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『スペースロマンサー』第19話 探索計画

二人はコクピットルームのミーティングエリアに移動し、改めて今後の探索計画について話し合うこととした。
「これからのプランはあるデスか」
とジローがノヴァに尋ねる。

「もちろん。優秀な探検家は常に先を考えて行動するものだよ、ジローくん。」


「うひょー!
そのとおりデス!ワタシもいつも次のご飯のメニューを考えながら生きているデス」


「・・・。
ジローの救出に向かう道中も環境のチェックは行ったんだ。」
とディスプレイを操作しながら答えるノヴァ。

「マスターがカッコをつけられるのも私のサポートのお陰です。この私が収集したデータを基に割り出せる範囲での資源の推定分布図を作成しました。必要な資源の半分ほどはこの分布図内で収集することが可能と予測されます。」
自身の成果をことさらに強調するイブ。


ディスプレイにマップの一部とマーカーが表示された。

「それにしても、どうしてこの星の地図があるデスか?」

「上空から記録していた映像を基に作成してました。作成できたものは、その際に記録ができた範囲に限られます。また、一部正確でない部分もあります。」


「それでもすばらしいデス!こんなすごいAIは初めてデス!」
驚いた様子で、イブをほめるジロー。

「そうでしょう。そうでしょう。もっと崇め奉りなさい。」
スピーカーから聞こえるイブの声は誇らしげだった。

この自意識過剰ぶりはイブが起動し始めたときからのものであり、もはやノヴァとしては慣れっことなっていた。

確かにイブは太陽系の人工知能の水準から見ても遥かに高いレベルに有るのも事実である。

ノヴァの父オーデンによって作りあげられたイブは、そのプログラムや設計思想がブラックボックスになっている。

そのため、いかにして、これほど豊かな感情を持っていると思わせるようなやり取りが可能なのかは、謎に包まれている。


一方で、この程度のタスクであれば通常の人工知能でも実行は可能である。

ひょっとしたら、ジローの星では人工知能の発達は限定的だったのではと考えるノヴァ
「ジローの船のコンピュータには汎用型のAIは搭載されてないのか?」

「船にはサポート用のコンピュータだけデス。多分。
ワタシの星ではAIを育てるのをがんばっていないデス。」

ジローの故郷が戦争中心の文明であることを思い起こすノヴァ

「そうなの?優秀なAIがサポートしてくれたほうが戦いやすくなるんじゃないのか?」

「前はそういうときもあったみたいデス。でも、AIやレーダーを邪魔するものができたら、みんな使いものにならなくっていったみたいデス。」

「なるほどね。それで技術を発達させる必要性がなくなったわけだ」
必要性の薄い技術は淘汰されるということであり、ノヴァは文明間の技術発展の差異に軽い興奮を覚えた。

「そうデス。その分、ソルジャーであるワタシ達の能力を高めるようなものが育ったデス。肉体労働は任せるデス!」


ジローとの出会いにより、新たな世界に触れることの楽しさを改めて感じたノヴァ
「よしきた!まずは物資をローバーに詰め込むぞ!」
逸る気持ちに押されるように準備に取り掛かるのだった。

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