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2020年4月の記事一覧

脱出

脱出

さてあの混乱した時間を
どう乗り切ればいいのだろうか
いつもわからなくて
どんどんひどくなって
僕は途方に暮れていたのだけれど

森の精霊からこっそり教わった
強力メソッドで
僕は宇宙へ飛び出したロケットみたいに
舞い上がった木の葉みたいに
飛び立った龍のように
ふと自由になった

誰もいなくていい
何も要らない
僕一人で抜け出せる
僕は大丈夫だ

呆気なく僕は助かった
君がいなくても生き延びた

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no

no

受け入れなくっていいじゃない
向き合わなくっていいじゃない
拒否したっていいじゃない
逃げたっていいじゃない
僕は生き延びたかった

何度もやってくる音が声が
僕を剥ぎ取ってバラバラにする前に
なにか見つけなくちゃ
誰か見つけなくちゃ

もがいて足掻いた先が
清浄の地ではないと知っていても
僕は生き延びたかった
生き延びてしまった

僕は君を受け入れない
向き合わない
拒否して逃げる
決して愛さな

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背中

背中

背中向けたら刺されるって
脅えながらじゃどこにも行けやしない
ナイフ持って貴方は僕を支配してる
その色のない瞳で何を望んでるの

真っ先に手を伸ばして
食べてしまった楽園の果実
貴方の祈りが届かないのは
まだ厚く偽りを纏っているから

誰が欲しいの
何が欲しいの

手に入れば入るほど餓えるの
それは海水を飲むのに似ている
潤すほどに枯渇してゆく
欲望に限りは無いものよ

人の心も駒のように思えるで

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忘れ物

忘れ物

懐かしいおもちゃ箱みたいな夢を見たよ
君もいてあの人もいてあの人もいた
僕は確かに彼等が好きだった
とても近かった

「傷ついた」って僕は言えなかった
いつも黙ってただ憎んでた
それを口にすればもっと酷いことが起こる
そんな世界だったから

もし僕が僕のために立ち上がって
彼等を信じるために口を開いていたなら
僕たちは今も「元気?」ぐらいは
言えたのかな…まだ言えるのかな
離れてしまった心と
途切

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心残り

心残り

郷愁の中に何かやり残した気がして
僕は立ち上がれずにいた
それはすっぽかした卒業式や
我慢した洋服
最後まで読まなかった参考書
友人に横取りされた恋
破り捨てた写真
そういったものに断片化されて
貼り付いて世界に漂っている

「もったいない」と誰かが言う
その人を満足させるために僕は何か
素晴らしいことに時間を使うべきなのだろう
例えば生産的な、例えば繁殖
それを誰が決める?
「もったいない」と言

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それは誰の

それは誰かの夢だった
君の見た夢
貴方が描いた都合のいい夢
叶えられない僕を責めた

僕は夢を見た
全てに勝る力を持って
もう誰にも脅かされない夢
世界を統べる力があれば
平穏を実現できると期待した

僕は誰の夢も叶えられない
誰の望み通りにもなれない
そう出来ない僕でいい
そもそも僕の夢じゃないし
暴力好きな人の不満は尽きない

僕以外の全ての夢に水を掛けたら
僕の望んだ平穏が手に入った
君は君

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ぽつり

ぽつり

ぽつり、君が言う
生まれて来なければ良かった、と
そんなに暗闇しか見えないかい
僕が傍にいるのに
そう言ったら君はまた
追い詰められるんだろう

ぽつり、君が言う
死んでしまいたい、と
それが救いに思えるぐらい
君は苦しいのかい
僕は君が好きだからまだ死ぬのはいい
そう言ったら君はまた
追い詰められるんだろう

ぽつり、君が言う
どこにも居場所がない、と
僕は木偶の坊だよ
ここにいたいと君に言って

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