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みどりは本当に社会の役に立っているのだろうか?SOCIAL GREEN DESIGN オープニングイベントレポート

SOCIAL GREEN DESIGN

SOCIAL GREEN DESIGNもいよいよ本格的にスタート!プレ期間を経て、今年度はどのような取り組みが始まるのでしょうか?

地域の役に立つみどりをつくりそれに関わる人を増やしていくために、「SGDトーク、SGDスクール、コミュニティ」という主に3つの活動が立ち上がるようです。

ただ作って終わりのみどりが、生かされるみどりになれば、日本のみならず世界の風景がより良いものになっていくに違いありません。そのような壮大なスケールを感じるこのプロジェクトについて、2021年5月28日(金)19時より、仕掛け人の3人によるトークイベントが開催されました。その模様を振り返ります。

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SOCIAL GREEN DESIGNの詳細はこちら。

SOCIAL GREEN DESIGNが生まれた背景についてはこちら。

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今回のゲストは、エクステリア業界で様々な事業を展開されている小松正幸さん(株式会社 ユニマットリック)、プロデューサーの神木直哉さん(KAMIKIKAKU)、ランドスケープデザイナーの三島由樹さん(株式会社 フォルク)の3名です。当日は以下の目次の流れでお話が進みました。

SOCIAL GREEN DESIGNが生まれた背景

まず初めに、(株)ユニマットリックの小松さんより、SOCIAL GREEN DESIGNが生まれた背景についてお話しいただきました。

小松さん:ユニマットリックの代表を務めている小松です。よろしくお願いします。エクステリア・ガーデンの事業領域にどっぷりの会社がなぜこのような事業を始めようと思ったのかということについてお話しします。私は子供の頃、転勤族でギターやバンドにもハマって、バイトにも明け暮れる日々で、その中で人生の目標が全く見えてきませんでした。そんな時、知人に誘われてエクステリア業界に入りました。それがきっかけで30年以上、この業界に携わることになりました。
47都道府県のお客様と会って、CADのサービスを提供したり、(エクステリアやガーデンの専門校である)E &Gアカデミーの運営を行い、様々な一流の講師や仲間と出会う機会に恵まれました。また、海外含めて様々な土地を視察する機会にも恵まれたのです。仕事ばかりの人生でしたが、地元小学校のお父さんの会に入ってからプライベートにも恵まれるようになりました。そして、地域と関わることにも関心を持つようになりました。

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創業30周年で、さらに社会貢献ができる会社にしたいという思いで、社員と一緒に半年、企業理念を考えました。そこで、「人にみどりを、まちに彩りを」という私たちのミッションが生まれたのです。

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人口減少、空き家の増加、インフラの老朽化などの問題とともに、社会環境が変化する中で、スクラップアンドビルドではなく、「モノ」から「ココロ」へ、「人間・経済中心」から「環境・自然中心」へと視点を移していく必要があると感じました。もっと社会に開かれた産業であり、子供が憧れるような職業・仕事にしたいと本気で考えるようになったのです。

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その中で、(SOCIAL GREEN DESIGNの発起人の一人である)神木さんと出会い意気投合して、改めて社会に必要なみどりについて考えました。そして、もう一人の発起人である三島さんと出会い、このような新しい考え方を持ったランドスケープデザイナーがいるのかと驚きました。そして、この3人で「SOCIAL GREEN DESIGN」が立ち上がったのです。社会に開かれたみどりを目指し、そのデザイナーを育て、実際に現場を作っていくという活動を行います。みなさんと一緒に是非、盛り上げていけたら嬉しいです。

SOCIAL GREEN DESIGNとは?

