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【雄手舟瑞物語#29-インド編】ワラナシからカトマンズへ(前編,8/21-22)

ワラナシで5日間過ごした後、ネパールに向かった。旅の相棒のチカブンはヒッピーの聖地ーいくつもあるがーポカラに行きたいと言っていたが、僕に合わせてくれて、まずはカトマンズに行くことになった。ーエベレストが見たかったのだ。

僕らはバスでインドとネパールの国境の町スノウリに向かった。乗客はほとんどが世界中から集まってきたバックパッカーたち。スノウリまで約9時間。悪路を往く。

僕は2日前くらいからお腹の調子が悪い。沐浴のせいなのか。でもチカブンは何ともない。でも僕は沐浴したときに少し切り傷があった。そこから何か感染したのかと従来の心配性が顔を出したが、胃が少し痛むくらいで問題ない。なるべく忘れようと思った。

バスで揺られる中、お腹が下る。冷や汗をかく。どうしようもないので、運転席まで行き、「お腹が痛いのでバスを止めてくれ」と頼む。まだ残っていた日本から持参したトイレットペーパーを掴み、バスを飛び降りた。

皆が「ん、どうした?」という表情でバスの中から目で追いかけるので、20mくらい後方まで走っていき、道路の端で用を足した。

その頃から寒気と腹痛が酷くなってくる。バスの振動が胃に響き、切れるように痛い。歩こうと一歩踏み出すだけでも胃が痛む。日本から持参したバファリンは飲んでいたのだが、全く効かず、痛みは増すばかり。チカブンが心配してくれて、途中たまたま見つけた薬局でドギツイ紫色をした鎮痛剤を買ってきてくれた。それで多少熱が収まった気がしたが、お腹の痛みは変わらない。

朝4時前、スノウリに到着する。インドからのバスはここまで。まだ真っ暗だ。僕らはイミグレーションが開くのを待ち、他のバックパッカーたちと一緒にインド出国の手続きをする。ネパールのビザを発行するのにお金がかかる。

知らなかった。もうお金がない。。

チカブンに「日本で返すから」とお願いし25ドルを借りる。もうおんぶに抱っこだ。何とか手続きを済ませ、痛むお腹を抑えながら、振動を与えないようにゆっくり歩いて国境を超える。

ネパール側に着くとバス乗り場があり、ここで今まで一緒だったバックパッカーたちもポカラ組とカトマンズ組に分かれる。ゆっくり休む間もなく、次のバスに乗り込みカトマンズに向かう。

高熱と切れるような胃痛を抱え、すでにバス移動9時間。ここからカトマンズまで約12時間。僕はとにかく胃に振動が来ないように、うずくまるような態勢で座って耐えた。

朝5時に国境から発ってから6時間。インド以上に道が悪く、痛い。熱は鎮痛剤のおかげで落ち着いているが、と言っても寒気は続く。乗客の何人かがブランケットを貸してくれた。

半分まで来た。もう少しだ。そう思った矢先だった。。

町でも休憩所でも何でもないところで、バスが急に減速し始めた。他の乗客たちも「どうしたんだ?」と言いながら顔を見合わせる。そして完全に止まってしまった。バスの運転手は何の説明もないまま、バスを降りて行ってしまった。窓から前方を見ると、他にもバスが何台か止まっている。

運転手が戻って来て、乗客のバックパッカーと話している。話が終わると彼は両手を広げながら、「こりゃ困ったな」という顔をして皆に話し始めた。

「ここ数日の大雨で、この先の川が増水して渡れないらしい」

(つづく)
※次回は明後日掲載予定
photo(cover) by Polos Opuestos

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