古代日本史専攻のわたしが見たケムリクサ(ネタバレあり)



※思いっきりネタバレ入ってます注意



ケムリクサ、本当に素晴らしかったですね。
同じ時代、同じ国かつリアルタイムで見れて良かった。直後は「何も言えねぇ・・・もう何も言えねぇ・・・(涙)」状態でしたけど三日経ってようやく落ち着いてきました。

ところで皆さん、予想は当たりましたか?
わたしが唯一当てた予想は「エンディングが声優バージョンになる」でした。後は軒並みハズレ。ななし説もハズレ。程度がひっくいナ!それに比べて考察班の皆様の鋭さといったら・・・・・・深い洞察に毎回度肝抜かれてました、ホントおつかれさまでした。

さて、
「ケムリクサ=古代日本や日本神話をベースにした物語」

というのは今となっては共通認識ですが、考察の中で出てきたのは結構後の方だったかな?と思います。最初は聖書とかギリシャ・ローマ神話の引用が多かったような。わかばがケムリクサを操作し始めた頃から神道モチーフ説がちらほら出てきましたね。七島で鳥居出てきたし。

日本古代史専攻のわたしとしてはこの考察は「楽しい!」の一言に尽きました。
現に今も、古事記日本書紀の記事を読み漁っています。普段は絵を描くけど古代日本に触れるのもわたしの「好き」なんですよねえ。

今までに読んだ考察を自分用にまとめると(あくまで一説ですが)

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地球文明の複製・・・国産み
ワカバとりり・・・伊邪那岐(イザナギ)と伊邪那美(イザナミ)
赤い木を作り出したりり・・・迦具土/加具土(カグツチ、火の神)
赤い木・・・八岐大蛇(ヤマタノオロチ)あるいは黄泉醜女(よもつしこめ)
わかばの防御・・・八咫鏡(やたのかがみ)
最終話のももちゃんのくだり・・・黄泉比良坂(よもつひらさか)
赤い木を倒したミドリの枝・・・七枝刀(ななつさやのたち)あるいは草薙剣(くさなぎのつるぎ)
わかばを守ったミドリちゃんの枝のかけら・・・勾玉
船の果て・・・天岩戸(あまのいわと)
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めっさ重なってる・・・・・・・・・。
もちろん、日本神話だけじゃなくて仏教、陰陽道、聖書、世界の神話いろんなものが合わさって出来上がってるんでしょうね。ここまでモチーフが出ていながら本編では出雲や淡路島がノータッチというのも面白い。

古事記、日本書紀は中学生の時から好きでした。
夢中で読んでいた学生時代も黄泉のくだりで悲しくなったものですけど、思うに、ケムリクサで先に死んだのはイザナミでなくイザナギだった。立場を逆にした物語だったんだろうなと。
青い壁で隔たれたイザナギ(ワカバ)を追いかけるイザナミ(りり)。
けれども分割一歩手前でりりが見たのは自らを苗床にしたワカバの姿。
この一連のくだりは、神話によく出る「見てはいけない」の禁忌破りだったのかなと勝手に思っています(黄泉から戻る途中にイザナミを見てしまうアレ)
現にりりとワカバは絶望によって引き裂かれ、ケムリクサと水によって転生(転写?)こそしたけれど記憶は受け継いでいない。
りりとりんは別物だし、ワカバとわかばもまた別物。

りんは自分の「好き」を見つけたけど、りりの「好き」は成就するどころか世界を壊し、大好きなワカバさえも失った。
ハッピーエンドの前に語られた「りりとワカバの悲劇の結末」こそ、ケムリクサという物語の神髄ではないかとわたしは思うのです。この途方もない負のベクトルがあるからこそ、六姉妹の軽妙さやシロの健気さ、最終話の王道すぎる展開が活きてくる。ほんと、すごい作品です。すごいっていうか、凄味がある。

語りすぎたのでこのへんにしますが、プログラミングの概念が出てきたのもまた興味深いなぁと思ってます。Excel関数すら怪しいわたしでも赤い木の成り立ちには身震いしたもんです。りりちゃん、恐ろしい子・・・。

いつか12.1話みたいな感じでアナザーストーリーも見れたらいいなあ……なんて気持ちもありますけど、しばらくは久々の日本神話熱を楽しみたいと思います(^^)