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リアルテックベンチャーツアー in Singapore(参加レポート)

こんにちは!Sustainable Food Asiaの佐藤です。2022年9月28日(水)~10月1日(土)に開催、リアルテックベンチャーツアー in Shingaporeに参加いたしました。

東南アジア地域への出資活動を積極的に行うリアルテックホールディングス株式会社 主催、Food Tech、Bio/Med Tech、Eco Tech領域のスタートアップ企業及び、政府系ディープテックファンド、民間のフード特価アクセラレーター、企業庁直轄ファンド等を訪問。

私たちSustainable Food Asiaとは?

私たちSustainable Food Asia株式会社(以下SFA)は、「食の新しいスタンダードを創造する」というパーパスを掲げてスタートいたしました。

東南アジアエリアを中心に活発化しているサステナブルな食産業を支えるフードテックベンチャーが生み出す新規素材と、日本の食関連企業の持つ技術を掛け合わせることで、次世代へと繋がる持続可能な食産業の基盤を構築することを目指しています。

私たちが目指す先と取り組み

私たちは日本を含めたアジアの国々がワンチームとなり、社会課題の解決に取り組むことが重要であると考えています。そのためには、各国や各事業者が別々に取り組むのではなく、共通のビジョンを構築し、各プレイヤーの信頼関係つまりは人間関係をベースに社会課題解決の実現に向けて、協業していけるかが大切です。

親会社である、CarpeDiem株式会社が主催するSTART CAMPでは、大企業とスタートアップ・ベンチャー企業の垣根を超えて、共通のビジョンを構築し新たな取組の推進及び、関わる方々の信頼関係や人間関係のベース構築にチャレンジしてきました。

START CAMP SUMMER 2022@新富町

子会社であるSFAは、リバネス社との合弁会社として設立、フード領域に特化したアジアのコミュニティを作っていきたいと考えています。率先して日本とアジアの懸け橋となり、コミュニティ形成、関係するプレイヤー同士の信頼関係構築の機会を作っていくことが重要だと考えています。

リアルテックベンチャーツアーへの参加目的

フード領域に特化したアジアのプレイヤーたちのコミュニティを作りたい私たちと、東南アジアのフードテック含めたディープテック領域の活性化と取組の促進を図るリアルテックホールディングスの共感性の高さと、実際にシンガポールのプレイヤーたちやそこに関心のある企業の皆様と関係性を築ける貴重な機会であったため、ツアーへ参加することとなりました。

この記事では、ツアー参加レポートとして、シンガポールディープテックの可能性や、大企業とスタートアップの新たな関係構築による、ソーシャルセクターの課題解決への可能性について取り上げたいと思います!

東南アジアはスタートアップの隠れメッカ?

ご存じだろうか。実は、東南アジア主要6カ国(インドネシア、シンガポール、マレーシア、タイ、ベトナム,フィリピン)への2021年の投資が、コロナ禍にも関わらず堅調に推移していることを。

(出所)Cento Ventures “Southeast-Asia TechInvestment-2020 H1”

中でも、シンガポールのテック系企業は、約3,800社(2020年度シンガポール政府予算案)とも言われている。数多くの企業輩出を実現する要因の一つに、政府や公立教育機関がテック系の起業家を支えるエコシステムを積極的に形成しており、企業・スタートアップの協業を政府が積極的に後押ししていることがある。

シンガポールにおけるリアルテックベンチャーが盛んな背景

前述の通り、シンガポールは官民連携にて、スタートアップ投資のエコシステムを形成し、そこからシンガポール発のベンチャーがアジア圏へ積極的に進出する流れがある。

イノベーション拠点としてのシンガポールは、世界知的所有権機構(WIPO)イノベーション指数で過去14年上位10を維持。スタートアップを支えるエコシステムは、政府の政策、教育・研究機関、多種多様な企業群、投資会社・VCがバランスよく機能している。

