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忘れ物

懐かしいおもちゃ箱みたいな夢を見たよ
君もいてあの人もいてあの人もいた
僕は確かに彼等が好きだった
とても近かった

「傷ついた」って僕は言えなかった
いつも黙ってただ憎んでた
それを口にすればもっと酷いことが起こる
そんな世界だったから

もし僕が僕のために立ち上がって
彼等を信じるために口を開いていたなら
僕たちは今も「元気?」ぐらいは
言えたのかな…まだ言えるのかな
離れてしまった心と
途切れてしまった糸は多分もう戻らない

うまくやっていきたいと思っていたのに
うまくいかないことばかりで
うまくやろうともしないでいたのが
僕のせいだなんてもう責めないけど

みっともないって
憐れでくだらなくてどうでもいいって
きっとそう思われているんだろうな
何より僕は彼等を望んでいたのに
とても好きだったのに
それもついに言えなかった

いつだって全てが新しかったから
大切にすべきものが何かわからなかった
掌で溶けた雪が涙に見えても
痛みでしか気持ちが安らがなくても
黙ってやり過ごせば消えると思いたかった

「それ傷つくよ」
独り言でも僕が僕に許せていたら
今まだ声を聞けたかな
郷愁はいつだって優しいから
僕が悪い気がしてきちゃう

全部なんか受け入れられないよ
僕が背伸びしてるって気付いて欲しかった
独り占めしたいよ全部
一瞬でいいから僕だけのものでいて欲しかった

夢から出てきたキラキラ集めたら
胸の傷に詰め込んでいく
人は沢山いるから替えはきくんだよって
僕に最初に微笑んだのは家族だったよ

沈黙と静寂に心を馴らして
僕は真っ直ぐに立ちたかった
嘘も真実も同じ重さなのだと
光と闇の間で眠りたかった

君は僕のことを覚えている?
振り返れば驚くほど単純な世界
雨樋を伝って僕のうなじに落ちる雫に
君の残り香


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