次に、株式会社フォルクの三島由樹さんからもSOCIAL GREEN DESIGNに至った経緯とその具体的な内容に関してお話しいただきました。

三島さん:先ほどの小松さんのお話で、ユニマットリックの設立と僕の誕生日が一緒だということに驚きました。ところで、ランドスケープデザインを学んだ大学時代、ゼミの先生の影響もあって、アメリカに海外留学に行くことになりました。当時、アメリカで学んだこととして印象的だったのは、綺麗な場を作ることだけではなく、「汚染された土地をいかに再生させるか」ということが議論されていたことです。みどりは見て楽しむものだけでないとわかりました。そして、ランドスケープデザインは社会のデザインであると考えるようになったのです。

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社会の役に立つものを作る「SOCIAL  DESIGN」という考え方があります。(歴史を振り返ってみると)1970年代の経済成長主義や環境問題を背景に、社会課題改善に向けたデザインが生まれました。水汲みを楽にするデザインや、避難所のプライバシーを保つデザインもあります。
これらをみどりの視点でお話しすると、ランドスケープアーバニズムという運動が1990年代くらいからアメリカで始まりました。緑の視点で都市や社会のあり方を再考する試みです。古い鉄道跡を活用したハイラインの取り組みが有名です。

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SOCIAL  DESIGNのみどりの分野に特化した取り組みが、このSOCIAL GREEN DESIGNです。もの・場所・文化・制度、など、みどりに関わる全てをGREENとして考えています。一方で、何がSOCIAL GREEN DESIGNではないのかという話ですが、例えば禁止事項ばかりの公園が挙げられます。誰のためになっている悲しい事例がたくさんあり、これらにも問題意識を持って取り組んでいきたいです。SOCIAL GREEN DESIGNには、8つの視点があるのではないかと思っています。

〈SGD8つの視点〉2021.05.28版
地域性:その地域らしさ
汎用性:誰もが真似できる
還元性:利益が他者の利益にもなる
開放性:誰もが参加できる
継伝性:過去を継承し、未来に伝承する
依存性:他者の参加と協力によって成立する
永続性:ずっと続けられる
普遍性:誰もが共感できる

この視点に基づいて、株式会社フォルクの取り組みを紹介します。八王子では、AJIROCHAYAという活動を行っています。(塀などで)囲われている見るための庭ではなく、街に開かれた土間(ニワの語源)のような形にできないかという発想で取り組みました。街のベンチを作り様々な方に座っていただいたり、植栽管理に地域の方が関わっていただいたり、愛着が湧くような工夫をしました。テナントのコミュニティづくりもお手伝いさせていただいており、場所を作るだけでなく育てていくことが重要だということを再確認しました。

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下北線路街園藝部では、園藝を通じて循環型地域社会を作るということを行なっています。まずは4回のワークショップを計画して、ステップを踏みながらコミュニティを作っていきました。今では月に一回、園藝部DAYを開き、園芸教室を開いてプロに緑の管理を教わることをしています。また、ミミズコンポストを作ったり、ポップアップストア(期間限定のお店)を開いたりもしています。地域の中で、様々なものが循環していくことが重要です。また、地域の緑を育てた先に、園藝の森を作り、コミュニティの拠点とする計画があります(下記のイラストを参照)。自分たちで経営していく形のコミュニティで、今後法人化を予定しており、準備をしているところです

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なぜ今、SOCIAL GREEN DESIGNなのでしょうか。社会課題の複雑化と多様化の中で、緑に対する注目度は高まっています。ガーデニング市場がこれまでになく盛況になっているのです。これはコロナの影響もあるのですが、これをいかに社会を変えていく起爆剤にしていくかが重要です。ぜひ、みどり以外の分野にも参加していただきたいです。それというのも、みどりに関わる人は少なくて、学会同士で比較しても、造園学会の人は圧倒的に少ないからです。

SGDトークとSGDスクールの紹介

引き続き、株式会社フォルクの三島由樹さんから、SOCIAL GREEN DESIGNで今年行う具体的な活動についてお話しいただきました。

三島さん:昨年度に引き続き、「SGDトーク」と「SGDスクール」は行なっていきます。異なる専門分野の方々とみどりを考える良い機会です。
SGDトークについて、今年は地域協働・行政・生産の3つのテーマを設けて行います。トークの参加費は一般と学生とで異なり、会員になっていただくとお安くなります。また、3回割というのもあり、テーマごとに3回連続で参加するとお得です。(お申し込み・詳細はこちら

