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オフラインとオンラインの「経験」という国境線

「これを買う」という明確な目的ではなく、「お菓子を贈る」というざっくりとした目的でECを利用したのは、そういえば初めてだったかもしれない。
オフラインで慣れ親しんだお店のオンライン利用で抱いたのは「誰もがオンラインを極めていくべきなのか?」という疑問。そして、オフラインからオンラインへの国境線をうまくまたげずにいるのは、お店側ではなく消費者側が持つ「経験」なのではないか、と気づいたお話。

消費者の「経験」を前提とした視点。

オンラインでの買い物は、オフラインでの「経験」が常につきまとう。
特に贈りものを探す場合、失敗したくない=おいしい経験をしたお店しか選択肢になりにくい。オフラインでの経験次第ということだ。

贈答用のお菓子は、よくデパ地下で選んでいた。しかしどこも休業中なので百貨店のオンラインへ。一覧画面でお店のラインアップは把握できたものの、何が買えるかはひとつひとつ訪問するまでわからない。15分あれば1フロアをざっと見て見当をつけていたような買い回りができない。諦めた(実際にいくつか見てみたけれど1ブランドあたりの商品点数が少なすぎたことも一因)。

次に、ひとつに絞ったお店のオフィシャルECへ。さすがの品揃え。しかし、ここでもまた「経験」によるストレスが発生する。
ラインアップのほとんどが、4個入り以上のセット売りなのだ。店頭なら1個ずつ買えたのに…。2人暮らしの人に、賞味期限が5日のどら焼き6つセットとそのほか詰め合わせはつらい。結局、どうにか無理になるかならないようなものを何度も選び直して注文した。

ECの役割をどのように設定するか。

今回の買い物では、「店頭だったら」という経験ばかりがつきまとった。ブランドの価値は商品だけがつくるものではないことは明らかだ。オフラインでファンを掴んでいた理由をオンラインに持ち込めなければ、経験によってオフラインでの優位性はオンラインでは仇となることがあるのだと知った。

今回利用したECでは、ニーズの設定が大量購入であることや手間のかかる少数対応はできないというお店側の事情は容易に想像できる。様々な理由は理解しながらも、店頭での経験を消し去ることはできず、店頭とECで同じサービスを無意識に求めてしまった。
店頭での経験がなければ、また違った感想を持ったのかもしれない。
普通は初めての経験にストレスを感じることが多い。しかし経験があるが故に抱くストレスが存在するとしたら、ECにどのような役割を持たせるべきだろうか。

オフラインとオンラインの国境線。

オフラインの良さをどのようにオンラインでも実現するか。商品を起点に、買い方などお客様の経験に多くのヒントがあると思う。
しかし、本当にオフラインの特性はオンラインに持ち込むべきなのだろうか。オフラインを得意とし、関係を築いてきたお客様をオンラインへ引き連れていく必要はあるのだろうか。

個人的には、その答えは微妙だなと感じた。
もちろん大変な状況であり、オンラインでの展開は必要であることは確かだが、オフラインが主戦場ならそれはそれでいいのではないか。
オフラインがオンラインに展開するときは、オンラインならではの新しい方法を考える必要がある。それは消費者側にあるこれまでの「経験」が邪魔をするからだ。売買という行為は同じでもオフラインとオンラインは全く別の土地であり、新しい期待を抱いてもらえるような取り組みに置き換えて取り入れていかなければ、どうしても「これまで通り」にはいかない。
何を持ち込むべきか、どのように活かせば経験に新鮮さを宿すことができるのか、何は手放していいのか。改めて考えてみる必要があると思う。

これまでのオフラインでの買い物体験を久しぶりに思い出して、こんなに買い手は自由だったのかと気づかされた。その逆でECに自由を感じる人もたくさんいるだろう。
この状況が前進したときに、新しい買い物体験のかたちが生まれるよう今の経験を大切にし、たくさんの人と経験を交換し合いたい。

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