見出し画像

【舞台】SLAPSTICKS(スラップスティックス)(2022年2月11日)

後半の抒情的(メロ)部分が素晴らしかったので、前半が惜しい!はんにゃ金田さんにあんなに泣かされるとは・・・。うう・・・。

昨年、ミュージカル「ジャック・ザ・リッパー」でみた小西遼生さん×木村達成さんの組み合わせで、大好きなケラさん作品の再演(KERA CROSS(ケラクロス))ということで、チケットを取った。が、正直なところ、いくら好きだといってもケラ作品にも好き嫌いあるし、ポスターから醸し出される感じ(イケメンが二人!と美女!)は私向きではないなあ、と及び腰だった。残念ながらチケットの売れ行きもそれほどでもなかったようで、なかなか厳しい状況ですね・・・。

ケラさん作品おなじみの、無声映画時代のドタバタ喜劇役者を主軸に、実際に起きた殺人事件をモチーフにした作品。私にとっては、「シャープさんフラットさん」でも扱われた「笑っちゃいけないものなんてないんだ」という主張が、うなずけるとともに切なくて好きなのだけれど、この作品は30年近く前に初演が行われていて今の作品とそん色ないクオリティであることにまず驚き・・・。ものを想像できる天才って、やっぱりすごいな・・・。
今の「キャンセルカルチャー」にも通じるような、スター喜劇役者ロスコーが殺人犯として一気に醜聞に巻き込まれていく様子と、それを取り巻く映画関係者たちの喜劇映画への想いなどが重層的に語られる。

第一幕は、ケラさんテイストのなんというかナンセンスな笑いというか、振り切ってやらないと逆に恥ずかしいあの感じが終始続き、役者さんのファンの方たちはいつもの調子と違うからか笑っていいのかどうか戸惑っている感じがひしひしと伝わってきて、本当にいたたまれなかった。マギーさんが芸達者で本当にそこだけは救われたけど・・・。マギーさん、いつも素晴らしいな~。
ナイロン100℃好きの立場からは、「みんな、ここ笑っていいところだよ~。わかりにくいけど、笑っていいんだよ~!」と叫びたかった。と同時に、「初演で見たかったなあ・・・」と思ってしまった。
※ちなみに初演は山崎一×三宅弘城だったのか!その次が山崎一×オダギリジョー・・・。なるほど・・・。

そして第二幕になって、一気にいい意味でメロドラマ感にガラッと変わり(友人は「抒情的」と表現していたがそっちの方がかっこいいな)、私は終始泣きっぱなしだった。そして周りは全く泣いてなかったが。
スターであるロスコー。その実態は誰にもわからない。スターってそういうものでいいと思う。あくまでも「実はあの俳優さんって●●なんだよ」なんていう話も、本当かどうかわからないし、それも込みで「スター」なんだろうな、大変だな、と思う。個人的にはこの「実は」みたいな話にほとんど興味ないのだけれど、キャンセルカルチャーはまさにこの「実は」に極端にフォーカスしている現象だろう。

ロスコーを演じるはんにゃ金田さんの飄々とした感じが、「俳優ロスコー・アーバックル」の仮面をオンオフでかぶり続けているスターとしての「不自然」な感じをよく表していて、とてもよかった。あんなにスターだったら、本人だってどれが本当の自分かもはや気にしないだろうし、どこに行ってもサインを求められていた彼が、第二幕ではどこにいても罵声を浴びせられたりと手のひら返しを食らう。でも、飄々としている。だって彼は「ロスコーという生き物」になってしまっており、かつそれを引き受ける覚悟を持っているのだから。
この飄々とした感じがとても説得力があって、あの着ぐるみのような衣装なんて全然気にならない。素晴らしい存在だった。

一方で、女優を目指しながら殺されたヴァージニア、セネット喜劇団に所属しいつかを夢見る女優たちが交わるシーン、第一幕であんなに明るかったアリスが第二幕で全く笑わなくなってしまった悲しさを交互に表すシーン、などなど第二幕の”メロ”部分は本当に素晴らしく、なおさら第一幕のドッチラケ感がもったいなかった。決して悪くないんだけど、客席が置いてけぼりなのがなんとかならなかったかな~。
しかし、木村さんのスタイルの良さ・・・。そして、役名が「中年のビリー」となっている小西さんの隠しても隠し切れないハンサムさ・・・。ストレートプレイの小西さんを初めてみたけど、とても良かったです。


この記事が参加している募集

舞台感想

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?