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SGDスクールは企画を作り、発信し、コミュニティを作り、実践して継続していくところまでを一緒に学ぶことができます。社会を変えていくような動きができたらと思います。今年は春夏と秋冬で2回に分けて、全8回・定員10名で行なっていきます。2021年度のスケジュールはこちらです。対象は職種・経験は不問で、地域に根ざした緑のあり方に興味のある事業者の方や、自治体担当者、公園の管理者、個人の方、コミュニティに参加したい方などにおすすめです。(お申し込み・詳細はこちら

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SOCIAL GREEN DESIGNの方向性

次は、KAMIKIKAKUの神木直哉さんより、今後のSOCIAL GREEN DESIGNの方向性についてお話しいただきました。

神木さん:みどりや公園は誰のため?と考えたときに、次世代の子供たちを思い浮かべます。みどりのある生活をぜひ若い人に知っていただきたいと考えています。最終的にはSGDスクールを通じて、課題解決につながるようなプログラムが作れたらと思います。

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亀岡市で今取り組んでいる事例をご紹介させてください。亀岡市では建物の老朽化などが問題になっています。そんな中、農家のおばちゃんの知恵を生かして、学生も関わり、住民参加型のガーデンを作るという活動を行なっているところです。亀岡市の丸ごとガーデンミュージアム構想に乗っていけたらと考えています。また、石、苗木などの材料は地域で調達して持ち寄り、植栽イベントも開きました。たくさんの地域の方々にご参加いただき、街の誇りにもつながっています。

▼植栽イベントのレポートについてはこちら。

SGDコミュニティについて

また、今回のイベントの進行役を務めておられる、株式会社ユニマットリックの谷岡昭一さんから、SGDコミュニティについてもご紹介がありました。

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谷岡さん:SGDコミュニティでは、一緒に活動を行う様々な分野の人を増やすことで、ムーブメントを作っていけたらと考えています。SOCIAL GREEN DESIGNについての最新情報を知りたい方はぜひこのファンコミュニティにご参加ください。(お申し込み・詳細はこちら

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ディスカッション

次に3つのテーマに沿って、進行役の谷岡さんとゲスト3人によるディスカッションを実施。視聴者からの質問にもその都度答えていくようなやり方で行われました。

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テーマ① みどりはただあるだけじゃダメな時代らしい

三島さん:みんな本当は思っていることですよね。地方都市の市民や行政の方からよくこのような話を聞きます。「並木道にみどり植えてどうするの?むしろ減らした方が良いのでは」という話も出てくることだってあるのです。メリットを考え、引き算のデザインが共感を呼ぶ時代かなと思います。
小松さん:都会の人の方がみどりを望まれる話は聞きますが、何のため?とよく考えないといけません。快適さを伴っていないことはよく感じることですね。
神木さん:人間のためのインフラ整備でしたので、植物のことを考えて作っている人は少ないと思います。
三島さん:みどりはどうあるべきなのかを考えると、いろんなレベルがあっていいと思うのですが、みどりを心から感じそれが日々の楽しみになっていくと良いですね。昔の人はみどりを楽しむために使っていたのではなく、命を感じ日々の営みとして考えていたはずです。今は新しい緑のあり方を考える時です。

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三島さん:緑は次の世代にとって必要かを考える必要があります。既にある身の回りの緑をどう見直していくかもすごく重要ですよね。

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神木さん:京都の庭師さんから聞いたことなのですが、「四季の風情やその考え方さえも取り込むことがお庭」とのことです。
小松さん:(自然の不快な部分すらも、よくよく考えてみれば)逆手に取った価値がありそうですね。

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三島さん:緑化申請という制度はありますが、数字上でのことが本当に幸せに繋がるかはよく考えないといけません。昔は最低限の緑を確保する時代でしたが、今では空地を生かす時代ですね。

