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性科学を学ぶ-その9-インターセクショナリティ

今回は、『Sexology the basics』[1] 1章-性科学とは何か?-から、『インターセクショナリティ(交差性)』を学んでいきます。


インターセクショナリティとは

あまり馴染みの薄い言葉なので調べてみました。

インターセクショナリティ(英: intersectionality)とは、個人のアイデンティティが複数組み合わさることによって起こる特有の差別や抑圧を理解するための枠組みである。(中略)
扱われるアイデンティティの代表的なものに、ジェンダー、セックス(身体的特徴による性別)、人種、社会階層や経済的階層、セクシャリティ、特定の能力や障害の有無、身体的特徴などがある。日本語では交差性とも呼ばれる。

Wikipedia「インターセクショナリティ」より抜粋 [2] 

つまり、男性だから(女性だから)うんぬん、若いから(年を重ねているから)うんぬん、というような切り口1つだけでは個人を語り切れない。そうではなく、複数の切り口(アイデンティティ)の交差する場所に、ひとり一人が居る。ということだと思います。

もう少し言うと、もしこのインターセクショナリティの概念を忘れると、様々なアイデンティティ1つ1つを尊重したつもりでも、それらが交差する場所にいる人は尊重できていない、という事態が起こりうる、ともいえると思います。

例えば、「うちの会社は女性の管理職もたくさんいる」、さらに「シニア雇用も積極的に取り組んでいる」と対外的にアピールしている会社があったとします。確かに、その企業では女性の管理職が活躍し、60代の人もイキイキ働いているかもしれません。しかし、女性とシニアが交差する「女性のシニア職」への待遇・雇用の機会は果たして用意されているのだろうか?

このような視点をもつことがインターセクショナリティという概念の役割といえるのではないでしょうか。

性領域のインターセクショナリティ

ここまでは一般的に捉えてみました。では性・sexにまつわる領域について、この概念をどう役立てればいいのでしょうか。挙げやすいものとして、性的マイノリティの視点があるのかもしれませんが、あえてここでは多数派であるシスジェンダー(異性愛者)の人々・カップルにとって、どう役立てればいいかを考えてみたいと思います。

例えば。身近なパートナーが、sexはあまり好まない、でもハード目なSMプレイに性的興奮を感じ、それをイメージしたマスターベーションは楽しんでいる(ようだ)、としてみましょう。

そして、たまにパートナーにsexを思い切って誘ってみても、あまり気乗りしない返事が返ってくる。

このとき、「マスターベーションはしてるのに、なんで自分とのsexはダメなのか?同じ性的なことなのに。もしかしたらもう自分に魅力を感じてないのではないか。」このようなモヤモヤが生じるかもしれません。

さてここで、インターセクショナリティ(交差性)的な考え方をするとどうなるか。1つずつの側面を別々に捉える、またはある1つのラベルを貼って解釈しようとするのとは違います。そうではなく、「パートナーは、sexはあまり好まず、SMプレイを想像したマスターベーションはする」と切れ目なく、ひと繋がりとして理解することにあたるのではないでしょうか。

このように理解してみると、sexに応じてくれなかったのは決して自分に魅力がない訳ではないと捉えることができたり、であればSMプレイの要素を二人のsexに取り入れてみる、あるいはパートナーにとってsexのネガティブな面を聞いてそれを避けるようなsexを試してみる、というような選択肢が生まれうるのではないか、そのように思います。


本来のインターセクショナリティの概念とは少しズレたかもしれませんが、大事な視点なので本棚にしまっておくようなことはせず、なるべく普段使いしてみたい考え方ですね。


最後までお読みくださりありがとうございました。

さて、本記事にてようやく「1章 性科学とは何か?」の最後まで来ました。次回からは「2章 セックスとジェンダー」に入っていきます。

参考文献
[1]Silva Neves 「Sexology the basics」Routledge社
[2] Wikipedia 「インターセクショナリティ

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