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都市型交通のデジタル化事例①(ニューサウスウェールズ交通)

海外からの優秀な労働力や多くの観光客を魅きつける上で安全で快適な交通網の整備は非常に重要な要素であると言えると思います。ニューサウスウェールズ州では同地域の鉄道・バス・フェリーの運行や道路網の管理などを担うニューサウスウェールズ交通が設立され、25,000人の従業員が州内全域の交通サービスの大部分をカバーしています。

同社はセンサーやカメラを利用して都心部の歩行者や自転車の安全を監視するなど様々なデジタルプロジェクトを推進していますが、その中でも巡回バスに関する取り組みは日本でも検討の余地はあるなと感じています。バスの各停留所に設置したWiFiアクセスポイントの使い方が特徴的で、Open Roamingでシームレスなインターネットアクセス環境を提供しているのですが、それだけではなく利用者数をカウントし、混雑状況をリアルタイムに把握しています。

この混雑状況に応じて稼働車両数を増やしていくというダイナミック・サプライ方式を採用しています。またダイナミック・デマンド方式(要は待合客同士の自動配車サービス)も実証しており、それぞれの方式を実装した場合の利用者の総所要時間やバス停での待ち時間削減にどのくらい寄与するのか近隣の高等教育機関と共にシミュレーションしています。同レポートによると18%の削減効果があるとされており、将来的なMaaSへの移行の参考とされているそうです。日本国内においても東海道新幹線も2028年を目処に自動運転になっていくニュースも出るなど都心部の交通網がMaaSシフトしていくことは十分に考えられますし、交通会社としても人手不足の解消といった構造的な問題への対応につながるのではと期待しています。

https://alln-extcloud-storage.cisco.com/Cisco_Blogs:ciscoblogs/5c0a6ea91edbb.pdf

更に稼働する車両にはカメラやセンサーを搭載しており、運行時のデータを収集しています。特にバス車両の揺れを検知することで複数の車両が同一箇所で揺れを検知した際には道路の路面状況の確認を行なっているとのこと。これまで多くても年2回の道路状況の監視をリアルタイムに行うことで道路管理の効率化を行うと共に、利用者へより質の高いサービス提供に繋げることを目的にしています。日本では道路管理を行う事業主体者(国・自治体)と交通機関が異なる点が難しいかもしれませんが、こうしたニーズは日本でもあるはずです。すでにインバウンド需要も回復基調にありますが、2025年の大阪万博や世界陸上、2026年のアジア大会に向けてうまく取り入れていきたい視点です。


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