世田谷ピンポンズ

フォークシンガー。HP: http://setapon.boy.jp/ twitter…

世田谷ピンポンズ

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  • 品品喫茶譚

    暇さえあれば喫茶店に行く。テーブルの上に古本屋で買った本を広げて、珈琲を飲む。ぼーっと窓の外の風景を眺める。 初めて訪れた街では喫茶店を探し、住み慣れた街に新しい喫茶店を見つけては歓喜する。 喫茶店を中心とした日々の生活記録。

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    過去の随筆・習作です。

  • 尾道滞在記

    一週間の尾道滞在記録。

  • Sアパートメントの記

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品品喫茶譚 第101回『神戸 元町ファイン 花森書林で歌うのこと』

トンカ書店でのGIGから八年。 トンカ書店の後継店である花森書林でのライブが実現した。 入り時間の二時間前に花森書林さんに着き、荷物を置かせていただく。目指すは三月、本と栞での凡夜READING CLUBの際に弐拾dB藤井と訪れた喫茶ファイン。 地下へ続く階段を降りると、ドアのガラス越しに何処かで見たような眼鏡の青年。 全く知らない人だった。 ソファに座り、アイス珈琲を注文する。 着いて早々、テーブルの上に楽譜や本を並べる。野暮だ。アイス珈琲を決めながら、セットリストをつめる

    • 品品喫茶譚 第100回『東京 国分寺ほんやら洞 鷹の台アドバルーン商会・サイコロ展最終日に滑りこむのこと』

      二週間前、わたしゃ、東京にいた。 この日は鷹の台という街にあるアドバルーン商会で催されていたサイコロのグループ展の最終日であった。サイコロは私も同人として参加させていただいている同人誌である。五月に高円寺でポンチ絵展などと言って、二週間もかまさせてもらった反動で、今回の展示には不参加だったのだが、色々なタイミングが重なって、なんとか最終日に挨拶に伺うことができた。 さて、会場に向かう前、喫茶店を決めようと思った。ちょうど乗り換え駅であった国分寺で、ほんやら洞へ。京都のほんやら

      • 品品喫茶譚 第99回『栃木 宇都宮 パーラー&喫茶BC 宇都宮パルコの、残骸』

        翌日、弘前を去る前に中三というデパートの地下にある中みそに寄ろうと思った。 シソンヌじろう氏の本によると中みそは弘前市民のソウルフードのラーメンなのだそうで、これは是非食うてみたいと思うた。 10時の開店に合わせ、入り口前に陣取る。初めて訪れた街のデパートに開店から並ぶのはちょっとどうなのかとも思ったが、スケジューリングの都合上、どうしようもない。私の他には老婆がひとり。無言で待つ。扉があく。いらっしゃいませの嵐が吹く。地下へ続く階段を降りる。 地下は主にフードコートと食品売

        • 品品喫茶譚 第98回『青森 弘前ルビアン 土手町ストリート』

          昼前に仙台駅を出て、足は実家のある南ではなく、北へ向かう。 弘前へ行こうと急に思い立ったのである。 思い立ったからといってすぐにふらふらと、ほへー北へ向かおう、向かっちゃおうー、あはは楽しー。なんてことが簡単に許されるはずがない。 はずがないのだが、今回の私のスケジューリングでは可能だったのである。 こんなタイミングでもなければ、今後しばらく行けない気がする。 私はほへー、弘前に向かおう、弘前に向かっちゃおうー、あはは楽しー。と新幹線と特急を乗り継ぐこと一時間半くらい。弘前駅

        品品喫茶譚 第101回『神戸 元町ファイン 花森書林で歌うのこと』

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          品品喫茶譚 第97回『仙台 エルベ 道玄坂再訪 銀杏BOYZと友部正人の夜』

          先日、仙台に銀杏BOYZと友部正人さんのライブを観に行った。 日光の実家がなくなってから、大学生くらいの頃、つまり己が実際にステージに立つまでに夢中になった音楽が急に自分に帰ってきた。帰ってきた、というのは、もちろん彼らの音楽はいつも自分の中心にあるのだけども、改めて向き合いたい、観たい、何かを感じたい、と思ったのである。 一、二年前、両親と昔から家族に縁のある定義山を訪れた際に帰りに仙台で喫茶店数店舗に寄った以来。 いま新しい実家のある宇都宮からは新幹線で一時間くらい。 ま

