単に優しさの表皮を被るボタニカルな物語とは一線を画している。またひとつ宇吹萌は新しい場所を獲得したようだ…★劇評★【舞台=咲く(2019)】
植物にモーツァルトの音楽を聞かせると味が良くなるとか、生育が速くなるとか、色つやが鮮やかになるとか、そんなふうに言われることは決して少なくないが、考えてみれば植物は生きもの。生きものなのだから、たとえ知性や頭脳はなくても細胞という高度な受感体があるわけで、音楽や空気などが植物本体に何らかの影響を与えることは想像にかたくない。人間の行動や環境の変化に何も感じていないはずはないのだ。気鋭の劇作家・演出家、宇吹萌(うすい・めい)が率いる演劇企画集団「Rising Tiptoe」(ライジング・ティップトー)が9月に上演した最新作「咲く」は、そんな植物たちの内なる思いを舞台上に充満させながら、人間社会の中で展開していく彼らの「花生」を批評精神たっぷりに描き出す秀作。宇吹の持ち味であるシュールでアイロニックな味付けも絶妙にまぶされているため、単に優しさの表皮を被るボタニカルな物語とは一線を画している。またひとつ宇吹は新しい場所を獲得したようだ。(写真は、舞台「咲く」の一場面、写真提供・Rising Tiptoe)
舞台「咲く」は、9月3~8日に東京・下北沢のザ・スズナリで上演された。公演はすべて終了しています。
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★舞台「咲く」公演情報(予約ページにつながりますが、公演はすべて終了していますので、チケットは予約できません)
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