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第4回:「本屋イトマイ」


こんにちは、はじめまして。 
淑徳大学 人文学部 表現学科 杉原ゼミの福田です。

今回紹介するお店は、書店と喫茶のお店「本屋イトマイ」です。

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私たちが通う淑徳大学東京キャンパスがある東武東上線ときわ台駅北口から徒歩1分。静かに存在感を放つ手描き調の看板が見えます。レトロで温かみのある扉を開けた先には、ゆったりと伸びた階段が。

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その先に広がる、本屋イトマイでしか感じることのできない空間とは……。



店主の鈴木永一さんにご協力いただき、「絵本のまち板橋&ボローニャ絵本さんぽ」に関するインタビューとともに、お店の魅力、お店を開くに至ったエピソードなどを店内ツアーを交えてたっぷり語っていただきました。




※本屋イトマイでは、7月17日(土曜日)~8月15日(日曜日)に「わたなべさとこ展」を開催中です。
※この記事では、その展示準備前にお話を伺いました。



−−どういったご縁で「絵本のまち板橋&ボローニャ絵本さんぽ」に参加されましたか?

鈴木さん:「板橋区立美術館の松岡希代子館長に以前から何度もお店に足を運んでいただいていたご縁から、イベントに参加してみないかと誘っていただきました。」


−−このイベントに期待することはありますか?

鈴木さん:「僕が板橋区民になって12年くらい経つのですが、正直これまで”板橋区が絵本のまち”だと聞いたことがなくて……。まだまだ浸透していないように思います。でも、これからそうなっていく可能性は十分にあると思うので、こういったイベントを通してそうなっていけばいいな、という期待はあります。」


−−ありがとうございます。ここからは、お店の質問をさせていただきます。鈴木さんは現代美術を学ばれたということですが、看板のデザインはご自身でされたのですか?

鈴木さん:「はい、僕のデザインです。現代美術を学んだことが看板や内装のデザインにつながっているかは分かりませんが、店内の家具の手配や配置も全て自分で考えています。キッチン側にあるカウンターテーブルは自作しました。その他にも、出来る限りのものは自分で作っています。」

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※鈴木さんが作られたカウンターテーブル


−−では、現代美術を学んでいたことで現在のお仕事に繋がっていると感じる点は何かありますか?

鈴木さん:「繋がっているとしたら、こういう仕事をやろうと思うことですね。こんな無謀なこと誰もやらないと思います。僕は、書店員の経験もカフェの店員の経験もなかった。経験がないままお店を開くって、かなりハードルが高いことだと思います。だけど、経験があって大変さが身に染みていたら、お店を開こうなんて考えなかったと思います。笑」


−−オリジナルのキャラクター「ヨンバケ」もご自身で作られたということですが。

鈴木さん:「そうなんです。名前の由来は”読むオバケ”で、昨年、新型コロナウイルスで店舗を休業していたときに作りました。Tシャツやトートバッグなどをオンラインで販売していて、常連さんや、感染対策のため足を運ぶのが難しくなってしまったお客様に買っていただきました。」


−−家具の配置の工夫はありますか?

鈴木さん:「店名にある”イトマイ”は”お暇します”から取っています。オフィシャルからお暇する、つまり、オフィシャルから”暇になる”ということ。その暇な時間をこのお店で有効に使っていただきたいという思いから、読書などに没頭する自分だけの空間を守れるよう、お客様同士の目線が合わないように配置しています。


1.アンティークデスク

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2.まるで秘密基地のようなロフト階段

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3.靴を脱いでゆったりできるロフトスペース

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4.ロフト下の洗練された2人掛け空間

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5.視覚的にも楽しめるボタニカル空間

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6.お一人様に人気の隅っこで暇えるプライベート空間

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7.暖炉の前でくつろげる北欧風スペース

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−−店内に、植物が多く置かれているような気がします。

鈴木さん:「高円寺にある”アール座読書館”というお店の影響を受けています。室内にいるのに外にいるかのような、そんな空間づくりをしたかったんです。」

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−−これからどのように進化させていきたいか、具体的なイメージがあれば教えてください。

鈴木さん:「今の店内は当初考えていたイメージとは全然違くて、スペースや技術面など現実的な問題で、今できることの限界という感じ。だから、正直に言うと現状に満足していないので進化させたいです。また、開店するときから多店舗展開を目指しているので、もし実現できれば、今できていないデザインをその2店舗目で実現させたいです。」


−−本の仕入れにこだわりはありますか。

鈴木さん:「こういった小さくて特殊なお店って、本の種類が偏りがちになるのですが……。当店は、幅広いジャンルのものを仕入れています。ときわ台の新刊書店はうちだけなので、書店としての役割を果たしつつ、喫茶を目当てに来てくださったお客様にも手にとっていただけるような本を意識して選んでいます。」

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−−おすすめのフードやドリンクは何でしょうか。

鈴木さん:「クリームソーダとプリン、チーズケーキです。この3つは全ておすすめですし、映えを狙うなら絶対クリームソーダのムラサキですね。食事系だったらカレーをぜひ食べてほしいです。トーストにもこだわっていて、東武練馬にある”まさもと”で作ってもらっています。
メニュー(公式ホームページより)

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インタビューから店内ツアーへと移る際、「実はコーヒーを用意したんですよ。」と鈴木さん。持ち帰りができるようにとお気遣いいただき、テイクアウト用カップに入れてくださいました。

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池袋にある「COFFEE VALLEY」の本屋イトマイ用にオリジナルブレンドされた豆で、フルーティですっきりとした味わいでとても美味しかったです。鈴木さん、ごちそうさまでした。