よって、国家レベルで積極投資・推進が決まった領域は、スタートアップがすぐさま頭角を現す。

例えば、国土の狭いシンガポールにおいて食料を輸入に頼らざるを得ない状況を打破すべく、アグリ・フードテック領域への注力や、生活水準の上昇による、高齢化社会に対応する医療技術の発展の必要性。

また、エネルギーや水等の天然資源が少ないため、Sustinability(持続可能性)を有するエネルギー・インフラ開発領域も国家的な投資対象だ。

本記事にて詳細は割愛するが、このようにテクノロジーの力を使い、根深い課題を解決していく考え方や活動のことを「ディープテック」と呼び、欧米やアジアを中心に、積極的に研究開発や投資が行われている分野である。

シンガポール政府の施策「30×30」による追い風

また、シンガポールは特にアグリ・フード領域における課題が深刻な国である。国土が東京23区と同等ほどの面積のため、野菜・米だけでなく、鶏肉・豚肉・魚などあらゆる食料供給を輸入に頼り、国内の栄養需要の約10分の1しか自給できていないと言われている。

新型コロナウイルス感染拡大、ウクライナ情勢、異常気象などにより、輸入依存による供給途絶が 起きた際でも、衝撃を緩和させるため、前述の課題への対策として2019年より「30×30(30by30)」と呼ばれる計画に着手している。

この計画は、テクノロジーを駆使して2030年までに国の栄養需要の30%を自国で生み出せるようにし、輸入依存度を減らしていくことが目的である。すなわち、10年間で食料生産を現在の3倍にするという目標だ。

「30×30」計画の達成に向けて、アグリ・フードテック領域の施策が実行され、政府は資金援助にも力を入れている。そのような流れもあり、シンガポールでは画期的なアグリ・フードテック領域のスタートアップが誕生し活発化し始めている。

参加ツアーの概要

弊社グループ会社である、リアルテックホールディングス株式会社は、2020年設立のグローバルファンドからの出資活動を通して、東南アジアのディープテックエコシステムと深い関係を築いている。

2020年設立のリアルテックファンド

コロナ禍においても、リアルテックホールディングスが現地で直接関係性を築いてきた、勢いのあるスタートアップや政府系のアクセラレーター・ファンドを訪問し、現場の起業家・研究者の熱を感じ、対面で議論を交わすことで、日系企業と現地企業のクロスボーダーな連携を創出することを目的として、企画された。

DAY1:イントロダクションの様子

全4日間の行程において、合計14社のリアルテックベンチャー、6社のファンド・アクセラレーターを訪問。社会課題解決に向けて研究開発や事業開発を推進する、志高い起業家・研究者・創業メンバーと出会い、課題を理解するとともに、参加企業同士が、どのように課題解決に寄与できるか、意見交換する機会になった。

ツアーの体験価値(深い関係性の構築)

ディープテック・リアルテックの領域は、研究開発から事業化、マネタイズまでのタームが長いことが特徴の一つ。そのため、取り組む社会課題や実現したい世界観に向けて真っすぐに進んでいる、起業家たちの熱量と志が非常に高い。

起業家によるピッチの様子

そのような思いや背景を持つ起業家のピッチを対面で聞けたことは代えがたい価値であった。コロナ禍でオンライン上の情報は溢れかえり、オンラインセミナーやピッチも盛んに行われていたが、対面で受け取れる情報や熱にまさるものは無いと改めて感じる機会となった。


Innovate 360(アクセラレーター)による説明

また、日系参加企業の業種や業態が様々な事もあり、ピッチ後の質疑応答の視点が多様なことも相まって、参加企業同士の刺激も大いにあった。さらには、スタートアップサイドも今後のビジネスパートナー連携を模索しており、議論が白熱していたことも印象的であった。

参加者とスタートアップ経営者の議論の様子(Profile Print)

コロナ前は「現地訪問」「対面商談」が日常であったが、アフターコロナに置いては「非日常」な時間になり、現地企業と訪問企業双方において、深い関係性に繋がる、最初のきっかけになったのではないだろうか。

