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捨てられたE-waste、捨てられたチャンス:ジェンダーが浮き彫りにするE-waste問題

今回のテーマはこちら、「捨てられた電子機器、捨てられたチャンス:ジェンダーが浮き彫りにするE-waste問題」について。今回もいつも通りに、とある組織からの依頼のプレゼンテーションの準備ノートです。

女子ワールドカップサッカーも開催されていて、ニュースでもLGBTQの事を多く目にするところです。世界トップのサッカー選手が長年抱えていた悩みや思い、社会からの重圧や偏見についての報道もあり、改めてLGBTQ問題の重さを感じるこの頃です。でも、何人かのサッカー選手が、ようやく表立って自分の状態を伝えることができる世の中に少しづつなっている、自分のような選手が伝えることで、多くの同じ状況の人たちを救えることができるかもしれない、と話していました。人間社会に根付いてしまった偏見に苦しめられている人たちが、どれだけいるのかと改めて感じることができましたし、自分自身もその偏見が頭の中に叩き込まれたステレオタイプである事に改めて気がつきました。

はじめに

私たちの日常生活に欠かせない電子機器。しかし、その廃棄物であるE-wasteが環境への負荷を増大させ、その影響は私たちの社会全体に波及しています。さらに、E-wasteの問題にはジェンダーの観点からも注目すべき側面があります。今回は、E-wasteの持つ環境的な重要性と、ジェンダーの観点から見たその影響について探っていきます。LGBTQの話題が世界中で注目を浴びる中、偏見や社会的なプレッシャーがどれだけ多くの人々に影響を及ぼしているかを振り返りつつ、E-waste問題とジェンダーの関連性について深く考えてみましょう。

男性と女性にとってのE-wasteに対しての見方はどのような感じでしょうか?男性にとってのE-waste:

  • 男性は一般的にテクノロジーに関心があり、新しいガジェットや電子機器に興味を持つことが多いです。新しいテクノロジーを探求することを楽しむことがあります。

  • 電子機器を購入する際、性能や機能面を重視する傾向があります。新しい機器を手に入れることで、生活が便利になると期待することがあります。

  • 一方で、男性はリサイクルや廃棄物の適切な処理にも関心を持つことがあり、環境への影響について考えることがあります。特に、テクノロジーの進化とともに古い機器をどう処理するかについて検討することがあるかもしれません。

女性にとってのE-waste:

  • 女性は家庭やコミュニティでの環境に対する意識が高いことが多いです。持続可能な生活を実践し、環境にやさしい選択をすることを大切にすることがあります。

  • 家族や子どもの健康を考える観点から、化学物質や有害物質が含まれる可能性のある製品に慎重な姿勢を持つことがあります。特に、妊娠や子育てをする女性は健康への配慮が強いです。

  • 環境への影響だけでなく、社会的な側面にも敏感であり、女性が労働力として参加する産業において、公平性や機会均等についての考えを持つことがあります。

ジェンダーの観点から見ると、男性と女性が異なる生活体験や社会的役割を持っているため、E-wasteに対する意識や行動も異なる可能性があります。男性と女性が協力し、多様な視点を尊重しながら、E-waste問題に取り組むことが、より持続可能な社会を築く一歩となるでしょう。

E-wasteの生涯

これがE-wasteの最後の姿です。 私がミャンマーのオープンダンピングサイトで撮影した写真です。E-wasteは先進国・途上国関係なく、それぞれの手法や考え方で比較的多くのE-wasteが様々な形態で取扱われています。その中でもE-wasteのリサイクルは、発生国だけの問題ではなく国境を越えたグローバルな視点で考えていかないといけません。

例えば、高所得国で発生したE-wasteは、他国にとってはまだE-wasteではなく、世界中で中古電子製品として取り扱われています。 中古電子製品は、世界的な中古電子製品市場で取扱われており、特に低所得および中所得国の中古市場に先進国からの中古品の多くが流れて行っています。しかし、E-wasteは最終的にはこれらの国々でインフォーマルセクターやオープンダンピングサイトで処理され、その処理の有害影響が人間の健康や環境への汚染を引き起こしています。

インフォーマルセクターの主な対象はプリント基板ですが、プラスチックやその他の部品、破損したプリント基板を含む部品は通常経済的価値がなく、オープンダンピングサイトやその他の場所に廃棄されます。高所得国の電子製品の利用者は、間接的にこのようなグローバルなE-wasteの問題に関与しています。

