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【SGDトーク】 公民連携が拓く社会的共通資本の未来 (ゲスト:町田誠氏)<アーカイブ動画のみ有料>

公園、道路、河川など、公共空間を活用する動きが進んでいます。日本全国にはどのような事例があるのでしょうか?今回のゲストは元国土交通省で、一般財団法人 公園財団 常務理事や横浜市立大学大学院の客員教授など務める町田誠(まちだまこと)氏。「SGD×行政」のテーマの1人目のゲストです。「公民連携が拓く社会的共通資本の未来 」と題して、2021年8月5日(木)に開催されたSGDトークの模様をお届けします。

SOCIAL GREEN DESIGNや、SGDトークについて知りたい方は以下のURLからご覧ください。

当日の大まかなスケジュールは以下の流れで行われました。
第1部 19:00-19:20 SGDイントロダクション「SOCIAL GREEN DESIGNとは」
第2部 19:20-20:20 町田誠氏によるトーク「公民連携が拓く社会的共通資本の未来 」
第3部 20:20-21:30 モデレータとのディスカッション
町田誠氏のトーク内容から振り返っていきます。


公共空間は「使いこなし」の時代

町田さんのトークは今までのご活動と絡める形で、「公共空間をどう使うのか?」という話題から始まりました。熱い想いと情報量たっぷりのゲストトークの一部を振り返っていきましょう。

町田さん:大学で造園やランドスケープを学び、国土交通省で36年ちょっと勤めました。その後から今に至るまで、さまざまな組織や大学などでパラレルに仕事をしており、人の輪を広げています。これからの公共空間は使いこなしの時代で、公園も道路も河川も港湾緑地も、制度と共にどんどん変わって行く状況にあると思います。(浜離宮の芸術祭の時など)ほとんど無理なような仕事でも、やりますか?やりませんか?と言われた時に、「やります!」と言い続けてきたのが私の仕事のスタイルです。

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【問題意識】 法律や制度の中で、公園を活用するには?

町田さん:社会の中の公園、みどりの中の立ち位置を考えるときに、現在の都市公園ストック(沖縄本島一個分)を税金で管理していかなければならないという現実があります。特に非常に多く存在する小さい公園を使いこなす社会を作りたいと考えていますが、大都会の都心部には昼間から開いていない公園すら存在します。また、禁止事項だらけの公園も広がっています。禁止事項は条例に根拠がなければならないのですが、多くは管理者の都合であって利用者にとっては不利益なことも多いのです。

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町田さん:そんな中で、愛知県豊田市の新とよパークには「できます看板」が作られました。河川の空間ではイベントしませんか?という看板があります。都市公園法の規制がかかっていない暫定利用の場合は多様な活用がしやすいこともあるのですが、都市公園を活用できますか?ということが問われているのです。

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都市公園の過去と現在

町田さん:公園の出発点は明治6年に公園を開設したい場合に届け出を出す旨の太政官からの通達がありました。社寺等の人が集まる場所である、いわば国有地化された土地をどう管理するのか?ということが焦点でした。そのような状況下で作られた上野公園は明治6年の開設当時からとても規模が大きく、今の上野駅の敷地も公園の敷地の中にありました。2020年3月に公園内道路のロータリー化が実現され、道路を廃止して上野公園が上野駅に直結しましたが、これは元々公園敷地だから実現できたという背景があると思います。

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魅力的な公共空間を公園から実現

町田さん:世界には世界一美しい広場と言われる場所がたくさんありますが、日本には魅力的な公共空間がないという問題意識がもともとあって、公園がその機能を担うべきと考えてきました。日本では広場のように見える土地は、道路法や公園法で管理している場合も多く、広場法という法律はありません。それで、広場のような利活用、アクティビティの受け皿となる空間が欲しい、という発想から、PARK-PFI(公園のパブリックスペースを運営する民間事業者を公募により選定する制度:2017年法改正)に行き着くのです。

