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今月のせとかわ Vol.3 優しい灯りのまち・矢掛


夜風が心地よい季節…もうすっかり秋ですね。
みなさんはこの秋いかがお過ごしですか?

瀬戸内のかわいいモノ・コト・場所を交代でご紹介する「今月のせとかわ」。今月紹介したいのは、岡山の南西のまち「矢掛」のこと。担当は、瀬戸内かわいい部のみなみです。

瀬戸内かわいい部の立ち上げから2年…。その間、岡山、倉敷、児島、福山などいろいろなまちを訪れましたが、実はずっと矢掛に行きたいと思っていました。その理由と矢掛で見つけた”かわいい”を今日はお届けいたします。

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矢掛は昔ながらの宿場町。江戸時代からの町並が残る歴史情緒を感じる場所で、白い蔵が立ち並ぶ街並が特徴です。

到着したのは日が暮れて空が紫になりはじめた頃。通り沿いには、オレンジの灯りがぽつぽつ灯りはじめていました。

旅人のような気持ちで歩いた夜の矢掛

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夜のまちは静かで人通りも多くないけど、白壁を照らすオレンジの灯りがあたたかくて、歩いてると気持ちいい。なんだか安心した気持ちになる。虫の音と夜風が心地よくて、お宿を探して歩く間なんだか本当に宿場町を訪れた旅人になった気分でした。

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この日滞在したのは「矢掛屋」さん。
まずは町の中心にある本館でチェックインをしたあと、少し離れた場所にある白壁の蔵を改装したお部屋に滞在させていただきました。

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訪れる前に調べて知ったのは、矢掛は世界ではじめて「アルベルゴ・ディフューゾ」に認定されたまちだということ。

アルベルゴ・ディフューゾとはイタリア語で「分散型ホテル」という意味で、まちに残された空き家を改装してそれぞれをフロント、客室、レストラン、ギャラリーにして、まち全体をホテルにする活動のこと。イタリアは日本同様に地震が多い国で、1980年頃に震災が原因でまちから人が離れ美しい村がいくつも消失の危機を迎えたそうです。そこで「空き家を活用して、昔からの美しい風景を残しながらまちを再生しよう!」とはじまったのが「アルベルゴ・ディフーゾ」という活動だそうです。

矢掛にも「かつては宿場町だったのに、人が離れ今ではまちに宿が一軒もない…」という時代がありました。そんなときに空き家や蔵を活用して宿を再生し、また人が集まるまちにしようという活動がスタート。その頃に矢掛を訪れたアルベルゴ・ディフューゾの方が「これこそ私たちの理想だ!」と感動し、矢掛をアルベルゴ・ディフューゾのまちと認定したのだそうです。

宿場町の歴史を持つ場所が、また新たに「宿のまち」として息づきはじめてるなんて…なんだか素敵だなと感じました。

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「あの人に会いたい」がその場所を訪れる理由に

翌朝目覚めると、ある人との待ち合わせの場所へ向かいました。
その人は、瀬戸内かわいい部の立ち上げメンバー・よしこさん。

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実は矢掛は、よしこさんの暮らすまち。

「岡山のいいものやおもしろい人をもっとたくさんの人に知ってほしい!」と県内各地を自分の足で訪問しInstagramで発信するよしこさん。せとかわの中でも人一倍フットワークが軽く、新しいスポットが話題にあがればすぐ行って感想を教えてくれたり、誰かが悩んでいたら駆けつけて話を聞いてくれたり…いつも誰かのために駆け回ってくれた彼女のまちを、一度自分の足で訪れてみたかったのです。

急遽訪問できることが決まったため前日のお声掛けだったのですが「会いに行くよ!」と快諾してくれて、朝出会った瞬間も笑顔で迎えてくれました。

矢掛の「かわいい」のかけらたち

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最初に訪れたのは「矢掛交流館」。地元のお土産が並ぶスペースの天井がかわいくて、思わずパシャリ。その一角で思わず手に取ったのが、季節のお花が押し花のように焼き込まれたお菓子。

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素朴で繊細でやさしくて、目にした瞬間ほろっと心がほどける気がしました。

