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命の連環描く名作戯曲に新たな魅力、きらめく個性と自然な演技…★劇評★【舞台=まほろば(2019)】

 男たちはすべてがばらばらに分かれているのに、女性同士はすべてがつながっているように感じる時がある。それも家族や友達や同僚などといった小さなレベルではなく、地球上のすべての女性がつながっているのではないかと感じるほどのレベルでである。それは命のつながりにも似て、とても有機的で、常に新しいものを生み出す力に満ちていると言えるだろう。男から見れば不思議なそんな女性同士のつながりを感じさせてくれるのが、11年前の2008年に東京の新国立劇場で生み出された劇作家・演出家、蓬莱竜太の戯曲「まほろば」だ。日本演劇界が誇るマエストロ、栗山民也の演出によって、当時若手の作家だった蓬莱が大きな成長を遂げるきっかけとなった作品で、翌2009年に発表された劇作家の登竜門「岸田國士戯曲賞」を蓬莱にもたらした。栗山の演出によって新国立劇場で再演されているが、今回はキャストを一新した上で、新たに「劇団チョコレートケーキ」の主宰者で演出家・俳優の日澤雄介によって演出され、さらなる魅力が引き出された。有機的なつながりはそのままに、女性たちの人間的なたくましさや生きざまのしなやかさが磨き上げられ、さらに現代的な現実感が浮かび上がることとなった。厳選された新キャストたちの演技は自然さの中にも個性のかけらがきらめき、この戯曲に再び命が吹き込まれたことを祝福しているかのようだった。(写真は舞台「まほろば」とは関係ありません)
 舞台「まほろば」は4月5~21日に東京・池袋の東京芸術劇場シアターイーストで、4月23~24日に大阪市の梅田芸術劇場シアター・ドラマシティで上演された。公演はすべて終了しています。

★舞台「まほろば」公式サイト=公演はすべて終了しています

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