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アボカド海老サンドイッチ

僕はパンが好きだ。しかしパンと言っても「サンドイッチ」とか「カレーパン」とか調理されたもの、味がついたものが好きなだけの人間で「小麦粉は○○を使ってて、この焼き加減と香ばしさが」なんていうコメントは呪文にしか聞こえない愚人間である。

そんな僕がお気に入りのメニューがある。クロワッサンにエビとアボカドがぎっちり詰まってるサンドイッチ。卵オンリーのタルタルソースみたいなのも入ってて、食べ応えも抜群なのだ。僕はこの商品に出会って「パンってすげえ」と衝撃を受けた。このパン屋さんに行く時は絶対にこのメニューを目当てにする。売り切れてしまい並んでないときは、膝から崩れ落ちるほどのショックが体を襲う。

病院へ行く用事があった。パン屋さんも病院から少しの場所にある。ちょうど用事が終わってお昼前。前回の検査結果を聞きに行くというミッションがあったので、メンタル的に負荷がかかった状態だった。だから「帰りにご褒美でパン屋に寄ろう」と考えることで頭がいっぱい。

入店して他の商品には目もくれず、一目散にサンドイッチが並べられている冷蔵庫のコーナーへ。お目当ての商品は…あった。

こうなればこっちの勝ちだ。わくわくした足取りで、次の日のご飯にしようと他のパンも選びレジへ向かう。4個のパンを購入したが、レジのお姉さんは迷わず「おしぼりはひとつでいいですか?」と聞いてきた。なぜ僕が一人でこのパンを食べるとわかったのだろうか。4個も買っていれば「誰かと食べるのかな」とか思われなかっただろうか、なんてことを瞬時に考えてしまった。急な恥ずかしさが襲ってきたところで僕は「ふたつで…」と答えた。

嘘だ。本当は僕が全部食べるのだ。

店の外で食べようかとも思ったが、それはやめることにした。なんとなく一人でいるときに誰かに見られている環境でご飯を食べるのが苦手なのだ。いくつか席があって「ご自由にどうぞ」みたいになってると僕が使ってていいのかな?なんてことを考えてしまう。急に家族連れとかが来たらどかないといけないよな、なんて思っていると気持ちが休まらない。だったら、家に帰ってから食べることにするのが良いのだ。

もう買い物に出るつもりもなかったので、近所のドラッグストアで必要なものとお酒を少しだけ買って帰宅。商品を選んでいるときに「ブー、ブー」とマナーモードのような音がする。うわー仕事の電話だよ…と勝手に落ち込みながらスマホを取り出すと、着信ではなかった。よーく耳を澄ますと、店内放送のベースの音だった。とんだ空耳。こういうこと、最近よくあるんですよ。ちょっと危ない。

Netflixでアニメを見ながらサンドイッチにかぶりつく。ああ、幸せな時間。美味しい食事は人生を豊かにする。本当にそう思う。
この幸せがわずかパン4個、1000円ちょっとで買えるのなら安いものである。というか美味しすぎてもう何も考えなくなる。ちょっと仕事しなくちゃとか思ってたのに。

まだお腹は余裕がある。ベーコンの挟まったサンドイッチも購入したが、それは半分にカットして、残りは後で食べることにした。お腹が満たされたところで映画を見たくなった。見たことがないものよりも「確実に面白い」とわかっている作品の方が良い。僕は「シェフ」という映画を選択した。有名な料理人が自分の料理をSNSで酷評した料理評論家と喧嘩して解雇され、絶望の中好きなことをやろうとキッチンカーを始める話。陽気なメキシカンの空気も存分に感じることができる。何も考えずに見ることができ、かつハッピーエンドなので見た後にもストレスが残らない作品だ。

近くのコンビニでこのサンドイッチが買えたら最高なのになといつも思う。今のコンビニの技術力があれば、可能なのではないか?といつも思う。
しかしたまに食べるから良いのだよと思う自分もいる。以前お昼に「おにぎらず」のサンドイッチ版みたいなものが近所に売っていて、そればかり食べていたことがある。もう一生お昼はこのサンドイッチでいいやと思っていたが、僕は2週間で飽きて「別のバリエーションも作れませんか?」なんて聞いたことがある。わがままな客だw

好きなメニューがあるのが良いことだ。なんかのきっかけで「そういえば今日はこの予定があるからあそこに」なんていう食通みたいなことができるのは、年齢を重ねてきたからできることでもある。転勤で複数の場所に住んできたから、その場所でお気に入りだったお店もある。まぁ候補なんて言っても、指で数えるほどしかないのだけど。

今日の夜は何を食べようか?そんなことをワクワクして考えられるのは生きているからだ。そして何を食べても大丈夫な体があるから。だから「何を食べようか」という楽しみな選択肢が生まれてくるのだ。それ自体がきっとすごく幸せなことで、世の中には「これしか食べられない」という人がたくさん存在することを忘れてはならない。それは単なる好き嫌いとは違う次元の話だ。

今の時間に感謝し、今日の夜は何を食べようか決めようじゃないか。
でももう決めてるんだ。それはカレーである。目玉焼きを作り、ソーセージを焼いてトッピングするのだ。カレーは無印良品のレトルトだけど、これだってすごく美味しいんだ。
ひたすら夜まで美味しいものに包まれて、また明日からのストレスMAX激務に耐えるメンタルと体つくりをするのである。

あ、その前に勉強もしないと。

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