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『偶然SCRAP#25』Exit Through the Gift Shop by Banksy

2010年公開のバンクシー初監督の映画。本作はアカデミー賞の長編ドキュメンタリー映画にもノミネートされた。

バンクシーといえば本人がどう考えてるかは置いておきグラフィティをアートに押し上げた覆面グラフィティ・アーティストと見なされている。皮肉やユーモアを含めたメッセージをビジュアルと言葉で世界中の意味ある開かれた場所で残している。

そんなバンクシー監督の映画。あらすじは以下のとおり、

映像作家のティエリー・グエッタは覆面芸術家のバンクシーの存在を知り、彼に接近してドキュメンタリー映画を撮ろうとする。しかしバンクシーはティエリーには映像センスが無いことに気付き、逆に自分が監督して彼の映画を撮ることにする。(引用元 wikipedia)

冒頭はティエリーのインタビューから始まる。彼はアメリカの田舎町で服屋を営むフランスからの移民。こんなことを言う。

「ノーブランドの服をデザイナーブランドだと言って売ると何倍もの値段で売れる。この地域の流行に敏感な若者がこぞってやってくる。」

バンクシーはアートマーケットに辛辣である。辛辣といっても離れたところから直接的に攻撃するのではない。基本的にアートマーケットの規則(プロトコル)に則っている。そのプロトコルに則るからこそ同位相に相対するものを並置できる。そして二つの選択肢について鑑賞する人は考えざるを得なくなる。

そして、この映画の構成はハリウッドの三幕構成に則っている。一方、ティエリーが映画の中で制作した映像作品は構成も何もない。さぁ、どっちがアートなのか。もしくは、アートとはそもそも何だ。

最後に題名について。「Exit through the gift shop(ギフトショップを通って出口に出る)」

美術館のこととなのか、明確な答えは示されない。国の文化予算が削られたイギリスの美術館にとっては、少しの割合であるもののショップの売り上げは重要だ。アートはアートのために商品としてそこで売られる。

バンクシーはアートという半透明な武器を持って、一人一人の頭に問いかけ続ける。


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