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恐ろしいほどの想像力と創造力をもって「忠臣蔵」の闇を切り裂いた…★劇評★【舞台=イヌの仇討(2020)】

 ものの本を読むと、浅野内匠頭の江戸城松の大廊下での吉良上野介に対する刃傷沙汰とその後の赤穂浪士による吉良邸討ち入りをどう処理するか、当時の幕府は相当苦悩したようだ。その沙汰に幕府の権威が掛かっていることに加え、あれほどの独裁的で封建的な徳川幕府の権力構造をもってしても、国民の声というものをとても怖れていたからだ。どちらも決してやってはならない暴力であり、命を奪うほどの処分が下されて当然なのだが、古来、判官びいきな日本人は複雑な視線で幕府という組織を見ていたのである。幕府とて下手な処分は下せないというのが本当のところなのだった。こうした構図を知って、もう一度討ち入りを見ていくとさまざまなことが分かって来る。後に史実ばかりではない「忠臣蔵」が創作されて人気を博し、国内随一のエンターテインメント作品として定着してしまったために、私たちがふさがれてしまった目もあるのだ。井上ひさしはそこを見逃さなかった。大石内蔵助の大それた計画、欺瞞に満ちた幕府、移ろいやすく残酷な国民…。井上ひさしは恐ろしいほどの想像力と創造力をもって「忠臣蔵」の闇を切り裂いてしまった。2017年に大谷亮介と彩吹真央を起用してこまつ座としては初めて再演した1988年初演の傑作戯曲「イヌの仇討」が再び上演中だ。(写真は、吉良邸に討ち入る赤穂浪士を描いた後世の絵ですが、舞台「イヌの仇討」とは関係ありません。イメージです)
 舞台「イヌの仇討」は1月20日から4月3日まで、中部・北陸・四国・北海道ブロックの演劇鑑賞会で巡演される予定。それに先立ち1月17~19日に横浜市泉区の横浜市泉区文化センター テアトルフォンテ ホールで上演された横浜公演はすべて終了いたしました。

 初日の幕が開いた横浜市泉区文化センター テアトルフォンテ ホール以外は一般的な演劇公演ではなく、全国各地に点在する演劇鑑賞会での公演です。それぞれに微妙な違いはありますが、演劇鑑賞会には3名以上のサークルを作って入会。毎月会費を払うことで年間4~7本の芝居が観られるという会です。この「イヌの仇討」が観たいからといってすぐに入会ができるかどうかは分かりません。入会方法などはご自身でお近くの演劇鑑賞会に問い合わせていただき、最新の残席状況についてもご自身でお確かめください。横浜公演はすべて終了しています。

 今回巡演するのは名古屋(名古屋演劇鑑賞会)、稲沢(いなざわ演劇鑑賞会)、岐阜(岐阜勤労者演劇協議会)、江南(尾北演劇鑑賞会)、豊橋(豊橋演劇鑑賞会)、知多(ちた半島演劇鑑賞会)、伊勢(いせ演劇鑑賞会)、津(津演劇鑑賞会)、額田(幸田演劇鑑賞会)、岡崎(岡崎演劇鑑賞会)、金沢(金沢市民劇場)、富山(富山演劇鑑賞会)、七尾(七尾演劇鑑賞会)、高岡(高岡演劇鑑賞会)、野々市(金沢市民劇場野々市鑑賞会)、砺波(となみ演劇鑑賞会)、魚津(魚津演劇鑑賞会)、高松(香川市民劇場)、徳島(徳島市民劇場)、鳴門(鳴門市民劇場)、高知(高知市民劇場)、松山(松山市民劇場)、函館(函館演劇鑑賞会)、札幌(NPO法人演劇鑑賞会北座)、旭川(旭川市民劇場)、釧路(演劇鑑賞会くしろ演劇みたい会)。=所在都道府県名は省略しました

 お問い合わせ先をすべて掲載することはできませんので、カッコ内の演劇鑑賞会の名称をインターネットで検索し、連絡先をお調べください。

舞台写真はこのサイトではなく、阪清和のエンタメ批評&応援ブログ「SEVEN HEARTS」でのみ掲載しています。舞台写真をご覧になりたい方は下記のリンクでブログに飛んでください。
★「SEVEN HEARTS」の舞台「イヌの仇討」劇評ページ

【注】劇評など一部のコンテンツの全体像を無料でお読みいただけるサービスは2018年4月7日をもって終了いたしました。「有料化お知らせ記事」をお読みいただき、ご理解を賜れば幸いです。

★舞台「イヌの仇討」公演情報(公演中と公演予定の作品を紹介するページであるため、「イヌの仇討」の情報が新しい作品に差し替えられている可能性があります)

 なお当ブログは、今回の舞台「イヌの仇討」の稽古場での取材をこまつ座から特別に許され、初日の約2週間前の稽古場リポートを掲載しています。また出演された大谷亮介さんと彩吹真央さんには単独インタビューに答えていただき、当ブログでしか読めないインタビュー記事として掲載しました。いずれも写真入りでお届けしています。今回の劇評とあわせ、ぜひともお楽しみください。

★阪清和のエンタメ批評&応援ブログ「SEVEN HEARTS」稽古場リポート「『国家と個人』『移ろう世論』、井上ひさしの真意への模索続くこまつ座『イヌの仇討』稽古場」=2020.01.09投稿

★阪清和のエンタメ批評&応援ブログ「SEVEN HEARTS」【インタビュー=演劇⑤】 大谷亮介(俳優)&彩吹真央(俳優) こまつ座第130回公演「イヌの仇討」出演=2020.01.11投稿

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