見出し画像

【林業日記25】木を切れるのは植える人がいてこそ。じゃあ誰が木を植える?

「花粉症辛いから、スギ・ヒノキ全部切ってくれ!!!!!!」

という声がこの季節になるとよく聞こえてきます。かくいう私も重度の花粉症ではなくとも、鼻水くらいは毎年出てしまうこの季節。こうしている間にもくしゃみがまたひとつ。はっくしょん。ずるずる。

スギ、ヒノキを全部切って、違う樹種に転換すればいいという意見はたまに目にしますが、やっぱり材木として扱いやすいのはスギ、ヒノキで、昔から使われてきたのは理由があるのです。

木を切って、また木を植える。

言葉で言うと簡単ですが、広い面積の木々を管理するとなると、かなりの労力が必要となり、先を見据えて持続可能な林業経営ができる人でないと、なかなか木を植える(「再造林」といいます)ことに踏み込めない。

林野庁がまとめた資料によると、令和3年時点で伐木・造材・集材を行う労働者と比較すると、育林従事者は平成12年には4.2万いたのが平成27年になると1.9万に減少…!おそるべし右肩下がりなグラフ、ついつい二度見してしまいました。

林業人口減ってるんだし仕方ないんじゃない?って意見もありそうですが、前者の伐木・造材・集材に携わる人口は平成12年から最近までは2万人前後で推移しており、育林従事者に比べると、そんな激しい現象は見られません。

もちろん時代の流れもあるかと思いますが、木を切る人ばかりいても、木を植える人がいなくては、豊かな資源は後世に引き継がれないし、誰かがやらなくてはいけない仕事でもあります。

伐採され、何も人の手が入らない森は荒れ果て、土砂崩れなどのリスクもあるので、やっぱり一度人の手が入った山は人の手でまた復活させていくのが大切なのかなと、最近夫婦で造林の大切さについて話す機会が増えました。

18歳差の私たち夫婦、ただでさえ順番的にかなり早く先立たれてしまうことが見込まれる夫、1年でも長生きしてほしいけど、林業は死亡率が高い仕事で、それを生業として生きているからには最悪のことを常に想定して暮らしています。もちろん安全に仕事することを前提にはしていますが。

一緒に夫婦でチームを組み、伐採から搬出までしていると、ヒヤッとすることもあり、それに比べ、造林仕事は伐木造材仕事に比べると、機械を扱う機械も少なく、最低でも木が倒れるなんてことはないので、安全性は比較せずともお察しの通り、さらには素人でも参入がしやすいのが強み。

ただ、実際に造林仕事をやってみて感じるのは、なかなかしんどい!もちろん、身体も徐々に慣れていくのだろうけど。

今回私ははじめての造林のお仕事でした。

現場は急傾斜地で、ミッションは杉を1万本植えること。い、いちまんぼん…。

もちろん1人や2人でやるわけではなく、現場としてその数の苗木を植えることになっていたようで、下請けとして今回は夫婦で現場入りしていました。

自宅からは片道1時間半という、まあまあな山奥の場所で子どもたちを、保育所開園と同時に預けていくというドタバタ具合。

最近はセルフビルド家づくりで、山に入っていなかったこともあり、急傾斜地を登り降りしただけでもヘトヘトになっておりました。

中でも「地ごしらえ」と呼ばれる作業は大切な作業でありながらも、とにかく地道…!

「ま、まじでこれ1日やり続けるんすか…1日がとてつもなく長く感じる…」と思わずにはいられないくらいの地道な作業でしたが、自分が作業してきたところを終わって振り返ってみると、なんともいえない達成感があります。

なんとなくきれいになったのがお分かりやろか…
本当によく働く人である。

夫曰く「きついけどやりがいがあって、俺は好き」とのことで、改めて、この人はすごい人だなとも感じました。私はいつでも心にプータローを飼っているので、こんな発想が自分の脳内に浮かぶ日は遠いだろうな…。

地ごしらえを終えると、いよいよ植え付けです。

この植え付け作業は、楽しくて大好きです。しかしその反面、「自分が植えたところだけ枯れてしまったらどうしよう」というプレッシャーがなくもない。

さらに今回の現場は、植え付けた苗木に1本ずつ、支柱とカバーをつけていくのですが、それもまた少し手間がかかるもので、これは複数人いるからなんとかやれているけど、1人や2人でやっていたら、すぐ白目剥いちゃいそうだなとも思ったことでした。

植え付けをチームでどんどん進めていき、1日働き終えると、作業した山の一面すべてがニョロニョロだらけ…!(知らない人は「ムーミン ニョロニョロ」で検索。かわいいですよ)

この木を大きく育てるにはさらに下刈りなど、下草を刈る作業が必要になってくるので、1本の木を育て上げるのというのも、容易ではないことですが、しかしながら、この森がいつか子どもや孫世代が大人になったときに、「先人のおかげで資源があるね」と笑顔で活用してくれるなら、きっとこの苦労も報われるよねと、我が子の寝顔を見ながら時折考えます。

同居している85歳の祖母をみていても思いますが、人間は誰しも誰かの役に立つことが生きがいであり、それが自分の生きがいにもつながっているんだなあ。

私もまだ31歳、いや、もう31歳。2人の母となり、今は全力で育児と家事、あとちょっとの割合の仕事でヘトヘトの毎日で、自分のことなど考える余裕などないのですが、夫と2人3脚できるうちには、山にも携わりながら、誰かのために何かをすることも悪いことじゃないなと、感じる日々です。

誰かのために、何かやりたいなと思った方へ。

一緒に木を植えましょう。

それでは!

この記事が参加している募集

今日やったこと

仕事について話そう

サポートありがとうございます!私たち夫婦は山を買うのが夢なので、その資金に充てさせていただきます!