょう。

でもこれは日本だから、の状況です。日本はかなり特殊です。海外の状況を知っておく必要があります。

重要なポイントとして、ペットボトルの飲料水があるからこそ、日本のように水道水が飲めない地域、安全な水がない地域において、安全な水を飲むことができるのです。SDGゴール6の「すべての人々に水と衛生へのアクセスと持続可能な管理を確保する」では、ペットボトル・容器は重要な役割を果たしています。全世界では、約6億6,600万人もの人が、安全な水を入手することができません。

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開発途上国の現状はどうでしょうか?日本と同じようにペットボトルは比較的リサイクル資源として活躍している場合はありますが、ネット上には、キンシャサコンゴ、などの現状が紹介されています。これらは特にひどい状況だと思いますが、前回もお伝えしましたが、低所得国では廃棄物の90%以上はオープンダンプ処分場に捨てられています。2050年における廃棄物管理状況は、世界平均で約42%もの廃棄物がオープンダンピングされることが予想されています。低所得国や下位中所得国においては、廃棄物を分別する習慣がほとんどないため、リサイクル資源として優等生のペットボトルも分別されず、他の廃棄物と混ぜられ処分場に一度捨てられる。そして、そこから比較的きれいなペットボトルはリサイクル資源として回収される、という状況は今後も変わらないでしょう。高所得国でもペットボトルのリサイクル率は低いです。欧州約42%、アメリカ約20%。いかに日本が進みすぎているかが良くわかると思います。日本の当たり前は、世界では当たり前ではありません。

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