結婚への決意を目前にした娘と母の揺らぐ気持ちは時代を超えて…★劇評★【舞台=あたしら葉桜(2018)】

 名曲「秋桜」を持ち出すまでもなく、結婚を前にした母と娘の心理というものはとても微妙なものだ。ましてや、お相手の結婚に対する本当の思いがまだ曖昧な時期だと、懐疑的な意見さえ出てきて、結婚自体がぐらぐらすることもありうる。大正から昭和に移るあたりの時代を舞台にそんな母と娘の微妙な感情を描いた岸田國士の戯曲「葉桜」をベースに、平成の母と娘の揺らぐ気持ちを描いた舞台「あたしら葉桜」が上演された。大阪を拠点に、劇作家・演出家の横山拓也が生み出す戯曲を上演しているiakuが東京で約2週間にわたって横山の4つの戯曲をまとめて上演する「iaku演劇作品集」の中で披露されたものだが、横山はこの作品にこの母娘をぐらつかせる現代的なさらなる不安定要因を加味しており、戯曲が反射するプリズムはより広範囲に飛び散っていく。今回、初めて、その原案となった「葉桜」のリーディングと舞台「あたしら葉桜」を立て続けに同じキャストで連続上演したことで、岸田の戯曲から横山が物語の幹として何を残したかや、母と娘という関係の時代を超えた意味合いにまで、観客に目を配らせることに成功しており、大きな意義があったと言えるだろう。演出は、iakuの横山作品の演出を多く手掛けている上田一軒。
 舞台「あたしら葉桜」は5月16~28日に東京・駒場東大前のこまばアゴラ劇場で上演されている「iaku演劇作品集」の中で、5月18日(19:30開演)、19日(15:00開演)、20日(15:00開演)、21日(19:30開演)、22日(19:30開演)の各日に上演された。公演はすべて終了しています。

 なお、当ブログでは「iaku演劇作品集」で上演された「人の気も知らないで」の劇評を掲載済みです。今後、「粛々と運針」「梨の礫の梨」についても劇評を執筆中です。順次掲載してまいりますので、今しばらくお待ちください。

★舞台「人の気も知らないで」劇評
http://blog.livedoor.jp/andyhouse777/archives/66282563.html

★舞台「あたしら葉桜」公演情報=iaku公式サイト
http://www.iaku.jp/information/iaku-works2018#hazakura

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