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心残り

郷愁の中に何かやり残した気がして
僕は立ち上がれずにいた
それはすっぽかした卒業式や
我慢した洋服
最後まで読まなかった参考書
友人に横取りされた恋
破り捨てた写真
そういったものに断片化されて
貼り付いて世界に漂っている

「もったいない」と誰かが言う
その人を満足させるために僕は何か
素晴らしいことに時間を使うべきなのだろう
例えば生産的な、例えば繁殖
それを誰が決める?
「もったいない」と言ったその人は
ただ酔っ払っていただけなのだ

心残りが心の裡に潜んでいて
僕はどうも気持ちが悪い
肋骨の間が痛んで
泥のように眠り込んで
僕はやりかけの思い出に手を伸ばす

ガムやシールを丁寧に剥がして
洗って磨いて僕は驚愕した
思い出に過ぎないと思ったそれは
それは僕の

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