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失いたくないもの ~AKB48『あの日の風鈴』~

この曲は、AKB48の27thシングル「ギンガムチェック」のカップリング曲で、その27thシングル選抜総選挙で65位以下の圏外となったメンバー(ウェイティングガールズ)が全員参加している総勢171名による合唱曲となっています。
郷愁を誘う良い曲です。

1番Aメロ

夏休みには列車に揺られて
田舎のおじいちゃん家へ行ったっけ
山に囲まれ 蝉の声 遠く
縁側で昼寝をして夢を見たよ

主人公の子供のころの追憶から始まっていますけれども、もしかしたらこの主人公自身は都会生まれの都会育ちで、おじいちゃんが田舎に住んでいるということで、夏休みになると、その田舎を訪れては一夏を過ごしていたのかもしれませんね。
都会の生活とは違って、のんびりとした風景とゆったりとした時間の流れに身を任せて、子供ながらに癒されるものを感じていたのでしょう。

1番Bメロ

どこかを歩いてるのに
なぜか前へ進めずに
汗かきながら
焦ってたんだ

直前の歌詞に「縁側で昼寝をして夢を見たよ」とありますから、ここで述べられているのは、その夢の内容ということでしょうかね。
ここだけを見ると、何やら必死になっているけれども、なかなか結果が出せずに行き詰っているといった状況を示唆しているようにも受け取れますけれども、子供のころに田舎のおじいちゃんの家の縁側で昼寝をしているときに見た夢ですから、そういうことではないのでしょう。
おそらく、子供らしく純粋に何かに夢中になっている様が投影されているのではありませんかね。

1サビ

あの日の風鈴 ちりんと鳴って
風はそっと吹き抜けた
目には見えない 大事なものは
いつのまにか 古い記憶の中

「あの日の風鈴」とは、おじいちゃんの家の軒先に吊るされていた風鈴のことなのでしょう。
その風鈴の涼やかな音色が、追憶にふけっている中で思い出されてきたわけです。
その音によって、子供のころの気持ちがまざまざと蘇ってきたのではありませんかね。
「目には見えない 大事なもの」とは、子供のころに持っていたその無邪気な心や純粋な気持ちのことなのではないでしょうか。

2番Aメロ

ラジオ体操 好きじゃなかったけど
朝の空気は澄んでて気持ちいい
将来の夢 大人に聞かれて
そんな先のことなんかわからないよ

将来の夢とか聞かれても、小学生や中学生くらいだと、大人になる将来のことなど、はるか先のことのようにしか思えませんよね。
中には、しっかりと将来の自分を見据えている子もいるかもしれませんけれども、それは少数派であって、大多数の子供は、今目の前にあることに夢中で、将来のことなどまだ何も考えられないというのが正直なところなのではありませんかね。

2番Bメロ

時計の針はこっそり
知らぬ間に進んで
鏡の自分は 大人だった

「そんな先のことなんかわからないよ」と言っていても、気が付いたら自分もすっかり大人になっていたといったところでしょうか。
自分自身では、中身は何も変わってはいないと思うのだけれども、時の流れは容赦なくて、見てくれはどんどん大人になっていく。
そんな外見の変化に対して心がなかなか追いつけないという時期も、子供から大人になる成長過程ではありますよね。

2サビ

心の風鈴
聴こえたような
夏の空が黄昏る
すべてのものは変わってくけど
ずっと ずっと 僕は少年のまま

この主人公にとって風鈴の音は、郷愁とともに子供のころの気持ちを蘇らせてくれるアイテムなのでしょう。
けれども、この主人公は、すでに大人になっている。
「すべてのものは変わってくけど ずっと ずっと 僕は少年のまま」と言ってはいますけれども、これは字義通り自分はまだまだ子供だと言っているわけではないのですよね。
時の流れとともに、すべてのものは変わっていく。
そして自分も変わっていく。
直前のBメロの歌詞に「鏡の自分は 大人だった」とありますように、自分が大人になっていっているということを自覚しているのですよね。
そのうえで、けれどもいつまでも子供のころの無邪気な心や純粋な気持ちを失いたくないということを言っているのではありませんかね。

大サビ

どこかで風鈴 ちりんと鳴って
僕はまわり見回した
目には見えない 大事なものは
いつのまにか 古い記憶の中

ずっと ずっと 僕は少年のまま

風鈴の音によって呼び覚まされる子供のころの気持ち。
その子供のころの気持ちが、いつしか心の片隅に押しやられていることに、ふと気づかされるわけです。
最後のフレーズ「ずっと ずっと 僕は少年のまま」には、いつまでも少年のままでいたい、いつまでも子供のころの無邪気な心や純粋な気持ちを失わずにいたいという切なる思いが表れているのではないでしょうか。

ところで、この曲のリリースから11年後に、NGT48の9thシングル「あのさ、いや別に…」のカップリング曲として「僕はもう少年ではなくなった」という曲がリリースされているのですけれども、こちらの曲は、月日が流れた後の「あの日の風鈴」の主人公の心境が描かれていると言っても良いような曲になっているのですよね。

子供のころは、500円玉を一枚握りしめて夏祭りに繰り出すだけでやたら楽しかった。
けれども、大人になった今では夜店のどこでも何だって好きなだけ買えてしまえるのに、あのころのようにワクワクすることはなくなってしまった……。
そこで、自分はもう少年ではなくなったのだなと悟るわけです。

「あの日の風鈴」と「僕はもう少年ではなくなった」とをひと続きのストーリーとして聴いてみると、なかなか味わい深いものがありますね。

引用:秋元康 作詞, AKB48 「あの日の風鈴」(2012年)


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