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降られず振られたの。

あの日、大粒の雨が降っていた午後
濡れながら自転車で家まで帰った17歳。
びしょびしょに濡れたかったからちょうど良かった。

髪の毛から滴る雨に心躍った。
あの特別な感じ、あえて濡れながら自転車漕いだことある?やってみ?と自慢したくなる。
濡れることを厭わず、楽しそうに自転車漕ぐことなんてそうないからさ〜。

ただ、そこからというもの自転車での帰り道に雨に降られることが多くなった。
雨雲レーダー見て、あと20分後に雨が降るとなっていても自転車を漕ぎ出して2分後に降り出す。
すーぐ降るやん。
わりとがっつり降り出す。
小雨なら許せる。けっこう濡れるくらい降る。
びしょびしょじゃん〜の一歩手前くらい濡れる感じで降ってくる。

あの日の光景を神様が見ていたのか。
あんなに楽しそうに雨の中自転車漕ぐ奴はじめてだ。
頭おかしいんじゃねえのか。
狂ってやがる。
これからはあいつが自転車で帰り始めたら雨降らそう。とか思ったのかなあ。

もはやどうせ降る。
家着くまで待ってはくれない。
と思うようになった。
そしてやっぱり降る。
君がすることなんてわかってるんだよ。

今日だってそうだ。
あと10分で雨が降る。と雨雲レーダーが当たらない情報を伝えてきた。
10分ということは1分後には降る。と思いつつも懲りずに自転車を漕ぐ。
パラパラという感触が肌に触れる。
チャーハンかよ。
ほらまた。いつものように。

家に着いた。
タオルもドライヤーも使わなかった。
20分後、激しい雨音が聞こえた。土砂降り。
雨雲レーダーでいう赤色。
おかしい。濡れていない。
家に着いてから降るなんてどうかしてる。

神様が交代したのか。
私が濡れるより濡らす側という大人になったのか。
私よりも楽しそうに雨の中自転車を漕ぐキラキラした誰かを見つけてしまったのか。
推し変か。飽きられたのか。オワコンなのか。
最近、あいつに雨降らせてもリアクション渇ききってるわ。雨降らせる甲斐がない。なんかもういいや。
と冷められてしまったのか。
冷めたパラパラチャーハンだったのか。

降られたら降られたで萎えるけど、いざ降られないと寂しい。
とはならんからな。
嬉しいよ。普通に。濡れないって最高。快適。
気分がとても良い。

でも頬が濡れてるよ。


とかいうオチにはならんからな。