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短詩集

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2019年1月の記事一覧

短詩集⑯

1.君のラブレターが着払いで届く 2.自尊心と引き替えに愛が手に入ると思い込む人間 3.いつでも誇り高く野良猫たち 4.次がある代わりはいるだから選べるそれが苦しみ 6.僕だけと言った君に僕以外見せないためにホラーストーリー始まる 7.あまりに即物的でかえって無欲に見えるナマケモノ 8.不可能に挑戦するのは勇敢だが霜の降りた体を暖めても無駄 9.「手遅れ」に出来るのは弔いだけ 10.損切りの上手い人間はお金持ちになるが感性はどうかな 11.君の「さよなら」が

短詩集⑮

1.幼子を抱き道で言い争うふたり ねぇその子が大きくなったら誰が怒鳴られるの? 2.「夫婦」という言葉が見せる光景に私は立ち竦む 3.幸せになったんじゃなかったの?イラつく彼女に構わない君 相変わらずだね 4.大きい子供のお守りはやめたんだ スプーン自分で取れるよね 5.理解力ピカイチの彼と和み成分たっぷりの彼女 パフェみたいに積んで食べてみたい 6.選べば手に入る贅沢に溺れていくのは悲劇か喜劇かドレニシヨウカナ 7.安静を言い渡され好きなだけ運動をサボる権利発生

短詩集⑭

1.兄から届いたブレスレット遺伝子の螺旋スクリューチェーン 2.「どうせ太陽月星ヒカリモノしか見ないんだろ」空のフィラーが夕焼けを見せてくる 3.呼ばれるままに生きて何が悪い 運命がもつれても心が燃えるから 4.君がそばにいると胸がざわめく理由「一つにはなれない」愛するほど思い知るから 5.求めるから足りない そう僕は求めている 君に君に 今ただ一人君だけに 6.寂しさのアピールに誰かの寂しさ利用する ペロリ舌出して 7.完全に僕を受け止めるあの人 欠乏が出発じ

短詩集⑬

「あいつ悪魔だよ」私の噂して シザーハンズだなんて思いたくない見て見て手が小さいでしょう? 私の中の何かが私を殺す前に走り出さなくては 時間守った私を褒めて「よく出来ました」 ここまでさせて褒めないで「出来たね」 首輪を引っ張られて悲しげに歩き出すワンコちょうちょを見てた 「かわいい」の功罪 チワワのフリフリの衣装に見る 「欲しい」誰にでも言わせてきたあの人「殺したい」私に言わせたの キズナ切り落とされて転んだ姿仁王立ちで見下ろす私を何とでも呼べばいい この

短詩集⑫

ひたすら意識的に細部を作り込む蒼井優の無意識が宿る表情に欲情する 「皆適当にバレる嘘つくんだな…」バレない嘘しかつけない僕はハンデ持ち 私を刺した人に「身体を大事に」と言われ 私は頭も打ったのか? 「どうせいつか嫌われるから」「損切り早すぎだろ」友の一撃 正面切ってフラれにいったあの日獲得した「不確実性」というキーワード フラれるのが怖くない時点で自分の脈もない 臆病者は治験で愛情を測ろうとする 賢者は愛の強度検査をしない 「その話聞きたくないって言ってもい

短詩集⑪

手遅れだから気付いただけ もう安全だから 人は計算が出来ないと彼女は言った 死ぬまで逃げ切ろうとする方法論の裏に磔にされた誰かの 膿んだ女の心は壁を無くし膨張を続け海ほどになる 動機は罪悪感と義理 どこまでも人間臭い私の生き方を笑えばいいのに 左脚でペダルは踏めるか?試せよドビュッシー 報いなど求めはしない 信念とはそういうものだ 貫け私が壊れるほど真っ直ぐに この心の土砂崩れ 感情のコストカットは妥当か 何に? プロセスに価値はあるか 飲み込めるなら 人

短詩集⑩

手馴れた仕草に傷つく 何もかも初めてみたいにして ただ好奇心を回して生きている 私を採寸するメジャーの音が耳障りで会話になりゃせん 自尊心の復讐としてはお釣りが来る 「代わりはいくらでもいる」そう私が私であることを誰も証明できない 言葉が孤独に辿り着き死に収束するのを迂回するように 終わらない物語を描き続ける 孤独は鯛のようなもので 骨を取ってから食べないと刺さるらしい お揃いが欲しくなった時 恋は斜陽に入った 飛べるのは心を翼と交換したから はじめての短編

