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TORAIZ AS-1のハナシ❶

(初出:2018/12/16)

2017年にPioneerから発売された初のアナログシンセTORAIZ AS-1を購入してきました。

久々にハードシンセを買おうと思って数ヶ月、モノ/ポリ問わず、のちの生活に困らない程度の価格帯から悩みに悩み、選びに選び抜いたのがこの機種であります。

と書いてますけど、実際には「これが欲しい!」という機種が決まらないまま楽器店に足を運び、予備知識なしに試奏しての衝動買いだったわけてすが。

好事家向けの安心ポイント

僕がAS-1に感じた魅力をザッと書くと

・枕元に置けるほどコンパクト
・とにもかくにも音がいい
・タッチ鍵盤がありスタンドアロンで遊べる
・アルペジエイター付き
・64ステップのシーケンサー付き
・安心の2系統エフェクト付き

また、好事家向きの安心ポイントとしては

・アナログ音源(エフェクト除く)
・DSI(Dave Smith Instruments)社※監修
・Prophet-6の回路をベースに開発


※2018年のある時期から社名が「SEQUENTIAL」になりましたとさ。 

というところでしょうか。

最後の3点は、僕にとってさほど強烈な購入動機ではなかったのですが、むしろ買ってから驚かされたことが多かったという。

Dave Smith師匠と言えば、あのProphet-5の生みの親のひとりであり、YMOなんぞを嗜んでいて『BGM』あたりをベストに挙げるような僕からすれば、それはそれはひれ伏してしまうような存在です。

ただ購入時点では「名義貸しでしょ?」くらいにしか思っておらず、後にDave師匠が開発者インタビューで部品選びまで監修されていたと知り、軽い気持ちで購入した自分を責めたものであります。

悪役的な役回り

以前ブログで、このAS-1に触れたことがありました。

この稿の主旨は「ビバ!モノトライブ」でした。
KORGのある種変態的なモノシンセmonotribeは、メモリが付いていません。monologueやAS-1のようにプリセット音の多いシンセを引き合いに出したのは「せっかくのアナログなのに、495もあったら音を作らんくなるでしょう」(名古屋アクセントでお読みください)という理由。

AS-1には悪役的な役回りを与えてしまったわけですが、お恥ずかしいことに、実はこのエントリーを書いている時にその存在を知ったのです。
つか、みんなはパイオニアがアナログシンセを作ってるなんてこと、知ってたかい?

そんな次第で「否定はしたけれども、一応お主の実力とやらを診てやろうではないか」という僕なりの武士道精神から、楽器店へ足を運び実際に触ってみたわけです。

第一印象は「デカいmonotronだな」
第二印象は「いや、こりゃmonotribeだな」

筐体は意外とズッシリ重く、パネルの仕上げも高級感があります。コントローラーもしっかり作られていて、僕が普段スタジオで接している業務用の音響機器と比べても遜色ありません。

そして鳴らしてみたところ、中域がしっかり出ていて驚きました。低域だけ妙に特化した最近のアナログシンセの存在感とは雲泥の差で、小手先感のかけらもない。

オシレーターの太さ、フィルターの心地良さといった基礎体力の高さに加え、アサイン次第で表情を激変できるスライダーの存在、これも高ポイントでした。

これは電気を食う音だ

時同じくして、タッチ鍵盤やらアルペジエイターやらシーケンサー搭載など、なんとなく似たコンセプトのUno Synthも登場し、比較しながら実奏したわけですが、音が違いすぎました。

もうひとつ比較したのは、以前こちらでも取り上げたRolandのSE-02。

Studio Electronicsの開発だけあってMinimoogを相当に意識して作られたようですが、オシレーター自体の良さ、フィルターの切れ味など音の良さではAS-1と対等です。

前面にノブが全て出てるのはいいんですけど、あのBoutiqueサイズゆえ、単体で使いづらいのが最大の難点かなと。

難点と言えば、AS-1では逆にパネルに出ているノブが少なく、細かい音作りをエディット画面で行うのに抵抗がある人もいるように思います。

これもPC用のエディターで解決するというものの、僕自身ACの結線すら面倒くさがるモノグサですから悩ましい。まあ使っちゃうんですけどね。
ぶっちゃけ慣れてしまえば、本体のみのエディットも大して苦ではない、と書いておきます。

さらに乾電池で駆動してくれたら最高でしたが、どう聴いても「これは電気を食う音だ」としか思えないので止む無しかと。

本当に買って良かったと思えるシンセ

エフェクトボタンをon/offしながら思うのは、これまで僕が所有したシンセが「面白くて遊べるシンセ」だったのに対し、AS-1は「面白くて音のいいシンセ」なんだということ。

先にも書きましたが、これまでのどのシンセより長く付き合えるシンセになると思います。

ちなみに、AS-1についてはさほどWeb記事が上がっていない中、この開発者インタビューはなかなか読み応えがあるかと。

実は僕が購入したお店でもあり、たまたま店頭にいたのもこのインタビュアーの方だと思います。
会計後「これは本当に買って良かったと思えるシンセですよ」と言われました。はい、本当にそう思います。

音作りについての詳細はこちらに記載しておりますので、よかったらぜひ。

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ラジオ局勤務の赤味噌原理主義者。シンセ 、テルミン 、特撮フィギュアなど、先入観たっぷりのバカ丸出しレビューを投下してます。