真剣な表情でピッチを聞く参加者(@Crown Digital)

参加者からは、「生の声が聞ける価値を実感した」「事前のオンラインの情報ではわからない、事業開発段階の変遷を知ることができた」と感想があがっていたのも体験した価値の現れである。

ツアーの体験価値(市場のリアルを知る)

前段で記載したが、シンガポールは国家レベルでディープテック・リアルテック領域の研究開発・投資が進み、エコシステムが形成されている。そのエコシステムを実際に動かしている、政府系ファンド、アクセラレーター、教育機関の研究のスピンオフ促進組織を訪問する事で、エコシステムの実体や、シンガポールを含めたアジアのトレンドを知ることができた。

シンガポールエコシステムの説明(@SG Innobate)

シンガポール政府は、Sustinability、AgriFood、Advanced Manufacturing、Health&Biomedical Sciencesを重点領域として研究開発・投資を促進。政府系ファンドやアクセラレーターは、資金循環、研究開発支援、起業家育成、ネットワーク形成等の多様な施策を展開していることが特徴的であった。

特にディープテック領域は、社会的インパクトが大きい一方で、ラボから市場に実装するまでのタームが長く、根本的な研究開発の必要性及び、相当な資本投入が必要である。また、社会的・環境的な地球規模の課題に着目しているため、解決までの道のりは短くない。

製造工場内視察(@Hydroleap)

日本とシンガポールの一概な比較はできないが、ディープテック領域における新技術開発や社会課題解決の新たな手段を生み出すエコシステムのモデルとして、日本も学ぶべきところはあった。

一方で、日系老舗企業は世界に誇れる技術を多く有しているため、こうした新技術開発を進めるスタートアップ、ベンチャー企業とのアライアンスを組むことで、新たな展開を広げられることも、参加企業は感じていたのではないだろうか。

ラボ内見学

ツアーの体験価値(参加企業同士の繋がり)

3泊4日のツアー、加えてシンガポールという異国の地。前提条件が非日常な事に加えて、参加企業それぞれの目的意識が「新たな事業連携先を見つけたい」「新たな投資先を検討したい」「新たな共同研究開発のパートナーを見つけたい」など、近しいこともあり、共に過ごした時間の長さも相まって、関係性がぐっと近くなったことも印象的であった。

Karana取り扱い店舗での意見交換会

大手事業会社の担当者からは、「社内の様々な関係や投資家との関係性も考慮しつつ、新規事業・新規研究開発・新規投資先を検討する精鋭部隊の方々ばかりで、議論の視点が鋭くお互いに刺激があった」という感想も多かった。

また、当社のように自社がスタートアップかつ、事業ドメインとして大手事業会社とスタートアップのアライアンス提携の促進を展開したい立場の視点は、参加した大手事業会社の担当者からは新たな視点となったようである。

昼食時に活発な情報交換(@Hydroleap社内)

今回参加企業同士の繋がりが生まれた場所の一つは、訪問先へ向かう「移動中のバス」。参加者20名弱が小型バスにて移動し、企業や研究施設訪問後は、「このスタートアップの可能性は○○だった」「投資先として検討するには××の部分は気になるところ」「アライアンス提携において、○○の領域が魅力的だった」と各々が感想や視点をシェアすることで、新たな議論が生まれ、自然と参加者同士の関係が深まっていった。

移動中も止まらないディスカッション

ツアーの主目的は日系企業がシンガポールスタートアップとクロスボーダーな事業連携を目指すことであったが、同時に普段は特定領域・業態に特化して思考している人たちが、異国の地で新たな気付きと共に思考が解放され、お互いが視点を共有することで、新たな展開のきっかけを掴む同志になっていたようであった。

ツアー参加者の集合写真(@SG Innovate)

日本に戻ってもこの緩やかな繋がりが継続し、今後の発展のきっかけになることを、期待している。

まとめ

いかがでしたでしょうか。東南アジア・シンガポールのディープテック市場の盛り上がり、日系企業とのアライアンス提携可能性を見込んだスタートアップ企業の多さを少しでも感じていただけていたらと思います。

また、コロナ禍を経たからこそ、リアルの場での出会い、ツアー参加者として共に体験し緩やかな繋がりが形成されることの価値を、本記事から少しでもお裾分けできていたら幸いです。

別記事では、特にフードテック領域のスタートアップの紹介も追ってさせていただけたらと思います!