短詩集⑨ 病棟にて④

二の腕がキリリとした彼女「スポーツやってましたか?」聞いてみたい 左手首に巻いたバーコード 私を管理して徹底的に 心を隠すようにせめて軽やかにあれ私の手脚と頭 「大丈夫ですよ」ベースラインを一歩も動かぬあなたの声に宿る静かな焔 自分で心臓を掴み出す裁断の痛み彼は知ってたから気付いた 共依存抱えた人間の信念をトレースする気にならない 私に「恥を知れ」まで言わせたあの人出世した 見込んだ人に厳しい私 どこにも行けなくていい ここにいられるなら 脈拍モニター欲しい私

短詩集⑧ 病棟にて③

「この下何も着てないの」ネタにするタイミングがない 「パンツは履いてていいんですよね?」再度確認 一人ベッドでラリって詩を書く 書けているのか 書けたら少し困るかも 朦朧とするのに眠りに落ちない脳から零れ出す言葉よ踊れ 「痛いよ、ごめんね我慢して」興奮しました 心当たりなくてもほっとする感染症検査 「一番大事な子がいいよ」重鎮を召喚 友達ありがとう 右も左もわからなくていい 見ればわかる歩いていける 私は人に欲しがるものがない どれもこれも幻 義務と義理以外

短詩集⑦ 病棟にて②

隣のベッドでリハビリ始まる 作業療法士は「おとうさん」のようだな ホテルより優秀なホスピタリティ 当たり前だ語源(のひとつ)だもの 車椅子は天国のよう カートに乗るのが好きな私はしゃぐ 何が癒されるって彼等の「責任感」 夕暮れのリバービュー見ながらここに住みたいと呟く 自販機で明日の朝までの飲み物確保ホクホク 手術中にリラックスしようとか思うのが間違いだ 痛いのは嫌だが麻酔も痛い 「今日は動かないでくださいね」その「接着剤が乾くまで触るな」的注意が嬉しいこの傷

短詩集⑥ 病棟にて①

ただ麻酔でラリるのだけが楽しみで 頼ってくれないの?ごめんね蛇の道は蛇に聞くタイプですねん 屠殺工場みたいな手術ゾーン 消毒液が冷たくて脚が何度もビクリ 付添はないの?病身の伯母を隠れ蓑に使う 聞き慣れた単語が半裸の私の上を飛び交う 神の采配or因果応報 前者にしとくか 外科医は性格悪そうな人がいい このまま麻酔よ醒めないで永久に 館内放送ライトの呼び出し平和だな 絶景リバービューの談話ゾーン 前回麻酔でラリった話が手術スタッフにウケない BGMの好み

短詩集⑤

1.忘れていいよ私のこと一昨年の紅白みたいに 2.忘れないで僕のこと三単現のsみたいに 3.「寂しいからじゃないただ必要なだけ」十五歳の宇多田ヒカルが言い切ったのに私たち何なんだろう 4.「必要」なんて言われたら一目散に逃げ出すCHEMISTRY解散 5.朝食以外何もかもがまずかった 6.まだ好きとか言える隙間もなくなってほっとしてるの?いいえ寂しいの 7.アスカ締め殺そうとしたシンジの気持ち知った気がした 8.動かなくなった感情 AIだからちゃんと学習します

短詩集④

1.女湯でキレイな人見ると「いいのかな」と思う 2.脱衣所で閃く しまったノート持ってくるべきだった 3.背伸びしないと出来ないのはキスだけでいい 4.君の言葉が全て格言扱い 5.「痛くなかった?」って聞いて 優しい検査技師みたいに 6.「罪じゃない」のはどこまで?奢らせず触らなければ無罪と思ってた 7.皮肉を褒め言葉に 社交辞令を煽てに切り替えれば君は爆発的にモテる 8.「そこまでしてモテたくない」本当かな? 9.「プライド投げれる」というプライド 10.

短詩集③

1.緊急性が高まるにつれ人はアナログになる 2.「内緒だからね」と「内緒にしてね」の見かけ上僅かな差異 私を罪に売り渡すあなたの晴れやかな顔 3.「難しいからもっと抽象的に」自分がちょっと狂ってる気がする 4.「私の機嫌が取れたら女心の免許皆伝変幻自在」切実な脅迫 5.身軽すぎる私が背負う気圧 6.寂しさ色のパズルピースだけが無限増殖してゆく 7.思い出のコラージュを泣きながらパズルに見立てる 完成目指して 8.台風の目を確保する 9.長年不可解な歌詞の意味が