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【実例】記念品を渡すことをデザインした。その種明かしと結果

先日の話にはなりますが、僕が所属している会社の創業パーティが行われました。僕はその総合プロデューサーという役目を仰せつかり、この半年間鬼のように頭を働かしてきたのです。

創業パーティといってもおそらく一般的な会社がやるものとは大きく違います。イベンターに任せる訳でもなく、外部にブレーンを置く訳でもなく。頭となる部分はすべて内部で、実働が業者というようなスタイルで超大規模で行われるため、プロデュースと言えど、まぁ調整や交渉が大変でした。数多くの企画・調整・交渉・進行があり、小出しにそこで感じたこと、学んだこと、実践してみたことを書いていこうと思います。

今回は「記念品」について書きます。創業パーティ、創業記念ですから記念品というものは自ずと必要になってきます。そこそこのものを渡せば終わりということにすると、考えなければならないものは正直「金」です。いくらでどんなものを購入して配るかという部分に集約されます。

実際「記念品 パーティ」とかで検索するといろんな商品があるものだなぁと思うほどヒットしますし、専用のサイトがあるものです。ただ、正直なことを言えば、これらでヒットするいわゆる記念品をみて感じたのは「こんなもんよね」という感じでした。

その時の僕の判断としては

俺が「こんなもんよね」という感覚になってしまうのであれば、間違いなく多くの人が同じ思いをする。結果もらうことだけになってしまい、俺たちの創業記念という大きなイベントとしてのマークをつけることがぬるい。

でした。

そこから色々考える訳ですが、僕はUXデザインとして考えてみました。

ただ渡すだけの記念品でいいのか?なにか行動を起こせないだろうか?

結果として、パーカーという有名なボールペンに刻印をしたものを記念品とすることにしたのですが、「なんだ、ボールペンか」ではなく記念品の周りを設計・企てたわけです。行ったことは次のこと。

1:高級感のある重たさよりも気軽なかっこよさのものを選ぶ
2:創業パーティの時には配らず、後日配るようにする
3:同じタイプのもので揃えるが外装カラーを7色用意する
4:どれが手元にくるかわからないようにまぜる

おそらく周囲はさらっと考えていたと感じてたのかもしれませんが、僕の中では結構熟慮を重ね、シミュレーションを頭の中で行い、たどり着いた手法でした。それぞれちゃんとした理由があります。簡単にいうと次の通り。

1:高級感のある重たさよりも気軽なかっこよさのものを選ぶ
僕の所属する会社には、工場があります。工場の人たちは作業着をきて仕事されており、作業着には概ね左肩の部分にペンをさす場所があります。
ここに簡単にさせるものでないと使ってもらえないと考えました。コンパクトで軽いもの。そして、刺した時にスキッとするもの。
変な言い方にはなりますが、普段デスクワークをしてる人の景色よりも工場で働いている人が作業着からさっとボールペンを出す景色を浮かべながら商品を選択しました。
ただ、初めて手元に届く際には、演出ができるよう1本1本個装されたものを選んでいます。

2:創業パーティの時には配らず、後日配るようにする
記念品だし、ボールペン程度のものなので、当日配ってしまえばいいという考えもあるのですが配布は1週間後としました。それは、余韻を感じさせたかったからです。たいそうなイベントですが、やはり喉元すぎればなんとやらです。総合的にプロデュースする身としては、瞬間的な打ち上げ花火でわいわいというよりも、企業創業パーティという意味を少しでも継続させて感じて欲しいという思いもあります。
そこで、配布は後日として設計しました。箱が大量にとある部屋にあったのでそこへの詫びは大変でしたが・・・

3:同じタイプのもので揃えるが外装カラーを7色用意する
外装カラーを7色にしました。同じものでの一体感も必要ですが、色というのは個人の趣味もあります。ただし、何色あるというのは事前に話はしませんでした。それは次の4番目のためにです。

4:どれが手元にくるかわからないようにまぜる
実は1番のポイントがここです。どれが手元にくるかわからないように混ぜたのです。ここで発生させたかったのは会話です。

「あ、○色だ!」
「え?おれ、○色だった!」
「そっちのほうがいい、交換して」

他愛のない会話ではありますが、創業パーティという意味とこういう会話がボールペンでできることを重要視しました。実際、本人たちは何色のバリエーションがあるかもしらないので、周囲のいろんな人に声をかけます。

たかが記念品のボールペンですから、受け取っても箱から出さない人もいるでしょう。でも、この声をかけるという行為が発生することで見せ合うという意味で全員が封をあけるのではないかという目論見です。封をあけてくれさえすれば、フィジカルに体験をしてもらえる、もっと思い出として刻まれると思った次第です。

実際の状況

狙った通りの会話は生まれました。思いのほかその会話は広がって、わざわざ電話してきてくれる人もいたほど。個人的にはうまくいったデザインだったのではないかと思っていますが、まだ工場で働いている人たちの左腕の確認ができていないのです。

これができてるとある意味完全勝利かなと思っています。

もし気に入ってもらえたら嬉しいです。情報の発信とコミュニケーションについていろんなチャレンジをしていきます。どうぞよろしくお願いします!