齋藤幸平『カール・マルクス資本論』をSF読みが読んだメモ
今回のテーマは「AIと資本主義の類似性と親和性をSF読みが考える」です。
(#SFじゃない本たち のタグでは、普段SF読みの私が、SF以外の本で考えさせられた著作をメモ的に紹介しています)
(これは評論ではなく、エッセイなのでお気軽にお読みください。なお著作は私の読解力で読み解いた理解である点にご注意ください)
斎藤幸平 著ほか. カール・マルクス 資本論 : 甦る、実践の書, NHK出版, 2021,
読み始めた動機
最近、AIを勉強しているのですが、「AI開発って資本主義と親和性が高いよなぁ」と漠然と思うことがありました。その中で資本論が気になりだしたときに、たまたま「NHKアカデミア資本主義のその先へ」で齋藤氏が話されていたのがきっかけでした。
また著者の『資本論』の解説本の中で、こちらを選んだのは、「はじめに「人新世」の危機に甦るマルクス」という紹介文に興味を惹かれたことや、イラスト入りでわかりやすかったからです。
(超)個人的感想
超知能開発や超知能と資本主義に類似性を感じていた私は、この本で説明されている「資本」の説明に膝を打ちました。
私が認識している超知能は「目的を最適化する過程が自律的に自動化されたもの」程度の認識です(そうした理解が正確かはひとまず横に置いておきます)。「資本」も「超知能」も目的という「価値」を増大させることに際限がなく、自動化されていく点が、類似していると思ったのです。
それに膨大なデータ学習を必要とするAIはまさに資本を増大させていく資本主義と相性が良いんだという気づきもありました。(資本主義の中で開発されているのだから、あたりまえっちゃ当たり前のことなのかもしれませんけどね)
またこの本で、マルクスは「社会主義」や「共産主義」よりも「アソシエーション」(自発的な結社)という言葉を使っていた(p108-109)というのも意外でした。
著作(つまり齋藤氏のマルクス観)を私なりに要約すると、資本主義に限界を感じていたマルクスは晩年、自然科学に興味を持ち、古代ゲルマン社会のマルク共同体(農牧用地の共同所有)に関心を寄せ、共同体で自然の富を村民がシェアする定常型経済を豊かさとして捉えていたようなのです。
なお、この村民の欲望は宗教によってコントロールされているので、共同所有が可能になるようなのです。
資本主義の行き詰まりからの原始的仕組みへの回帰への提案にも見えて、つい「歴史は繰り返す……」とつぶやきたくなりました。
こういう原始的な未来像はSFにも描かれる印象がありますよね(具体例はご容赦を)、SFってジャンルは最先端を観ていて、すごいな、と改めて感慨深くもなります。
いずれにしても自分の中でぼんやりとしていたAIと資本主義の類似性に自分なりの回答も得られました。余談で「AI(超知能)は”「GーWーG’(ゲー・ヴェー・ゲー)」と吐く”」という妄想SFタイトルも生まれました(笑)
他にも資本主義がなぜ金儲けに走るのかが、具体的にわかりやすく書かれていたので、そこに疑問を持っている方は一読をお勧めします。
(本当に学生の時に読みたかったよ!と思いました)
お読みいただきありがとうございました。
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