庶民のどうしようもない怒りと鬼気迫る生きざま、死にざまを鮮やかに描き重層的な作品に…★劇評★【舞台=斬られの仙太(2021)】
幕末の志士たちの熱き血潮の物語や、明治維新の劇的な時代の変革を見せつけられているため、私たちはどうしてもあの幕末という時代にスマートでロマンチックなものを感じてしまうが、実は幕府はボロボロで機能停止とも言える状態に陥り、都市には暗殺集団が跋扈し、人心は退廃の極致に。農村は年貢の取り立てなどで荒廃しつくしていた。つまり江戸時代の秩序である封建制度やサムライ社会といったシステムのすべての矛盾が最高潮に達した時代なのである。どのように時代が変わるのか誰も予想できず、列強国によって日本は植民地になってしまうのではないかという危惧もぬぐいされなかった。誰も10年先の自分を想像することができない時代だったのである。日本が生んだ稀代の劇作家、三好十郎がそんな時代の地方の庶民のどうしようもない怒りと、鬼気迫る生きざま、死にざまを鮮やかに描いた舞台「斬られの仙太」がこの4月、東京・初台の新国立劇場小劇場で上演された。気鋭の演出家、上村聡史の意欲的な創意が、主人公が剣客へとその身を転じていった過程そのものが幕末という時代の矛盾を鮮やかに映し出すと同時に、単なるストイックな「剣の道」の追究に収斂していかない「剣を持つ意味と修羅」までを感じさせてくれる重層的な作品に仕上げていたことをまざまざと見せつけてくれた。(画像は舞台「斬られの仙太」とは関係ありません。イメージです)
舞台「斬られの仙太」は、4月6~24日に東京・初台の新国立劇場小劇場で上演された。当初の予定では25日まで公演が予定されていたが、新型コロナウイルスの感染拡大による東京都への緊急事態宣言の発出により、25日の公演は中止になり、24日が千穐楽となった。公演はすべて終了しています。
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★舞台「斬られの仙太」公演情報=公演はすべて終了しています
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