韓国ドラマはケンチャナ(大丈夫)でできている
ケンチャナの汎用性
韓国ドラマを見ていて、なんて言葉をはじめに覚えるか、
つまり、一番よく耳にする、出てくる言葉は何か、ということだと思うのだけれど
最近見始めた母はまず、「ケンチャナ」を覚え、言い出した。
多分ほとんどの人がそうなのじゃないかと思う。
韓国語を新大久保にあるわりと有名な、ネイティブの先生が教える学校で三年ほど習っていたが、どのタイミングで「ケンチャナヨ」を習ったか覚えていない。
すでにドラマを毎日見ていたので、習う前から知っていたのだと思う。
韓国ドラマは「ケンチャナ」でできていると言っていいくらい、いろんなシーンであらゆる人間関係の登場人物たちが、ケンチャナと言い合っている。
アラッソ(わかった)とか、チンチャ(ほんと)とか、よく出てくる会話の言葉は他にもあるけれど(どれも「アラッソ?」「アラッソ」のように疑問と肯定、両方に使えるということもあり)とにかくこのケンチャナ、はドラマを見始めたらすぐに口にしてしまうくらい、よく出てくるのだ。
「大丈夫?」しかない
私がまだ小学生になってすぐくらいの時に、父親がパニック障害という病気になった。今でこそ、アイドルだって罹ってしまう病気として一般的にも認知されているけれど、当時はまだよくわからず「ノイローゼ」などと括られたり、身体的な症状が酷く病院で検査をしても、原因不明で長い間苦しむ人も多い時代だった。
まだ6歳とかそれくらいだった私にとって、父親という存在がある日突然、
とにかく心配の対象となった。
「痛い?」「苦しい?」どう声をかけていいのかわからなかった娘にとって、一番ピッタリというより、これしかない言葉が
「大丈夫?」だった。
以前、「サイコだけど大丈夫」のあらすじ紹介記事で書いたけれど、このドラマに出てきたOK(ケンチャナ)精神病院の院長の言葉に、思わず画面を止めて、見入ってしまった。
「大丈夫じゃないけど、大丈夫!」
唸りそうになった。本当にその通りだったから。
大丈夫じゃなくても、とにかく大丈夫しか選択肢はないし、何も言わないわけにもいかないからとにかく大丈夫じゃないのはわかっていてもこう聞くしかない。
大丈夫、以外の言葉がないのだ。
いつの間にか、私は口癖のように父以外でも身近な人には「大丈夫?」を連発するようになり、それちょっと嫌とか気になるとか言われたりすることもあった。そんなに頼りなく心配に見えるのかと誤解を与えたようだった。後から妹も全く同じことを経験したと知って納得したけれど。
もしかしたら私が韓国ドラマをこんなに観ている理由は、無意識的にこの「ケンチャナ(大丈夫)」の親和性にあるんじゃないかと思うくらいだ。
韓国ドラマには心の病を扱った作品が多いから「ケンチャナ」が頻出しているのかもしれない。
そんな私にとって、ある意味薬みたいな存在のドラマがある。
「大丈夫、愛だ」
もう、そのままストレートに韓国ドラマを表現したタイトルだと思う。
最初はその身も蓋もないタイトルにちょっと抵抗すらあった。
このドラマに出てくる登場人物たちは、
みんなアンケンチャナ=大丈夫じゃない
だからこその「大丈夫、」なのだ。どうにか傷を癒し進んでいこうとする。
このドラマは大切すぎてそう何回も観ていない。
ただ、いつでも見ようと思えば見れる、このドラマがいつでもそこにあるのだと思うだけで大丈夫になれる、プラシーボ効果も絶大な薬だ。
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