SFAの取り組みにご興味をお持ちいただいた方へ

2023年初旬にSFA主催のイベントを企画しております。その他も様々面白い取組を進めておりますので、ご興味ある方は最新情報を随時お送りさせていただきます。

以下フォームより、ご登録をお願いします!


■4日間の訪問企業一覧

【DAY1】Food Tech

  • Innovate 360 Innovation Hub
    シンガポール初のフードテックに特化したアクセラレーター兼ファンド。 これまでに、約20社をインキュベーション。

  • Shiok Meats Pte.Ltd.
    細胞培養した甲殻類肉(エビ・カニ等)を開発生産。環境負荷が低く健康的な「食」を提供することを目指すバイオベンチャー。

  • Prfile Print Pte.Ltd.
    食品素材の特徴を非破壊で認識するプラットフォームを構築するフードテック、IoTベンチャー。従来、主観で行われてきたB2Bサプライチェーンの品質・価格決定の最適化を目指す。

  • Crown Digital Pte.Ltd.
    飲食業における新しい顧客体験提供を目指すロボットベンチャー。 ロボットバリスタEllaをシンガポール・日本に展開。

  • Bali Grove Pte. Ltd.(商標名:KARANA)
    ジャックフルーツを独自の技術で加工し、植物性代替肉を提供するフードテックベンチャー。既にアメリカ、シンガポールで販売開始。

【DAY2】BiO-Med Tech Day

  • SEPPURE Pte. Ltd.
    通常の膜では融解してしまう化学混合液中でも安定した性能を発揮するナノ分離  膜システムを開発するベンチャー。

  • SGAustria Pte. Ltd.
    世界で唯一硫酸化セルロースベースのカプセル内に細胞やバクテリアを 内包し、長時間保管や内包時増殖を可能にするベンチャー。

  • NDR Medical Technology Pte. Ltd.
    外科医が患者体内を正確かつ迅速に把握し、低侵襲で腫瘍生検などを実 施できる自動ニードルターゲティング(以下:ANT)システムを開発する医 療機器ベンチャー。

  • SG Innovate
    2016年にシンガポール政府によって設立されたディープテック領域に特 化したVC。これまでシンガポールを中心とした80以上のスタートアップに 投資。

【DAY3】Eco Tech

  • SEEDs Capital
    2001年に設立された東南アジアで最も活発なベンチャー投資機関。シン ガポールのディープテック・エコシステムを支援する政府系ファンド

  • Hydroleap Pte. Ltd.
    有機物や懸濁物質を含む排水を処理する電気処理ユニットを提供するベ ンチャー。

  • ceEntek Pte. Ltd.
    親水性のカーボンナノファイバーを配合した超高機能コンクリートを提供す る素材ベンチャー。

  • VFlow Tech Pte. Ltd.
    高効率なバナジウムレドックスフロー蓄電池を開発するベンチャー。

【DAY4】スピンオフベンチャー

  • A*Star Central
    シンガポール政府系研究庁の技術シーズのスピンオフ促進組織。

  • NUS Enterprise
    National University of Singaporeの研究成果のスピンオフ促進組織。

  • NTUitive Pte Ltd
    Nanyang Technological University内の研究成果のスピンオフ促進組織。

  • JAH Tech Pte Ltd
    近くに置くだけで水を分子間力を変えるアルミニアウムセラミック合金開発ベンチャー。

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