NHK「100分de名著」ブックス 世阿弥 風姿花伝

読書好きな人ならおそらく知っているであろうNHK総合でやっている名著くを1回25分×4回の合計100分間で紹介する番組の解説本。番組はとかく長くてわかりずらい本が名著に多いのでサマリー読む感覚で見るととてもいい。伊集院さんの独特に感想もなかなか鋭い。

著者は日本史とかでも出てくる能の基礎をつくった人である世阿弥の能の教科書のような本。教科書として一般の人が読むというよりも能を学ぶ後輩へ考え方とか能楽師とはなにかを伝えたもの。

解説してくれるのは土屋恵一郎さんという法哲学の先生。なんで?と思ったが演劇論なども執筆していて、ライフワークとして「橋の会」という能楽を楽しむ会を主宰していて、公演のプロモーションもやっていただとか。そのため法学という視点での解説ではなく、演劇評論家、芸能プロモーターとしての視点からの解説である。

600年くらい前に書かれているが今の広告やコンテンツ作成を考えるうえでもとても参考になる本だと思った。例えば珍しきが花という、言葉のとおり珍しい、新しいものは人気が出る、ということをすでに見抜いている。「花と、面白きと、めづらしきと、これ三つは同じ心なり」と言って人々が季節の花を好きなのはそれが変化=新しいものだからだといっている。そこで世阿弥は今まで誰もやっていない源氏物語のような文学作品を舞台化したり(今でいう漫画原作のドラマ化?)みたいなことして能の新作を次々作り出して人気を得る。その方法も能の尺や舞台装置にあうように原作をアレンジしているとして、今まさにやっていることをはるか昔にやっていたのは驚きである。(確かに西洋絵画に文学や聖書の一場面をヴィジュアル化していることはあるが、シェイクスピアは演劇用ではなくオリジナルに書かれている)

また「童形なれば、なにとしたるも幽玄」として、いわゆる3Bの法則的なものを指摘しているものすごいと思った。

一方「老後の初心」として年をとってもそれに相応しい芸があるからそれを磨けということも指摘している。ここは非常に悔しいのだが、解説者いわく西洋の芸術は、オペラなりバレエなり年を取ってから芸が進化するという発想はあまりなく、世阿弥の独自性と指摘している。自分はそのへんの西洋芸術があまり不案内なのでそのすごさがしっくりこない。そのへんはこれから原本も読みつつ関連書籍として読めればと思った。


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