E-wasteの発生

1990年代以来、E-wasteは世界的な環境問題の一つとして認識されています。 しかしながら、これは人間が気づくのは汚染が起きてからであり、気候変動、オゾン層の減少、すべての化学物質汚染やプラスチック汚染など、環境汚染の問題に関しても同様です。私たちが環境問題に気づいた時には、既にその問題は深刻なレベルに達しています。  これを環境的逆説と呼びます。

E-wasteの問題もまた、環境的逆説の一つとして特定されています。E-wasteが世界的な問題となってから20年以上経ちますが、今でも私たちは、多くの複雑なE-waste問題に直面しています。私たちは日常生活や社会に電子機器が必要であり、特に社会のインフラであるIT機器に頼りつつあります。 E-waste発生傾向を見ると、E-wasteの生成量が減少する傾向は全くありません。 他のごみと比べてE-wasteは大きな資源回収の可能性を持っていますが、現在のところE-wasteの約15-17%しかリサイクルされていません。

他の83-85%のE-wasteはどこに行くのでしょうか? その答えは、オープンダンピングサイトや”自然のどこか”となり、残念ながらE-waste汚染を引き起こしています。 現時点までに100億台のスマートフォンが製造され使用されてきましたが、現時点で実際使用されているのが約30億台です。残りの70億台はどこに行ったのでしょうか?

E-wasteとジェンダー

今日は4枚の写真を持ってきました。 これらの写真から、E-wasteとジェンダーの問題が見て取れます。

  1. 女性が蛍光灯を粉砕してアルミニウムと銅を回収していますが、微量の水銀蒸気にさらされています。

  2. 女性がモーターを熱処理して(=焼いて)銅を回収していますが、有害な有機成分が蒸発した煙にさらされています。

  3. 女性がプリント基板を熱処理して(=焼いて)貴金属回収を実施していますが、有害な有機成分が蒸発した煙にさらされています。

  4. この工場のすべての労働者、彼女も含めて、E-wasteの処理にマスクと手袋を着用しています。これは途上国にあるE-wasteリサイクル施設の優良事例の一つです。ただ、残念ながらこのようなケースは現在非常に稀です。

E-wasteとジェンダーの問題点

①E-wasteは最も急速に増加している廃棄物の一つです。
あなたの日常生活で電子機器を使用しないことはできますか?もはやそれは不可能です。私たちはいつも、「どのような新しい電子機器を購入するとより生活が便利になるのか」と考えています。さらに、私たちは常に新しい電子機器やスマホを手に入れたいと思っており、現在の経済社会で生きているとその誘惑に強制的にさらされています。本当は必要ではないけど、マーケティングに乗ってしまい、ついつい「新しいのが必要なんじゃないか」と思う世の中。E-wasteの発生量を減少させる機会はありません。

②多くの国では、法律に基づいたE-waste管理システムの整備が遅れています。
E-wasteは、経済水準に関係なくどの国でも「ほどよく」に管理・処理されます。ただし、法律に基づいた管理システムとインフォーマルセクターが中心となったE-waste管理・処理の状況はまったく異なります。インフォーマルセクターは、低所得国で様々な利害関係者が日銭を稼ぐために自然発生したメカニズムです。その日銭を稼ぐために貴金属等のリサイクル可能素材が取引されていますが、人権・環境配慮が完全に抜け落ちており、様々な社会問題を引き起こす発生源です。と言いつつも、途上国においては、インフォーマルセクターなしで廃棄物問題は解決しません。

③女性はインフォーマルセクターで最も低い階層に追いやられています。
歴史的に、多くの文化は何百年もの間、女性を社会の下位層に位置付けてきました。 そのような長い人間の歴史に基づいて、残念ながら女性は今でも人間社会で多くの不平等に直面しています。 特に、廃棄物分野の女性は、すべての人間社会で廃棄物分野を最も低い階層に位置付けられてきました。 このような状況により、廃棄物分野で働く女性は今でも多くの不平等に直面しています。 このような状況の下で、写真で見るように、廃棄物やE-wasteの汚染による化学物質の暴露の危険性があります。特に出産可能な年齢時期の女性にとって、E-wasteへの慢性的な暴露が特に危険であることを示しています。

インドの例

E-waste分野で働くほぼすべての女性が、階層の底辺に閉じ込められています。 また、多くの不平等や差別のために、階層の上に進む機会はほとんどありません。 日常生活の中で文化や行動を変えるのは実際には難しいですが、私たちはSDGsの時代において、全世界が平等な生活を求めている中で、少しずつそのような状況を改善していかなければなりません。

