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『花束みたいな恋をした』を観て婚約破棄のことを思い出した話

『花束みたいな恋をした』を猛烈にお勧めされたので、観た。事前にあらすじチェックはしなかったが、坂元裕二脚本かぁ、と思った。感情がぐちゃぐちゃになる予感はしていた。

※ネタバレあるから気をつけてね!

大学生の日常の中で偶然が重なって、一緒に過ごす中で楽しさや心地よさを積み重ねて、でも同時に小さなすれ違いも重なって、齟齬に気づいた頃にはもう向き合う気持ちも勇気も残っていなくて、別々の道に進みました、というお話。
エピソードの一つ一つがとても小さくて、でもとてもリアルで、とてもエモい。観ろってお勧めされた理由はとてもよくわかる。良い。良いぞ。

結局は別々の人生を歩むことになったけれど、一緒にいた時間は楽しかったよね、っていう話。だと思う。
価値観が違うのは当たり前で、でも二人で一緒にいることを選ぶのであれば、その違いを認めた上で、どう擦り合わせていくか、その上でどこに向かうかはお互いにコミュニケーションをとってこまめに確認していかないといけないのだろうけれど、大学生だしな、新卒だしな、しゃーないよな、そこまで人に向き合うのって難しいもんな、みたいなことを思ったりした。
好きなだけではどうにもならないことを知ったからこそ、次のパートナーとは同じ失敗をしないように気をつけられる部分もあるから。それでも、好きなだけであんなに突っ走れるのは、人と向き合う苦しさや怖さをあまり知らないからこそだし、そうやって大好きな思いのままに大好きな相手と楽しく過ごす時間は、あの時期あの自分だったからこそできたことで、それはそれで大事な思い出として記憶の片隅に置いておくといいよね。

…というところまでが、純粋に映画に対する感想。
以下、この映画をトリガーとして、自分の記憶が抉られた話をします。

  • イヤフォンを二人で分けっこして聴くの、音楽的にはアレなんだろうが、物理的な距離を近づける方法としてとても良いよね。今はワイヤレスだからな…当時でしかできないエモい体験ができてよかった。よかった。でも分けっこした相手とは付き合わずに終わったのだった。

  • 大学生の恋愛、一人暮らしの彼氏んちに居座っちゃうあるある。一緒に住むの超楽しい。楽しい。マジで楽しい。最初はお客様扱いだったのが、徐々に自宅みたいになっていくの、エモい。しかし相手は自分の家にあげない不均衡さもめちゃくちゃリアルで笑った。

  • 一緒に暮らすための準備、結婚を見据えて私の最寄り駅のところまで当時の婚約相手に引っ越してきてもらった当時を思い出した。ウキウキワクワクしていた時期だった。映画で浮かれる二人を客観的に見ることで、浮かれすぎて違和感や齟齬に気づけなくなっていたこと、その時気づいていれば対処法があっただろうことに思いを馳せてしまった。

  • 一緒に生活をしていると、一緒に居る安心感で肝心な話をしなくなってしまうんだな、というのもリアル。わかってくれるはず、伝わっているはず、で済ませてしまうのマジで良くない。良くないよ!ダメだよ!

  • もうどうしようもなくなったところで「結婚しよう」はダメだよ。遅いよ。一緒に住めば、結婚すれば、子供ができれば、で今まで向き合ってこれずに蓄積した齟齬が解決できるわけないんだよ…マジで…マジでやめろ…お前の勇気のなさを素直に認めた方がまだワンチャンあっただろよ…。

今まで記憶の隅に追いやっていた婚約破棄の記憶が、妙に鮮明に蘇ってきたのでした。
当時の状況を知る人は極々数名で、今更蒸し返してくるような人たちではない。けれど、自分の未完了の感情としてクソデカエピソードとして鎮座しているのは確かで、自分のストーリーとして語れるようにならないと、多分いつまでたっても婚約破棄した自分を否定したまま生きることになるのだろうなあ、語れるようになりたいなあ…でも今ではない(ボロ泣き)

私の婚約破棄も映画のそれと似た経過を辿っていて、好きの勢いにのって一緒に生活することを決め、お互いの家族に挨拶をする中で多少なりとも反対のような文言をいただき、それでも自分たちのことだからと生活場所を決め、引っ越し作業を一緒に進める中でちょっとなんかおかしいなって思って、これはどうなのかなって私の中に生じた一瞬の迷いを見逃さなかった母親によって、同棲も婚約も一気に解消になってしまったのだった。
母は元々私の話など碌に聞かないし、その母を説得してまで相手と向き合うほどの気力も感情も残ってなかったんだよなぁ…。
1ヶ月かそこらで10キロ近く痩せた。なんも知らない友達から「最近痩せて綺麗になったね!」って言われたけど、「えへへ」以上は話せなかった。家族以外の誰かと向き合うことも、有事の際に母親がしゃしゃり出てくることもどうにもできないまま、自分の一生は終わるのだろうと絶望したまま、相手から預かった猫の世話のためだけに生きていたのだった。


好きだと思ったはずの相手と向き合えなかった。
親に自分の意見を言えなかった。
付き合ってた時の楽しい記憶よりも、絶望感ばかりが強く残っている。
花束?そんなのあったかな…?

…くらいは書けるな。書けるけど、もうちょっと具体的に書こうとすると多分吐くな。もうちょっと覚悟を決めたら、別の記事としてお焚き上げで書きます。

坂元裕二脚本のドラマ、『カルテット』『大豆田とわ子と三人の元夫』でも似たような感じで感情がぐちゃぐちゃになり、今でもテーマソングを聴くと情緒不安定になってしまうのは、また、別のお話。

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