テーマ②SGDとビジネス

神木さん:これは業界における永遠のテーマですね。行政が計画して作ったものが誰も使わないということもあり、誰のための緑なのかを改めて考えていくことが重要です。規制緩和をしている中で、民間企業を入れて作っていくという動きも出ています。使うより作るが逆転してしまってはいけません。
小松さん:緑を活用することで付加価値ができる企業さんにとっては、何かその方法を見出したいと思うのですが、それを話す場がなかったのではないかと思います。そのための場所作りを提供できたら良いのではないかと思います。
三島さん:今時代的に、ビジネスチャンスとしてみどりのニーズが高まっていると思います。効率の良い短期的な投資の対象として考えるのではなく、当たり前の生業の一部になっていくのが良いのではと思います。地味に持続していくことが必要なのかと思います。

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神木さん:どこまで踏みこんで良いかわからない中で、バランスをとって進められるのが良いと思います。本当に市民の皆さんに誇れるものになっているのかということについて、温度感を合わせていく作業をしていきます。

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三島さん:活動を世の中にどう届けるのかが課題です。みどりの業界はいかに興味を持ってもらえるかが大事で、イラストを描ける人などが入り口のデザインをすることも必要ですね。ご高齢の方が多いと、発信方法を持たない場合も多いです。

テーマ③市民にどう届けるか

神木さん:人が関わりたくなることが重要で、関われる形を模索していく必要があります。亀岡の事例に関して言うと、ガーデン1つで素晴らしい街だと思えたという方もいて、それは素晴らしいことですよね。
三島さん:今後のSGDトークですが、現場の方々がどういう問題意識を持っているのか聞けるのはよい機会ですよね。行政の方も顔出しで出ていただきます。
小松さん:SGDトークがこれからますます楽しみですね。

最後に一言!

神木さん:若い人が誇れる街、そのためのみどりを作っていけたらと思います。
三島さん:一番やりたいのは、コミュニティ作りです。議論をしながらも一人ではできない大きなことを皆で作っていけたらと考えています。今回、50個以上の質問やコメントをありがとうございます。可能性が広がる第一歩にもなりました。ウェブサイトからコミュニティへのお申し込みもぜひよろしくお願いします。
小松さん:今日は申し込みだけで約200人の方が参加してくださっています。本当にありがとうございます。これが新しいことに挑戦する何かが生まれるきっかけになるのではと思っています。これからもどうぞよろしくお願いします。

▼今回のSGDトークの模様は、こちらのYoutubeのリンクよりご覧いただけます。

次回のSGDトークはこちら。

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SGDスクールについてはこちら。

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SGDオープニングイベント  プロフィール

ゲスト
小松正幸(こまつ まさゆき)
株式会社ユニマットリック 代表取締役社長 / (一社)犬と住まいる協会理事長 / NPO法人ガーデンを考える会理事 / NPO法人 渋谷・青山景観整備機構理事 / (公社)日本エクステリア建設業協会顧問 / 1級造園施工管理技士
E&Gアカデミー(エクステリアデザイナー育成の専門校)代表。RIKミッション『人にみどりを、まちに彩を』の実現と「豊かな生活空間の創出」のために、エクステリア・ガーデン業界における課題解決を目指している。

三島由樹(みしま よしき)
株式会社フォルク 代表取締役 / ランドスケープ・デザイナー
1979年 東京生まれ。慶應義塾大学環境情報学部卒業。ハーバード大学大学院デザインスクール・ランドスケープアーキテクチャー学科修了(MLA)。マイケル・ヴァン・ヴァルケンバーグ・アソシエーツ(MVVA)ニューヨークオフィス、東京大学大学院工学系研究科都市工学専攻助教の職を経て、2015年 株式会社フォルクを設立。 芝浦工業大学、千葉大学、東京大学、日本女子大学、早稲田大学非常勤講師。Tokyo Street Garden 共同代表。八王子市まちづくりアドバイザー。加賀市緑の基本計画策定委員。白山市SDGs未来都市推進アドバイザー。IFLA Japan委員メンバー。登録ランドスケープアーキテクト(RLA)

神木直哉(かみき なおや)
KAMIKIKAKU代表
目的:人と人を繋げて新しい価値ある空間と時間の『間』を提供するユニットです。
強み:30社以上に及ぶネットワークと実現を可能にするディレクションチームをプロデュースします。

(執筆:稲村行真)

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