リサイクル業界のパラダイムシフト

では、何をすべきでしょうか? E-wasteをリサイクルすることが経済的に利益をもたらすことは明確です。さらに、人間社会がよりIT依存型社会にシフトしていくことから、世界中のどの地域でもさらに多くのE-wasteが発生します。

先進国においては、この20年間でようやくE-wasteリサイクル市場を循環型経済の一部に組込み、廃棄物のリサイクル業から資源戦略の一部を担う循環型ビジネスへ転換を遂げつつあります。しかもこの状況は、対気候変動対策をにらんだ一つの柱として重要視していることから、先進国・途上国関係なく、今後のE-wasteリサイクルビジネスモデルの中心なります。すなわち、法律に基づくE-waste管理が遅れている国にとっては、E-wasteリサイクルビジネスの整備も遅れていることから、ここに大きなビジネスチャンスが存在しています。

E-wasteのリサイクルビジネス展開には、E-wasteの法体系の整備や技術的・インフラ的整備も必要ですが、SDGsが求めている社会にウェルビーイングをもたらすようなシステム作りがポイントとなります。そこには、低所得および中所得国での経済および社会状況の改善のために大きな可能性を秘めています。 その一つとして、ジェンダーの問題を考慮に入れながら、低所得および中所得国の中小企業に社会的な利益をもたらすようなシステムを作り上げて行くことが重要です。例えば、女性が働きやすい労働環境を導入することで、地域に根付いた事業展開が可能となり、地域密着型の社会問題解決型ビジネス展開の道が開けていきます。さらに、ジェンダーに関係なく均等な機会を提供することは、廃棄物管理業界を含むあらゆる産業において、より多くの利益とより良いウェルビーイングを提供します。 このような良い実践の下で、廃棄物管理業界そのものが、循環経済社会に必須な社会基盤となるでしょう。

おわりに

E-wasteは私たちの日常生活の一部です。 誰もがより良い生活を提供する電子機器を使用する必要があります。しかし、私たちは残念ながら不適切な方法でE-wasteやその他の廃棄物を捨てており、その結果として健康や環境へ負の影響を引き起こしています。

誰もがE-wasteの汚染の被害者であり、誰もがE-wasteを引き起しています。
そして誰もがE-wasteの汚染から逃れることはできません。
私たち全員でE-wasteの問題に対処する責任を担う必要があります。

これをふまえて、2050年のE-wasteの姿を考えてみました。

  1. 量の増加: 本文でも書きましたが、2050年には、人々の生活に欠かせない電子機器の数はさらに増加すると予想されます。スマートフォン、コンピュータ、ホームアプライアンスなどの需要が高まり、E-wasteの量も増加するでしょう。

  2. 高度なリサイクル技術: 環境への意識の高まりや資源の枯渇により、リサイクル技術は進化し、より高度な方法でE-wasteの再利用が行われるようになるかもしれません。価値のある材料の回収率が向上し、循環型経済の実現が進む可能性があります。

  3. 意識の変化: 2050年には、E-wasteが環境や健康に与える影響への意識が一般的に高まると予想されます。持続可能な消費や廃棄物の適切な処理が社会的な価値観として浸透することで、個人や企業の行動が変化するかもしれません。

  4. 共同の取り組み: 国際的な協力と連携が進み、E-wasteの問題に取り組むための共同の枠組みが構築されるかもしれません。国際的な基準や規制が整備され、E-wasteの移動や処理に関する透明性が高まるでしょう。

  5. 技術の進化: 技術の進歩により、電子機器のデザインや製造方法が環境に配慮したものにシフトする可能性があります。長寿命化や修理可能性の向上、再生材料の使用などが進み、E-wasteの削減に寄与するかもしれません。

  6. ジェンダーとの関連: ジェンダー平等の観点から見たE-wasteの問題に対する意識が高まることで、女性がE-waste産業での適正な労働環境を求める声が増加するかもしれません。ジェンダーの偏見を排除し、女性の参画を尊重したE-waste管理が進む可能性があります。

  7. 教育と啓発: 2050年までには、E-wasteに関する教育と啓発が一般的に行われ、人々が適切なE-wasteの処理方法や影響を理解し、行動することが当たり前となるかもしれません。

2050年のE-wasteの姿は、持続可能な未来を築くための選択と行動によって大きく変わるでしょう。我々の意識と取り組みが、E-waste問題の解決に向けた重要な役割を果たすことになります。

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