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【林業日記20】木を伐るだけが林業じゃない。

「林業やりたいです!」という多くの場合、林業現場で働いて、木を伐って売って、それで生計を立てるというケースが多いかと思います。

なぜかというと、そのイメージが先行しすぎているから。

「林業をやりたいけど体力的に自信がないから、林業に関わるものとして、他にどんな仕事があるか?」というのは、よく聞かれる質問でもあります。

私も林業をはじめて1年目のペーペーですが、それでもこの世界を突き詰めていくと、林業は「伐る」という仕事以外にも無限に、多様な仕事のあり方があるということを感じ始めています。

そもそも、林業とは循環してこそ成り立つ産業

今、私たちが木を伐って生計を成り立たせることができるのも(他の仕事と組み合わせて収支を合わせてはいるものの)、先人の方達が植えて、管理をしたからこそ、仕事をすることができています。

今働けているのは、先人が植えた木があってこそ。

ハゲ山しかそこにないのだとすれば、まずは木を植えることからはじめないといけないし、その木を育てて売り物にするまでは何十年もかかる話で、自分が生きている間にできる仕事も変わってきます。

田舎に暮らしていると、森林資源が無限にあるように錯覚することがありますが、そうはいっても、そこにある「木」を伐ると、当たり前ながらにそこにある「木」はなくなるわけで、無限に資源があるわけではありません。

そういう意味で、今自分たちが伐れる木があるからと安易に「伐って売る林業」だけをするのではなく、やはり自分たちが今、先人たちからの恩恵を受けているように、後世にもつなげていく必要があると考えます。

後世につなぐ森にするには、やはり伐るばっかりではなく「植える」ことが必要になってきます。

そこで今月3月上旬に、愛媛の菊池俊一郎さんという林家の方を講師にお招きし、地元で植え付けと挿し木の勉強会を、私たち夫婦林業ヤドリギが主催して行いました。

木の伐り方から、森づくりの考え、特殊伐採の技術的なことから、林業に関わるさまざまな分野において、夫婦で勉強をさせてもらっているのですが、「育てる林業」という分野でははじめての勉強会。


ドキドキしながらこの日を楽しみに待っていました。


計2日間の講習会で、1日目は9時から16時まで座学。2日目は現場実習という形で実際に苗を触って、その植え付けを行いました。


今回は、せっかくなので、そんな講習会で菊池さんから学んで印象的だったことを自分の脳内整理を兼ねてアウトプットして記録しておきます。

初日はまず座学をみっちりと!


現代の林業だと、木質バイオマス用の材として良質ではない木でも売りに出すことができます。

それはすなわち一昔前と比べると、現在の林業は山に返す要素が少なく、肥料分としてはどうなんだろうという話が出ていました。


確かに畑みたいに特別な肥料をわざわざ持ち込んできて漉き込むなんて、広大な面積が当たり前な山林において、無茶があるので、やっぱりそこはあるものを使いながら肥料にするのが有効な方法。


たとえば、それは丸太の腐朽したものだったり、枝葉、あるいは下草だったり。

さらに植え付けとなると、林業では苗木が2種類あるそうで「裸苗」と「コンテナ苗」に分類されます。

一般的に使われているのは「コンテナ苗」。

その理由としては、たくさん植えやすく、活着もしやすい。けれど、巻き根が多く枯れてしまう木も一定数あるそうな。

一方の「裸苗」は植えるのに時間がかかるし、生産量も年々、減少傾向にあるのですが、こちらの方が木にとってはいい苗…というのも、植えられたときの根茎の形が、その後成長していく木の形にも大きく影響してくるんだそうです。


確かにこの話は他の植物でも聞いたことがあり、木を支える「根」の存在はめちゃくちゃ重要な部分だからこそ、木の根の形を意識して植えられる裸苗、利便性を考えると淘汰されてしまいそうですが、なんとかどちらも選択肢として残っていってほしいなあと思ったのでした。

どうしてもたくさん植えなくてはいけないような場合は、やっぱりコンテナ苗が便利だろうし、どちらも一長一短だから、甲乙つけずに、そこは苗屋さん、がんばってくれ…!と思うけど、そういう意味では、裸苗を応援したい、いや、むしろ個人的に裸苗屋さん目指すか!!!とかそんな話を夫ともしていました。(これ以上やること増やして大丈夫なのか…!)


それがこの先どうなっていくかは未定ですが、そんなことはさておき、その後、「実生苗」と「挿木苗」の話もお聞きしました。


その話もすごくおもしろかったのですが、この林業日記第20回がハチャメチャに長文になってしまいそうなので、今回は割愛させていただきます。


とにかく、これだけ文章を打ちながらも気持ちが興奮し気味に、楽しい気持ちになっているほど、この世界は奥深いのです。さあ、木を植えたことがない人は今から木を植えよう。

そんな盛りだくさんな知識を詰め込んでもらった翌日、実際に山へいって、植え付け方法を学びました。

今回の現場はなんと、私たち夫婦林業ヤドリギが自分たちではじめて購入した持ち山の一角!

だからこそ、夫婦共々、自分たちで管理した山に新たに木を植えて育てていくことに、ものすごく気持ちが熱くなりました(笑)

自分の山にはじめて木を植える夫

裸苗は先述した通り、根の調整がしやすいので、放射状に根を広げ、一本一本植え付けていきます。

ヒノキの場合は葉っぱに裏表があるので、斜面を見ながらその裏表の向きも考えて植えないと、根曲りの原因となったりすることもあるそうです。  


もちろん、そのときの気象条件だったり、環境によってもそういう状況は起きると思いますが、しかしながら、その要因として、人の植え付け方も入るとなると、なかなかのプレッシャー。


無知のまま植えて大きくなったときに「先人が雑に植えたんやな、この木」とか言われてしまったら、先祖として顔が立ちません。

参加者のみなさんと植え付け


そんなこんなで、講習会の参加者みんなで、ヒノキとスギの裸苗を20本ずつ植えていきます。


この後は、私たち夫婦の管理次第で、これらの木の生育状況は変わってくるので、あとはしっかりと様子を観察しながら、育てていきたいと思います。


今回植えた現場はなんと、今年からセルフビルドで家を建てる予定地まわりの山林で、いつもよく歩く道でもあるので、散歩がてらに観察ができるというのは、毎日の楽しみにもなるとワクワク!


またこの木の成長ぶりについては、noteの林業日記マガジンが続く限り、数年後に観察記録を記したいと思います。


無事に大きく育ってくれますように!

後日、子どもたちとも植林をしてみました。大きくなーれ。


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