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都市公園の活用~PARK-PFIと街づくり

町田さん:2017年の法改正は、保育所や社会福祉施設を公園の中に作るという動きも含まれています。PARK-PFI導入当時は個々の公園デザインにどう影響するか?などの議論がたくさんありましたが、社会から選択されるライフスタイルを実現させるという視点のが重要です。お客さんが入れば事業性も高まり、持続していきます。制度を使いこなすことに慣れれば、連鎖的にプロジェクトは進みます。街づくりの文脈でPARK-PFIを使いこなしているのが、和歌山市の本町公園や岐阜県各務原市の学びの森公園、福山市の中央公園などで、とても良い関係性のデザインの公園がたくさんあります。予算をかけずに施設を作り、環境を生かしたイベントやアクティビティなど幅広い事業が生まれていきます。

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ディスカッション 「小さな公園を使い倒すには?」

町田さんのお話の後、エクステリアがご専門の小松正幸さん(株式会社 ユニマットリック)とランドスケープデザイナーの三島由樹さん(株式会社 フォルク)を交えた様々なディスカッションが行われたので、その一部をご紹介します。お2人はSOCIAL GREEN DESIGN 協会の理事でもあります。

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小松さん:情報量の多いお話に、とても感動いたしました。広場、河川、道路、公園などを活用することは、本来であれば豊かな暮らしを実現するためのライフスタイルにも繋がります。しかし、日本はなぜこんなに活用が進んでいないのか?と考えさせられました。全国の8万8千箇所の小さな公園が使われていないのは問題ですが、何か解決策はありますか?

町田さん:小さな公園はステークホルダーが限られているので、これからは行政があまり口を出さずに地域のローカルルールで使い倒していくことが必要です。方法論としては、管理の権限も管理費も自治会に任せる(指定管理者)というのはありでしょう。住民の方からの有効な提案制度は公園の法令下にはないので、間に入ってくれる人(指定管理者)も必要だし、行政側の情熱も必要です。

三島さん:大学生にも聞いていただきたいようなお話でした!PARK-PFIの成功事例がある中で、制度上の課題やこれからの展開について伺いたいです。

町田さん:大企業が数十億かけてできることもありますが、公園にカフェを作り運営をしていくような小規模な取り組みが街づくりと一体となって進んでいき、エリアのプレーヤーが公園の中で商売も(マネタイズ)できるという空気感が必要でしょう。

視聴者からの質問例

今回も、視聴者から本当にたくさんの質問をいただきました。質疑応答の一部をここでご紹介させていただきます!

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視聴者①:Park-PFIを導入して維持管理費はどの程度削減されているのでしょうか?平均値や代表例が知りたいです。

町田さん:データとしてはまだまだ事例が少ないです。国の補助金の制度上では収益施設の周辺整備を1割安価に実施する(民間が負担してくれる)ことが必要ですが、それを管理許可にするか、指定管理にするか、役所の直営管理にするかなどはその自治体の制度設計次第です。制度運用条件を厳しくしてあなたが管理しなければなりませんと言うとその分管理費はゼロになるが、応募者は少なくなりかねないという関係にあります。公園で儲けて公共にいくらかでも還元してもらうという考え方を理解してもらう必要があり、Park-PFIの事業は値切るよりも社会的な効用が生まれることに注力すべきと考えることが大事です。

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視聴者②:小さな公園を自治会に任せてみてはとのことですが、自治会は一部の高齢者が彼らの利害で動いているケースも多いです。子育て世代や若者がとっつきづらいので、高齢者こそ公園を無人にしているような気もします。

町田さん:このような問題はあるかもしれませんが、やってみなきゃわからないのと、粘り強くやれば別かもしれません。保育所の騒音問題にしても、一番うるさく感じないのが隣向かいに住む高齢者男性というデータもあります。先入観や偏見を持たずに、様々な人の利害を、公園だけではなく社会全体で解決しなくてはいけない問題なのだと思っています。

「SGD×行政」共通の質問

①これからのみどりについて考えた時に地域社会は行政に対してどう向き合うべきか?また、行政は地域社会に対してどのような役割を担うべきか?