          品品喫茶譚 第97回『仙台 エルベ 道玄坂再訪 銀杏BOYZと友部正人の夜』

          品品喫茶譚 第96回『京都 喫茶フィガロ』

          喫茶フィガロはたまに通る道沿いにある。 以前訪れたときから代がわりし、いまは若い人たちが店を営んでいるらしい。 店に入るとかなりの盛況ぶり。奥のテーブルに向かう。 席にはここ冷房めっちゃ来ますよ的なことが書かれている。 喫茶店に長居する人間あるあるのひとつに、段々冷房が身体にこたえてくる、というのがある。かどうかは分からないが、私にはあり、はるか昔、今以上に未熟だった折りには、あるチェーン店に無駄に入り浸っては、段々寒くなるその席に、身体をぶるぶる震わせ、唇は紫色、は言い過ぎ

          品品喫茶譚 第96回『京都 喫茶フィガロ』

          品品喫茶譚 第95回『東京 高円寺ごん ピンポン、初の個展をするのこと』

          5月8日。 午後早く高円寺に着き、ポンチ絵の展示をして下さることになっている本の長屋へ向かう。 数年前、戯れにネットにあげた文士絵が一部で異様な人気を博したことによる布石がここにきてやってきた。フォークシンガーによる、へにゃついたポンチ絵展が実現することになった。 さて、初めての展示である。早速、会場設営のやり方がわからず、壁を前に途方に暮れる。 前日に絵描きである彼女に色々お膳立てしてもらい、レクチャーを受け、簡単最低限のノウハウを教わったにも関わらず、壁を前に立ち尽くす。

          品品喫茶譚 第95回『東京 高円寺ごん ピンポン、初の個展をするのこと』

          品品喫茶譚 第94回『尾道 そごう 喫茶部あくび 凡夜READING CLUB 尾道に登場するのこと』

          連休初日ということもあって、人手を少し警戒していたものの、尾道駅はそこまでではなく、ましてや商店街とは反対の方角に在する宿の周りは至極穏やかなものであった。 チェックインまでには今しばらく時間があるので、ギターケースを預け、そごうで昼をすませることにした。 時刻は14時過ぎ。昼飯時のピークを越え、店は凪の時間を迎えていた。店内には私のほかにお客はひとり。スピーカーからは、ましゃ、いや福山雅治のラジオが延々かかっている。 カレーを注文する。 そごうのソファは私のマイベストフェイ

          品品喫茶譚 第94回『尾道 そごう 喫茶部あくび 凡夜READING CLUB 尾道に登場するのこと』

          品品喫茶譚 第93回『姫路 大陸 木山捷平展でシングするのこと』

          朝早く姫路に着いたので、大陸でモーニングを決めることにした。 私は大抵、細長く奥まった店内の一等手前、入り口からすぐの席に座ることが多く、このときもその席をチョイスした。 以前、文学フリマ東京で私のブースに寄って下さったお客さんから、この店をテーマに作った『大陸』(そのままである)という曲をお店の方が知って下さっている、という情報を得ていたため、今日はギターも担いできたし、髪型も昔からの私のトレードマークじみたおかっぱにかなり戻ってきているし、なんならこれから姫路文学館でギグ

          品品喫茶譚 第93回『姫路 大陸 木山捷平展でシングするのこと』

          品品喫茶譚第92回『神戸 ファイン』

          ファインに入り、私たちは今夜の凡夜READING CLUBトークパートの打ち合わせをする。と共に、とにかく一息つきたい心持ち。 三月も半ばを過ぎると、みるみる春が顔を出し始める。この日もそんなかんじで、元町のアーケードを歩いているうちに二人とも結構暑い、喉が渇いた、流石に早すぎるかもしれないけれど、ここは冷たいやつを一発決めたい、という精神状態になっており、たとえばアイス珈琲、たとえばソーダ水など、数多ある冷たいドリンクの中からお互いにレモンスカッシュをチョイスした。二人して