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包み紙も、透かしがはいった繊細なデザイン。
佐藤玉雲堂さんの「彩(いろどり)」というこのお菓子、職人さんが自分の娘「彩子」さんが生まれた時にお祝いで作ったのがはじまりだそう。だから自然と優しい雰囲気がにじむのかもしれませんね。

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まちあるきをしていると、宿場町の名残と大正レトロがまざりあった建物が目に止まります。コロンとしたフォルムがかわいくてつい立ち止まっちゃう。こんなところで自分の小さな雑貨屋さんが持てたら、すてきだろうな。

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くるくる円を描くような植物のモチーフの向こうに昔ながらの蔵が見える。さりげないあしらいにも”かわいい”のかけらを感じました。

稲穂のあいだの小道を抜けて

よしこさんと会ったのは半年ぶり。

「久しぶりにゆっくり話したかったんです」

ということで、まずはカフェへ移動することに。矢掛の中心地にも「t2lab」「石挽カカオissai」など気になるカフェがありましたが、この日は車を10分ほど走らせた所にある「珈琲や」さんを訪れることにしました。

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稲穂が揺れる田んぼの向こうに古民家の屋根が見えてきたら、小さな看板を目印に曲がって、細い小道へ…。たどりついたお店の扉を引くと、なんだか急に時間の流れが変わったみたいに感じました。

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落ち着いた?ゆったりとした?なんていえばいいんだろう…なんというか、お店に入った瞬間、抱えてたものをいったんおろして「ゆっくり呼吸していいよ」と言ってもらえるような…そんな不思議な心地よさを感じました。

「どこでもどうぞ」の言葉に甘えて、穏やかな光が差し込む窓際の席へ。注文したミルクたっぷりのあたたかいカフェオレがまた優しくて、ほっと深呼吸。そうしてしばしの間、ふたりで話に花を咲かせました。

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お店の中にはレトロな家具や雑貨がたくさんあって「この雰囲気、とても素敵」なんて話してたら、店主のおじさんが「このレジスターは、むかし倉敷天満屋で昔使われていた……と、言われているんだよ」なんて、気さくに教えてくれました。ほんとかどうかはわからないけどね、とおじさんは笑ってつけたしたけど、大正?昭和?いつかの時代に誰かがこのキーを操る姿を想像したら心が思わずときめきました。

やさしい灯りのまち・矢掛

そんな話をしてから中心地に戻ると、なんだかまちなかのレトロなものが急に気になり始める。きょろきょろしながら歩いているとふと気が付いたことがありました。

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それは、こんなレトロなランプ。

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お店の玄関にさりげなく飾られた電灯が、こんなレトロなデザインなんです。ひとたび気がつくと、まちのあちこちに個性ある灯りが飾られてるのが飛び込んできました。

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日が暮れたあと矢掛の夜を暖かく照らしてくれてたのは、こんなすてきな灯りだったんだ…。

矢掛は、優しいあかりを灯すおだやかなまち。
そしてかわいいのかけらがさりげなく潜むまち。

滞在したのはたった1日だったけど、かわいいのかけらをたくさん見つけることができました。

そして午後。「また会おうね」と手を振って、それぞれの帰路につく。

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帰りに乗った井原鉄道にも暖かい灯がともり帰路をやさしく見送ってくれました。

木のぬくもりを感じる電車に揺られながら「また来るね」と心の中でつぶやく。きっとそのとき「おかえり、また来たね」と迎えてくれる人がいると思うと、心がほこほこあたたかくなってきました。

あなたがいるから、その場所をもっと好きになる

瀬戸内かわいい部に参加してから、旅の理由が増えました。
行きたい場所がある・食べてみたいものがある…それだけじゃなくて「あの人がいる町だから行ってみよう」って理由。

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大好きなあの人の暮らすまちだから、きっと素敵な場所に違いない。
大好きなあの人の暮らすまちだから、もっと知りたくなる。
そう思って歩いてたら、そのまちの素敵なとこがどんどん見つかるんです。

“かわいい”を見つけるたびに、”いとしい”の数が増えてくる…“いとしい”を積み重ねるたび、日々がきらきらと輝き出す。そんな毎日が、なんだかとっても楽しくてしょうがないのです。

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瀬戸内かわいい部
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