町田さん:行政と地域社会で新しい関係性が広がっていくことを信じていくしかないです。苦情を言われた時に一方的に看板を立てるというのではなく、新しい関係性(社会秩序)ができると信じてとことん話し合うことが大事です。そういう意味では、社会がどうなるかという話なので、公共空間の使いこなしには、社会学の方々にもぜひ頑張って頂きたいです。

②これからの社会に必要なみどりとは?

町田さん:より多くの人に選択され続けることが重要です。それは社会の変化に適応して柔軟に変化し続けることでもあります。明治6年頃のウィーン万博に視察に行った農学者が持ち帰った種から、西洋型の街路樹が日本に導入され、長いこと、早く大きくなる木が好まれましたが、今ではこのような木は一番手に負えない存在でもあります。社会の現実や人の気持ちに敏感であるみどりが必要です。

様々な挑戦を続ける町田さんのお話は熱量にあふれ情報量も多く、視野をぐっと広げてくれるようなお話でした!この度はお話を聞かせてくださり、ありがとうございました!

【SGDトーク】SGD×ガバナンス #01

・公園、河川、道路などの公共空間は、使いこなしの時代となっている。
・法律や制度の中で、規制がある公園の活用方法を考えねばならない。
・国有地をどう使うか?という観点で近代都市公園が始まった。
・公園法令の限界に挑む取り組みがある。
・街づくりの文脈でPARK-PFIを使いこなしていくことが大事。

【SGDトーク】 SGD×ガバナンス #01プロフィール

ゲスト

町田誠(まちだ まこと)
(一財)公園財団、横浜市立大学大学院 都市社会文化研究科、 国土交通省PPPサポーター
1982年建設省。国土交通省、国土庁等勤務の他、2000年国際園芸・造園博覧会ジャパンフローラ2000、2005年日本国際博覧会(愛知万博)、2012年全国都市緑化フェアTOKYO GREEN2012において、会場整備、大型コンテンツのプロモート等に携わる。さいたま市技監、東京都建設局公園緑地部長、国土交通省都市局公園緑地・景観課緑地環境室長、公園緑地・景観課長などを歴任。2018年国土交通省退職。

モデレータ

小松正幸(こまつ まさゆき)

株式会社ユニマットリック 代表取締役社長 / (一社)犬と住まいる協会理事長 / NPO法人ガーデンを考える会理事 / NPO法人 渋谷・青山景観整備機構理事 / (公社)日本エクステリア建設業協会顧問 / 
E&Gアカデミー(エクステリアデザイナー育成の専門校)代表 / 1級造園施工管理技士
RIKミッション『人にみどりを、まちに彩りを』の実現と「豊かな生活空間の創出」のために、エクステリア・ガーデン業界における課題解決を目指している。

モデレータ

三島由樹(みしま よしき)

株式会社フォルク 代表取締役 / ランドスケープ・デザイナー 
1979年 東京生まれ。慶應義塾大学環境情報学部卒業。ハーバード大学大学院デザインスクール・ランドスケープアーキテクチャー学科修了(MLA)。マイケル・ヴァン・ヴァルケンバーグ・アソシエーツ(MVVA)ニューヨークオフィス、東京大学大学院工学系研究科都市工学専攻助教の職を経て、2015年 株式会社フォルクを設立。 これまで、慶應義塾大学、芝浦工業大学、千葉大学、東京大学、日本女子大学、早稲田大学で非常勤講師を務める。登録ランドスケープアーキテクト(RLA)

(執筆:稲村行真)

アーカイブ動画について

▼今回のSGDトークの全ての内容は、以下のYoutube動画にてご覧いただけます。ご希望の方は以下よりご購入ください。

https://form.run/@SocialGreenDesign-archive

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