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夏が溢れる

近年の四季、自分が思い描いている四季のそれとは大分剥離があるので、

現実的に好き
思い入れがある
概念的に好き

くらいのカテゴリ分けが必要になってきた。
ちなみに

現実的に好き:秋
思い入れがある:春、夏
概念的に好き:夏、冬
(ついでに)現実的に苦手:冬

ですね。
花粉症がひどいころは春は地獄だったのでいちばん苦手でしたが、近年は以前よりはよほど改善したため、感染症が蔓延る冬のほうがこわいです。


夏は大好きなはずなのですが、私は縁日でラムネを買ってもらってビー玉を押し込み小さな泡の冷たさに恋したことはないし、風鈴のそよぐ縁側でビニールプールの水しぶきを浴びたこともないし、夕暮れの神社の境内で友達と秘密の暗号を交わして別れたこともないし、夏期講習の帰り道に小さな商店の軒先のペンキの剥がれたベンチでアイスを半分こした友達もいないし、窓が開け放たれた真夏、青空のなか二人きりの教室で、白い制服と黒の髪のコントラストが眩しいはずなのに、そこだけ逆光を浴びたように陰りの表情を秘めて気怠げに笑っている君に、蝉の声に紛れて、このまま二人であの空へ逃げ出せればいいのにね、と囁いて戻れなくなった気持ちを抱え続ける人生も、なにもかも、何一つ存在しないのに、私の夏は実に豊かで豊かで、たくさんの存在しない思い出が積み重なりすぎて、夏がほんとうに、愛しくてたまらない。

なにか感じていただけましたら、よろしければ。よろしくお願いいたします。