見出し画像

【積読を買いに⑦】本屋さん探訪vol.4 神保町ブックセンター

本屋さんめぐりのボトルネックは、自分の体力である。本棚をくまなく見て購入する本を決定して会計をし、次の本屋さんまで歩き、また本棚を見る……という繰り返しで、足が休まるところがない。

複数の本屋を巡りたい日は、必然途中でブックカフェ等カフェが併設された本屋さんを道程に組み込むことになる。
神保町ではここに寄った。

神保町駅から地上に出ると、いの一番に目に入るのがこの神保町ブックセンターだ。「疲れたらここに入ろう」と最初から目をつけておいていろいろな本屋を回り、疲れたところで戻ってきた。

カフェエリアの様子。リーディングヌックのような座席が素敵だ。

神保町ブックセンターでは未購入の本も座席で読める。

書籍のラインナップ①
書籍のラインナップ②

書籍のラインナップは「読書好きが今読みたい本」ばかりだ。

かなり迷ったが、絶対に読まずには済まないだろうと思っていたルシア・ベルリン作品集を購入することにした。

固めのプリンと岩波文庫。

名物の固めのプリンとカフェラテをオーダーして席に座る。

ルシア・ベルリン作『掃除婦のための手引き書 ルシア・ベルリン作品集』

表面的な読み口としては、北米文学と南米文学の長所を併せて2で割らないような感じだ。
ストーリーテリングのリズムが独特で、細かい描写がしばらく続いた次の瞬間、数語で話が急展開を迎えたり、一気に時間が進んだりする。一瞬たりとも気が抜けない読書だ。

ルシア・ベルリンは1977年には最初の作品集を出したとのことだが、現代とリンクする感覚がちりばめられた作品集で、今になって話題になるのも納得である。
多様性の困難さ。経済格差。アルコール依存症。家族というものの煩わしさと割り切れなさ。周囲の温かさと、自分の冷たさ。

作家は2種類に分類することができる。作家の人生を知っていたほうがおもしろい作品を書く作家と、作家の人生が作品の感想に関係のない作家だ。
この本には短編24編が収録されているが、そのほとんどが自伝的小説であり、ルシア・ベルリンのバックグラウンドを知っているほうが深く理解することができる。
正直こういった、作家論的に読むことが好ましい作家の作品について、こうして文章にするのは苦手だ。自身の人生の苦難を芸術に昇華した作家の作品について云々することと、その作家の人生そのものについて云々することの区別がつけられなくなってしまう。そしてそれを失礼なことなのではないかと感じる。
しかし論じることができないということは、こういう作品に魅せられていないということを全く意味しない。作家の人生と不可分な作品にはただ一言、「おもしろかった」とだけ言いたい。

他の本も読みたいと思って調べると、邦訳があるのは本作のみらしい。最近人気が出てきたので、他作品の翻訳も期待したい。次の邦訳が出たら、きっとまた神保町ブックセンターに入荷されるだろうから、その時はまたこの席で固いプリンを食べながら読もう。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?