鈴木さんが煎れてくださったコーヒーで喉を潤し、店内ツアーのスタートです。




□新刊・話題の書コーナー

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階段を上がって1番最初に視界に入るブースです。受賞作など、手に取りやすく人気の高い本が置かれています。


□雑誌コーナー

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ライフスタイル誌、カルチャー誌、スポーツ誌、ビジネス誌、男性誌、女性誌(向かいの棚)など、かなり豊富な種類が揃えられています。特に文芸誌の種類が多く、本屋イトマイらしさが感じられます。


□新書・企画コーナー

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鈴木さん:「左側上段は、渡辺潤平さんのコーナーです。非常に有名なコピーライターの方で、1ヶ月間イトマイでインターンをしていました。上段には震災関連の本を置いています。震災から10年、本屋の役割はそういったところにあると思いますし、僕自身、山形の出身で、地元の友人が津波を経験したこともあり思いが強いです。」


□新型コロナウイルス感染症関連コーナー

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□旅行の本・辞典コーナー

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□海外文学コーナー

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鈴木さん:「ここ2、3年韓国文学ブームが来ているので、その流れをおさえて棚づくりをしています。」



□小説・文庫コーナー

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鈴木さん:「見たことがあるタイトルや作者が多いコーナーかと思います。存在感のある本は、表紙が見えるように置いています。朝井リョウさんの『スター』のポップは、この作品を読んだお客様が書いてくれました。」



□本の本コーナー

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本を売るスキルや審美眼を磨くための書籍など、書店を開く一歩を踏み出したい人にとってはとても意味のある本が集められています。



□映画・音楽・伝統芸能コーナー

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□宗教・戦争コーナー

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□漫画コーナー

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鈴木さん:「スペースが限られているので、巻数が少なくて人気な作品を厳選して置いています。」



□猫コーナー

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□社会・女性のコーナー

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鈴木さん:「女性のお客様は必ず目を通す本棚です。」


□辞典コーナー

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□ビジネス・渋沢栄一関連書コーナー

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□数学・化学・生物・宇宙コーナー

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□食の本コーナー

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□”わたなべさとこ展”でも使われる絵本コーナー

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鈴木さん:「『アッチコッチソッチの歌』という本は、お客様から注文があって、イトマイにも常備したものです。常連のお客様の好きそうなものを想像しながら仕入れた本もあります。「絵本のまち板橋&ボローニャ絵本さんぽ」のイベントでは、この絵本コーナーにわたなべさとこさんのサイン入り絵本を置き、販売するという展開になります。」


□リトルプレス系コーナー

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個人出版の書籍を扱う棚です。
鈴木さん:「うちのような個人経営の書店ならではのコーナーとして、これからもっと進化させていきたいです。」


□オリジナルグッズコーナー

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本屋イトマイでしか買えない特注ブレンドのコーヒー豆や、オリジナルキャラクター「ヨンバケ」のグッズ。
(Tシャツ、トートバッグ、ブックカバーは今後また再販売の予定)


□鈴木さんおすすめ阿久津隆著の本とCD
左から
『本を読める場所を求めて』(朝日出版社)
『本の読める音music for fuzkue 』nensow
『読書の日記本づくり/スープとパン/重力の虹』(NUMABOOKS)

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鈴木さん:「阿久津さんは僕の友人です。僕が参考にしているお店の1つである「fuzkue」という本が読めるカフェの店主でもあります。ぜひ読んでみてほしいです。」




鈴木さん、ありがとうございました。




本屋イトマイには、店内の過ごし方についてのルールがいくつか存在します。その中の1つが「会話の禁止」。そのため二人が座れる席には、筆談用のノートと鉛筆が用意されています。

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鈴木さんのこだわりやお客様への思いを聞き、それぞれ別のところから集まった様々な価値観を持つ人たちが、同じ空間のなかで自分だけの「イトマい」を見つけられる場所。そして、その空間をお客様と創っていく場所。常連の方たちは、この難しいテーマを見事実現させている数少ないお店だから、また通いたいと思わずにはいられないのだと感じました。


新型コロナウイルスの感染対策もばっちりです。本屋イトマイ、ぜひ一度足を運んでみてください。



鈴木 永一

山形生まれ育ち。
美大で現代美術を学び、卒業後グラフィックの仕事を15年。
新聞社デザイン室勤務を経て、出版社系のデザイン会社で働いた。
2015年、内沼晋太郎氏が主宰する「本屋講座」と出会い、本屋を志す。
2019年、様々な紆余曲折を経て、東京都板橋区のときわ台駅徒歩1分の場所に「本屋イトマイ」をオープンさせる。
2021年3月、コロナ禍で2周年を迎える。

好きな作家は、セルバンテス、夏目漱石、保坂和志、ヴァージニア・ウルフ、ドストエフスキーなど多数。
好きな食べ物は、お正月に食べる雑煮もち


本屋イトマイ
東京都板橋区常盤台1-2-5 町田ビル2階

公式ホームページ
公式ツイッター
公式インスタグラム


※スケジュールや営業時間は公式 Twitter と Instagramでご確認ください。
※撮影時のみ、マスクを外しています。
※緊急事態宣言に伴い、板橋区立美術館で開催される2021ボローニャ関連イベントは、会期中の開催は中止となっています。
※一部のイベントは、映像の配信や秋以降の開催が検討されています。詳しくは公式ホームページをご確認ください。
※新型コロナウイルスの感染予防対策については、各施設、店舗によって異なりますので来店される際には各店舗のホームページやSNSをご確認の上、ご協力ください。




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