          品品喫茶譚第92回『神戸 ファイン』

          品品喫茶譚 第91回『神戸 ファインの一個手前』

          チェックイン開始時間の十分前にロビーについた。 こういった場合、タイミングによっては少し早めに部屋に入れることが結構あるので、とりあえずフロントに行ってみる。 「時間になったら名前をお呼びしますので、もうしばらくロビーでお待ち下さい」と言われる。 早まった。うわずった。前のめった。 思えばロビーには他にも数組の宿泊予定者が座っている。とりあえず椅子に座って、前に二台あるエレベーターを見つめる。 今日は神戸・本の栞さんで弐拾dB藤井と凡夜READING CLUBである。 しばし

          品品喫茶譚 第91回『神戸 ファインの一個手前』

          品品喫茶譚第90回『京都 逃現郷 華麗なカレー』

          ここ最近、茶の間にカレーを食べに行くことが多いため、少し辛いカレーに親しみ過ぎていた。 今回は逃現郷という喫茶店でカレーを食べてきた。と、またカレーか、これってカレーの食べ歩きブログでしたっけと思う方もいるかもしれない。しかし私は実際カレーばかり食べている訳ではないのである。いつも行く喫茶店にも当然足繁く通い、たらこスパゲッティやバジリコスパゲッティを食べたりしているのだが、それだと文章がスパゲッティブログ、いや、なんだかいつも同じ変わり映えのしない生活みたくなってしまう(も

          品品喫茶譚第90回『京都 逃現郷 華麗なカレー』

          品品喫茶譚第89回『京都 茶の間 やはりカレーは辛い』

          前回の文章より一週間後、また茶の間にカレーを食べに行った。 前は小雨降りしきる中をチャリで乗りつけた私だったが、今日は市バスで店を目指した。 自室の最寄りバス停から出ているバスだと、店から少し離れたところに停まるので、少しウォーキングする必要があるのである。今回はそのウォーキングのせいもあってか、ビーフカレーに辛さは普通というお馴染みのやつに、ライスは大盛というチョイスをした。 前回の文章で、私はあまりルーをかき混ぜずセパレートしたまま食いたいなどとほざいていたのだが、初めて

          品品喫茶譚第89回『京都 茶の間 やはりカレーは辛い』

          品品喫茶譚第88回『京都 茶の間 カレーは辛い』

          今年、スケジュール帳を購わなかったことを結構な頻度で後悔している。 スマホを駆使してスケジュール管理しているわけでもないので、結局、細かい紙のメモを仕事机のところに阿呆のように貼りまくる、という愚行に及ぶことになってしまっている。しかも思いついたときにまたメモり、何度も同じようなことを書いて貼ってしまう。 しかし同じようなことを何度もメモることによって、そのスケジュールを都度確認できるという意味にもなっているかもしれず、結局良いのか悪いのか分からない。とにかく私はいまやらねば

          品品喫茶譚第88回『京都 茶の間 カレーは辛い』

          品品喫茶譚第87回『京都 ゴゴ 野暮生活者が二人』

          ゴゴに入ると、生憎テーブル席は埋まっていた。 少し遅れるという藤井を待つ間、カウンターで今日のトークライブで話すことを簡単にまとめてみる。トークはつかみだ。つかみがいつももたつくからダメなのだ。そして、話したいことは文章にするのではなく、箇条書きで。こういった当たり前のことをちゃんとやらないといけない。私は藤井青銅さんという放送作家のトーク本を事前に読んできたのである。今日のトークはきっと大丈夫だろう。 目の前でサイフォンがコポコポ鳴っている。後ろのテーブル席では女性三人組が

          品品喫茶譚第87回『京都 ゴゴ 野暮生活者が二人』

          品品喫茶譚 第86回『またいつものカフェバー』

          タイヤの空気が少し甘い気がするが、気にしないふりをして自転車をガレージから出した。日が伸びたとはいえ、十八時半ともなると街はすっかり暗闇に包まれている。少し先の横断歩道まで行く手間を横着する癖がずっと抜けない。車のヘッドライトの途切れた隙をついて、アパート前の通りを向こう側に渡る。思いきってペダルを踏み込むと、後輪がベコベコと情けなくアスファルトをこする音がした。いまなら自転車をガレージに戻して、徒歩で向かうという手段もあるかもしれないという考えが一瞬頭をよぎった。しかし折角

          品品喫茶譚 第86回『またいつものカフェバー』