「見えない銃」に対する私の誤解~社内でプロセスデザインに失敗した話~

まず、これはファシリテーター Advent Calendar 2020の12/23分記事です。少々物騒なタイトルで恐縮ですが最後までお付き合いいただけると幸いです。

この話は2018年に担当していたWebサービスのチーム内で
「お客様に価値あるサービスを届けるためにチームとしてあるべき姿は何か」を見つめ直し、まず働き方に変化を創出したく取り組んだファシリテーションに失敗した話です。

グループワークについて考えた

さて、当時の担当サービスのチーム構成は
・30人以上が所属
・職種もエンジニア、ディレクター、デザイナー、テスター、営業、etc. と様々
という構成。

ボトムアップで変革がもたらせたら!と思い
2時間予定で考えたグループワークの大まかな構成は次の通り。

①サービスの問題点を抽出する
②問題点の原因を探る
③原因の解決策を考える
④解決策を通して、必要なチームの働き方について考える

つまり、いきなり働き方について考えるのではなく
提供サービスをアウトプット、
それを生んだ働き方をインプットとし、
アウトプットの問題点を通して
インプットで改善できるところがないか考えましょう、と言う流れです。
そこでまず考えたのがテーマ選び。

無意識のうちに縛られたポジションからの解放

無意識のうちに自分のポジションに囚われない自由な議論をグループワークに望んだ私は
「周りがあなたに求めている、と思い込んでいるコメント」
「あなたが言うべき切り口、と自分で思っているコメント」
の類から解放したいと考えました。

例えばそれは
・デザイナーがデザインコンセプトについて
・エンジニアが改修のしづらさについて
・ディレクターが要件定義上の課題について
といった各職種が業務上日常的に接している課題についてのコメントです。

それはそれで勿論重要なのですが、
今回は職種に囚われることなく誰でも思いついた問題点を幅広く気軽に挙げていって欲しい。

そのためにどういうテーマにするかを考え、
「今のサービスの課題は?」
「サービスの改善点について」
といったものはやめ、「●●(サービス名)のダメなところ」というテーマで話すことに決めました。
結果的に議論は想像以上の熱量を生みたくさんの問題点が出てきました。

これは「課題」や「改善点」というTHE・会議っぽい表現ではなく「ダメなところ」とう日常的な表現を議論の原点に置くことでコメントのしやすさが生まれ、辛辣なコメントが出れば出るほど会議室に居ながらにして業務的な雰囲気を置き去りにし「あの選手のダメなところはさ」「このゲームのダメなところはさ」といった感じでエンドユーザ目線に立った自由にコメントできる雰囲気を生むことにつながったと思います。

見えない銃を呼ばないことにした

次に、自由な議論を目指した私が決めたもうひとつのことは、
「マネージャーをグループワークに呼ばない」
ということです。

昔拾った何かの資料の中に、「見えない銃」として喩えられていたマネージャー。「見えない銃」があると参加者によっては会議に対し消極的な姿勢になることがあり参加者の自由な発言を妨げ、差し障りのない意見しか出てこなくなる、と載っていた記憶があります。(探しましたがもう資料は見つかりませんでした)

またマネージャーの参加は同調圧力を生むと考え、
当然のごとくグループワークには呼びませんでした。
このときマネージャーは改善プロセスにおいては阻害要因、という意識が強く生まれてしまったと思います。

グループワークは成功!でも。。

さて、グループワークはあっと間に終わり多数の意見が生まれ、
今の職種の型にはまらない働き方の提案まで生まれました!
このときは本当に嬉しかったのを覚えています。

しかし、チームに変化をもたらすことはなく、
そこで改善プロセスは終わってしまいました。

当時を振り返って

失敗の原因の一つとしてグループワークに焦点を絞るあまり、
最終目的までのプロセスデザインが不十分だったことがあります。

ちゃんとゴールまで、誰と対話し、誰と何をするのかをプロットできていれば違った結果になっていたのではないかと思います。
組織で変革をもたらそうと思い立ったファシリテーターとしては
恥ずかしい限りです。。参加していただいた皆様に申し訳なく思います。

さらに誤解していたのは「見えない銃」は排除が正解!と思い込んでいましたが、改善プロセス全体でみたときにステークホルダーになりうるため、グループワークに取り掛かる以前から対話が必要だったのではないかということ。

これから組織的な課題に立ち向かおうとしている社内ファシリテーターのみなさまへ


教科書的に言うと仕込み、プロセスデザインと呼ばれる工程を踏むかと思いますがステークホルダー分析を忘れずにしましょう。
排除してしまった見えない銃は、目的達成に必要な銃かもしれません。
自戒を込めて本記事の結びとさせていただきます。

後日談

ここから約1年後、ディレクターから「●●(サービス名)全体の見直しをしたくて、発注元からうちの会社の意見を聞きたいと言われたのですがそういう資料ってないですか?」と聞かれ、このときの議事録をお渡ししたところ喜んで持ち帰っていただきました。それが今の現場にどう変化をもたらしたかは分かりませんが、役に立っていることを切に願います。


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