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性科学を学ぶ-その1-イントロダクション

性科学とは、人間の性的関心、行動、機能など、人間の性に関する科学的な研究である。

Wikipedia「Sexology」より(DeepL翻訳)

今回からはじめるこの一連の記事では、イギリスの性・関係性の心理療法家であるSilva Neves氏の著作、「Sexology the basics」を少しずつ区切って読み、Sexology=性科学について学んでいこうと思います。


なぜこんなことをするのか。

いま私は、セックスレスの予防や解消に効果がありかつ手に取りやすいサービスを、開発している身です。最近では1年をかけて、心理学科(学部)の卒業単位を取り、また家族相談士の養成講座を修了しました。こんな私にとって、

  • まず、一般的な心理学に加えて、性やセックスの体系的な知識が不可欠なこと。

  • 次に、体系立てられたセクソロジーの教科書が日本には無いこと。

  • そして、いくら優れた教科書であっても読むだけではおそらく身に付かないこと。

この3つの理由からです。

そんな折に、本書「Sexology the basics」の存在を知りました。英語版のみで和訳版はまだなく、ボリュームは230ページほど。2022年に発刊され、多くの最新論文が参考文献として参照されており、まさに最新の性科学が体系的に書かれた教科書だと感じ、手にとってみたわけです。

なお私は英語があまり得意ではないので、主にDeepLの機械翻訳に頼ることにしています(ただし翻訳結果に違和感があった場合は少し手を加えています)。読みずらい部分はお詫びします。また訳を含めた本記事の責任は、記事執筆者である私にあります。

「Sexology the basics」の目次

さて、まずは本書の目次を見てみましょう。

 イントロダクション
1章 性科学とは?
2章 セックスとジェンダー
3章 セクシュアリティ
4章 エロティシズム
5章 性の基礎的な生理学
6章 性的行動
7章 ポルノ
8章 リレーションシップ
9章 性的犯罪の
10章 性は健康にとって重要な要素

「Sexology the basics」より(DeepL翻訳)

これら、性やセックスに関する広範な領域をカバーする学問が、セクソロジーというわけです。

次回以降の記事では、1章から順に、各章内の「セクション」を記事の単位として、重要そうな考え方やキーワードを引用しながら、セクソロジーを深めていきたいと思います。

イントロダクション

さて以下、この記事の後半では、本書冒頭の「イントロダクション」(導入)を取り上げて、セクソロジーの領域へと足を踏み入れることにします。

本書「Sexology the basics」の位置づけとは

本書はセックスセラピーではなく、自己啓発書でもない。タイトルにあるように、セクソロジーの基礎知識、つまり私たちのセクシュアリティと親密な関係に関連するあらゆる側面に関する現代的な知識について書かれた本なのです。

「Sexology the basics」Introductionより(DeepL翻訳)

セックスセラピーとは、性やセックスについて悩み・問題を抱える人を、主にカウンセリングによって臨床的にサポートすることと言えると思います、が本書はそうではないと。また作者の経験や実績により主観的に書かれた自己啓発書でもないと。

この本は、現代の性にまつわる知識や研究成果が集められ、積み上げられた、「1つの学問としてのセクソロジー」の本だというわけです。

誰がセクソロジーを学ぶべきか

現代のセクソロジーの知識は、医療に携わる専門家だけのものであってはならないと考えています。誰もがもっと知るべきだと思うのです。私の経験では、人々が性生活や親密な関係に対して感じる苦痛の多くは、耐え難いほど不十分な性教育に起因しています。

「Sexology the basics」Introductionより(DeepL翻訳)

私事ですが、若いころに物理学と原子力工学を学びました。物理学は自然の理を解き明かしたいという人(代表的には研究者)のための学問であり、また原子力工学は、原子力発電所をはじめとして、原子力エネルギーを利用する設備を作ったり運用したりする人(メーカや電力会社で働く人)等のための学問と言えると思います。

いずれにしても、日常生活を営む一般の人からは縁遠い学問です。

一方、セクソロジーは専門家だけのための学問ではない、と著者は言っています。

sexの悩みや不安、sexに限らずともパートナーシップそのものに苦痛を感じ、”何とかしたい”と感じている。そのような「普通の生活を営む人」が直接に学ぶ学問でもある。このような理解になると思います。

セクソロジーにまつわる言葉(用語)を使うこと

言葉やラベリングが重要なのは、私たちの社会でしばしば語られることのない経験を正規化し、恥や欠陥の感覚を減らすことができるからです。言葉はまた、帰属意識や「家」(Home)の場所にもなり得ます。

「Sexology the basics」Introductionより(DeepL翻訳)

この箇所は本書の白眉の1つだと感じます。

本書ではこの後、性やsexにまつわる多数の用語が用いられます。ジェンダーを例にすると、Agender, Bgender, ・・・Transgenderといった7種類の用語が用いられます。

細かくラベリングすることは、例えば、”自分は多数派のジェンダーだけど、あの人のジェンダーはそうじゃなく●●だ。自分とは住む世界が違う”、等といったように、違うことによる「分断」を生むリスクをはらみます。

著者はそのリスクを認めた上で、細かくラベリングすることは、人の今まで語られなかった思いを掬い上げ、今の自分でいいとも思える。このメリットが勝る。だから言葉でラベリングしていくことを選択する、ということでしょう。

この箇所から、著者の誠実さが伝わり、この先を読み進めていこうと思った次第です。

著者がセクソロジーに情熱を注ぐ理由

本書イントロダクションの最後にはこう記されています。

私がセクソロジーに情熱を注いでいるのは、セクソロジーが私たちを人間らしく、生き生きとした存在にするための中心的な要素であり、互いに、そして私たちを取り巻く世界と有意義につながるためのものだと信じているからです。

「Sexology the basics」Introductionより(DeepL翻訳)

哲学的で少し難しいですね。

おそらく著者は、セクソロジーという学問それ自体に興味が向いている訳ではないのでしょう。そうではなく、セクソロジーを深めることが自らを「生き生き」としてくれ、また自らを「世界と有意義に」つないでくれる。そのことを、著者自身の個人的な経験(*)から強く実感している、だから情熱を注ぐんだ。という思いなのだと理解しました。

*著者Silva Neves氏は、自身をゲイであり、かつては自分と同じような人がいると知らずにいたそうです。その後LGBTQIA+のコミュニティに出会ったことで、人と人とのつながりが持つ癒しの力に驚かされた、と語っています。(https://www.psychotherapy.org.uk/psychotherapy-training/how-i-became-a-therapist/silva-neves/


以上、本書イントロダクションについてでした。

次回からは、より具体的に、第1章「性科学とは?」から読んでいきます。

最後までお読みいただきありがとうございました。


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